471.会話 人体模型の話
本日もこんばんは。
こどもに怖がられないため、アレ〇サ機能を搭載した人体模型を普及させるとよいでしょう。
「魔王さん、ゴミ捨て場に死体があります」
「あります、じゃないですよ。大変じゃないですか!」
「これなんですけど」
「人体模型ですか。脅かさないでください」
「あ、やっぱり死体ではないんですね」
「どう見ても人形ですよ」
「…………ほっ」
「……あ、これガチでビビったやつですね」
「何か言いました?」
「人体模型を知らない勇者さんが、内臓がこんにちはしてしまっている人間の死体を発見してしまい、大層驚き怖がり腰が抜けたのだと思いまして」
「……こ、怖がってなどいません!」
「素直になっていいのですよ」
「なにニヤニヤしてんですか」
「かわいいなぁと思いまして」
「や、やかましいんですよ」
「えへへえはは。いやぁうふふふべりーきゅーと」
「魔王さんも人体模型とやらにしてやりましょうか」
「ぼくの中身を見たって何もおもしろくありませんよ?」
「誰も見たくありません」
「所詮は似せて創っているだけですからね」
「たまに出る人外感がこう、なんか、そういえば魔王だったなって思います」
「リアル人体模型ですと、勇者さんが恐怖で失神しかねないので」
「そんなことしません」
「表面だけホログラム内臓にするのはいかがでしょうか」
「うわぁ」
「まだ提案段階なのに、明確な拒絶反応に心が痛いです」
「誰も望まない」
「勇者さんが言いだしっぺなのに……」
「美少女だと内臓ですら喜ばれるんですか?」
「もちろんです」
「どこ見て言ってんですか」
「ぼくはいつだって正直ですから」
「つまり嘘ってことですね」
「やだなぁ。目線が右往左往しているだけじゃないですか」
「わかりやすくて助かります」
「ま、待ってください。人体模型と同じく、内臓を取り出す機能もつけますよ」
「え、取り出せるのあれ」
「臓器の位置を学ぶために使われるものでもありますし、観察にうってつけです」
「それも再現できると?」
「お任せください。魔王ですから!」
「うっわぁ」
「嫌そう! すごく嫌そう!」
「こんな魔王、見たくなかった」
「落ち込まないでください」
「誰のせいだと思って」
「ほら、美少女の顔でも見て元気を出して」
「うるせえんですよ」
「内側も外側もかわいいことが真の美少女といえます」
「内側は内臓って意味じゃないと思います」
「ぼくの場合はいかようにも変えられるのですが」
「詐欺度百パーセント」
「えへへ」
「褒めてない」
「人体の構造を知ることは、人型の魔族との戦いに応用できるでしょう」
「それっぽいこと言っている」
「ただ、人体模型はその見た目ゆえ、暗闇ではさぞかしびっくりするでしょう」
「まあ……」
「怖がりな勇者さんであれば、太陽燦々の真っ昼間でも腰が抜ける驚きようです」
「う、うるさいですね」
「ですので、旅に同行させるには難しいかと」
「嫌な同行者だな」
「というわけで、やっぱりぼくがやるしかないですね」
「魔王さんの臓物とか頼まれても見たくないです」
「人間の救命に役立つ知識を得られますよ?」
「人間の救命なんてしません」
「救命される側ですもんね。そろそろ立てそうですか?」
「無理……」
「まだ腰が抜けちゃってるんですか」
「全然立てない……」
お読みいただきありがとうございました。
使わない時は服を着せておくとよいでしょう。
勇者「捨てたはずの人形が戻って来るホラー映画を観たのですが」
魔王「ふわふわのぬいぐるみならまだしも、人体模型はいやですね」
勇者「急所丸出しなのになぁ」
魔王「新しいホラー映画のネタにいいんじゃないですか?」