462.会話 庭の話
本日もこんばんは。
今日は庭の日なんだそうです。相変わらずなんでもありますね。
「お庭にあったらうれしいものってありますか?」
「そもそも庭がないです」
「お望みならば、魔王城に造りますよ」
「それは別にいいのですが、庭ですか。芝生がほしいです」
「庭って大体芝生じゃないですかね」
「羽毛布団とベッドがあるとうれしいです」
「がっつり昼寝する気ですね」
「パラソルも必要です」
「直射日光とお昼寝はアンマッチですもんね」
「飲み物が近くにあると助かります」
「小型冷蔵庫を置きましょうか」
「いざという時のためにシャベルも」
「まさか武器に使うのですか」
「いえ、地面を掘って逃げる」
「走って逃げた方がはやいと思いますよ」
「地下に空間を作り、避難生活もばっちりです」
「庭なのですぐそばに住宅がありますよ」
「魔王さんの場合は魔王城じゃないですか」
「耐震も防犯も完璧ですよ?」
「本来、防犯をしているのがおかしい場所なんですけどね」
「実は以前、ステキなお庭が欲しくて、エクステリアのプロの方を呼んだことがあるのですが、まったくうまくいきませんでした」
「私の知る限り、魔王城に庭なんてありませんでしたね」
「そうなんです。魔王城まで案内した途端、逃げられてしまいまして」
「エクステリアのプロって人間の?」
「人間の」
「よく魔王城まで来ましたね」
「馬車を用意したので、目前までは問題なく」
「降りた瞬間に魔王城を見た人間がかわいそうです」
「何もしないって言ったんですけどねぇ」
「何かするひとのセリフなんですよ」
「おもてなしはしようと思いましたけど」
「通常の人間なら、殺されると思って当然です」
「焼きたてのスコーンと紅茶をご用意しただけですよ」
「私が食べたい」
「いつでもご用意しますよ」
「エクステリアの知識がある魔族を呼ぶのはだめなんですか?」
「魔族はちょっと」
「では、ご自分で学んでやってみるとか」
「お花を植えるだけならまだしも、専門的なスキルは難しくて……」
「市販品を並べるだけじゃないんですね」
「並べるだけでも、ぼく、不器用ですし」
「そうでしたね」
「理想のお庭を想像するだけで、実現までは遠いですね」
「私、日よけがついたベンチ型のブランコに憧れがあります」
「絶対に置きましょう。そしてふたりで乗りま――」
「ひとり用の」
「そんな。ふ、ふたり用の方が広くて使いやすいと思いますよ」
「たしかにそうですね」
「そうでしょうそうでしょう。ブランコはふたり用――」
「寝そべって昼寝ができますもんね」
「ぼくの座る余地がない」
「魔王さんは日よけの上とか、芝生の上とか」
「ブランコに座りたいです」
「木の板と紐を買いましょう」
「めちゃくちゃ簡易的なやつ」
「魔王さんの体重だとギリギリアウトで作ります」
「ギリギリセーフじゃないんですね」
「座った瞬間に落ちる遊び」
「想像しただけでお尻が痛いです」
「だいじょうぶですよ。地面は芝生でふわふわです」
「芝生に信頼を置き過ぎです」
「当然です。いざとなったら食べられるんですから」
「お庭でも草を食べる気だ」
「エクステリアのプロにお願いして、エリアごとに草の種類を変えましょう」
「ビュッフェかな」
「一部分だけ毒草エリア」
「見分けるのが難しいですよう」
「一か所だけスイセンが咲いているんです」
「めっちゃわかりやすい」
お読みいただきありがとうございました。
魔王さんの理想は遠い。
勇者「花があることで彩りもいいでしょう」
魔王「毒があることだけ心配です」
勇者「では、トリカブトや彼岸花はどうでしょう」
魔王「毒花縛りですか」