461.会話 鉄塔の話
本日もこんばんは。
鉄塔の話が読めるのもたぶんきっとおそらくもしかしたらこの作品だけです。
「私は知っています」
「突然どうしました?」
「あの謎の塔からは超強激やばトンデモ破壊ばりばり光線が出ることを」
「何か始まりましたね」
「てっぺんからキュイーンやらシュイーンと音がし、発射されたビームやら光線やらエネルギーやらがズドンとばきんとがしゃんと降り注ぎ、ずぎゃんと世界を壊すのです」
「ぼく、ちょっと道を戻って語彙力が落ちてないか見てきますね」
「私たちのようなちっぽけな存在は、うわーとなってぎゃーとなるしかないのです」
「急いだ方がよさそうですね」
「その内、ガガガギギギと動き出すのでしょう」
「自ら動いて世界を破壊するのですか。かなりやばいですよ」
「ちらり」
「なぜぼくを見るのですか」
「かなりやばい、と」
「ぼくはやばくないですよ?」
「自ら動いて世界を破壊する存在でしょう」
「なんですかその破壊神は。はやめに倒すのが世のため人のためです」
「ちらり」
「なぜぼくを見るのですか」
「世のため人のため、どうしようかと考えていたところです」
「それだけの規模でもまだ思考の余地があるのですね」
「あとひと押し」
「おやつにシュークリームでも買いましょうか」
「よし乗った」
「シュークリームで救われる世界」
「私があの塔を操作し、激やばビームを止めるとしましょう」
「操作できるのですか」
「骨組みが変形し、コックピットになるはずです」
「勇者さんの目には何が映っているのでしょうか」
「武器も生成できるのでしょう。かっこいいですね」
「ぼくが知らないだけで、鉄塔ってロボットなのでしょうか」
「別の塔に繋がる細い線でエネルギーを送り合っているのでしょう」
「正しい」
「私が線を握ることで、魔力を与えることができるのですね」
「絶対に触らないでくださいね?」
「闇魔法のビームを世界に降らせましょう」
「この世の終わりみたいな光景になりそうですね」
「生きる気力を奪い、意識が朦朧とし、ひとり、またひとりと意識を失うのです」
「ラスボスの技」
「昏睡状態に陥った人間から魂を奪い、塔に集めます」
「あれ、ビームは放ったんですよね?」
「全人類の魂をひとつにし、巨大なエネルギーにします」
「劇場版の終盤に出てくる展開ですか?」
「魂の塊です」
「似た漢字やめてください」
「別名『ソウルボール』」
「おにぎりみたいな命名」
「私の指パッチンで天に昇り、爆発します」
「もう少しかっこいい発動条件にしませんか?」
「両手で指パッチン」
「どうしてもやりたいんですね、指パッチン」
「三連打でどうでしょう」
「勇者さんのお好きなようにしていただければ」
「そうして滅んだ世界で、魔王さんだけ瓦礫の中から這い出てくるのです」
「まあ、ぼくは死にませんからね」
「世界が死んだらどうなるのですか?」
「世界が死ぬことはないと思いますけど……」
「すべてがなくなるので、魔王さんはひもじくなりますね」
「文明の復興を待つしかありません」
「服もないのでありのままの姿で」
「さすがに変化魔法を使いますよ」
「全部ぶっ壊してしまったお咎めを代わりに受けといてください」
「ぼく、怒られ損じゃないですか」
「私は勝ち逃げです」
「ですが、そもそも鉄塔はきみが考えているような超強激やばトンデモ破壊ばりばり光線装置ではありませんよ。ただの建造物です」
「わかっています。動き出す気配がありませんから」
「ご理解いただけたのなら、そろそろ移動しましょうか」
「はい。鉄塔の眠りを覚ます隠しボタンを探さないといけませんもんね」
「なんにもわかっていませんね」
お読みいただきありがとうございました。
鉄塔からビームが出ないなら、もうどうすることもできません。
勇者「私が命令したら破壊ビームを放ってはくれないでしょうか」
魔王「光魔法でよければ、ぼくが」
勇者「立候補するな」
魔王「てれ……てれ……」
勇者「照れるな」