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443.会話 つぶあんこしあんの話

本日もこんばんは。

争いの予感。

「今日は新たな争いの火種を投入しようと思います」

「平和を愛する魔王さんなのに珍しいですね」

「勇者さんはつぶあんとこしあん、どちらがお好きですか?」

「その質問、テーブルの上に置いてあるおもちと関係ありますか?」

「あります。どちらで食べたいか知る必要がありますから」

「私は平和の象徴である勇者ですから、こう答えるとしましょう。どっちもください」

「さすが勇者さん。これにて争いは終結です」

「終わりとは意外とあっけないものなのですよ」

「深そうな発言なのに、おもち食べながら言われるとね、なんかね」

「文句でもあるんですか」

「いえいえ、勇者さんらしくてすてきです」

「あんまり褒められている気がしない」

「一応お訊きしますが、強いて言えばどちらが好きですか?」

「やはり魔王さんは魔王。絶えることなき争いを求めるのですね」

「ぼくは平和主義ですし、これはただの興味からくる質問です」

「強いて言ってもどちらも好きですし、別の言い方をすればどちらでもいいです」

「でしょうね。きみはそういう人です」

「正直、つぶあんとこしあんの違いは食感や舌触りくらいだと思っていますが、派閥があるということは大きな差異があるのでしょうか」

「大体は食感や舌触りくらいですよ」

「…………」

「いま、めんどくさって顔しましたね」

「うん……」

「確かに差異はありますが、つまるところ、単純に好みです」

「魔王さんはどちらがお好きなんですか?」

「勇者さんが食べている方ですね」

「…………」

「いま、めんどくさって思いましたよね」

「うん……」

「ぼくは平和主義ですし、無暗に争いを起こすことはしませんよ」

「便利な言葉、平和主義」

「作る時のお砂糖を同じにすれば、つぶあんもこしあんも甘さは変わりません」

「なんでもいいです」

「両者を認めることで争いを起こさせない。勇者に相応しい態度ですね」

「いやあの、まじでほんとにどうでもいいんです」

「目が死んでいるようですが」

「はやくおもち食べたい」

「いま準備していますからね」

「そもそも、食の好みは人それぞれです。こっちの方がいい、という区別の仕方は意味がありませんよ。つぶあんもこしあんも違うものです。わざわざ比べて優劣をつける行動に何の意味があるのですか」

「勇者さんがめちゃくちゃ正論を言っている……」

「秀でている、劣っていると区別をしたら、劣っている方を好きな人がちゃんと『好き』と言えなくなるかもしれません」

「いやほんとにその通り」

「私は自分の気持ちを抑えつけることには慣れているので構いませんが」

「構わなくないですが?」

「普通ならばあまり気持ちの良いことではないはずです」

「すみません、先ほどのセリフをもう一度お願いしても?」

「はやくおもち食べたい」

「戻りすぎです」

「この会話に何の意味があるのでしょうか」

「今回は勇者さんがかなりよいことを言っていると思いますので続けてください」

「お腹すきました」

「確かにお昼の時間ですけども」

「おもちー。おもちー」

「せっかくそれっぽい雰囲気だったのに……」

「それっぽいとは?」

「勇者さんが勇者っぽい」

「それは異変ですので終わらせるのが正解です」

「ご自分で異変とか言わないでください。切ないですよ」

「真面目な事を言ったせいでよりお腹がすきました」

「どういう理屈ですか」

「たぶんエネルギーを使ったり使わなかったりするんですよ」

「全然わかっていないじゃないですか」

「まあ、なんでもいいのでご飯にしましょう」

「強引に終わらせた」

「はいはい、争いを好まない魔王さんにはつぶあんとこしあんを混ぜたあんこをどばー」

「ぜ、全部かけた⁉ 待ってください、勇者さんはなにでおもちを食べるんですか」

「きなこです」

お読みいただきありがとうございました。

こういう争いでも魔なるものはたぶん生まれます。


魔王「あんこを用意した意味とは」

勇者「しゃべっている間にあんこを食べた気になりました」

魔王「そもそも何も食べていませんけど」

勇者「はー、お腹いっぱい」

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