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442.会話 珍しい勇者さんの話

本日もこんばんは。

四年に一度しか更新されないレアデーSS。

「文句ひとつ言わずにねぼすけのぼくの対応をし、魔物を倒し、怠惰を極めたお昼寝もせず、迷子を送り届け、聖書を読み、魔族に捕まった人間を救出し、部屋のお掃除まで⁉ い、一体どうしたのですか勇者さん。どこか具合でも悪いのですか。まさか偽物⁉」

「誰が偽勇者ですか」

「だ、だって、勇者さんが勇者っぽいことをしているから!」

「悪いですか」

「大変すばらしいですが、勇者さんらしくないですよう! いつものきみは、ねぼすけのぼくにグーパンを喰らわせ、魔物も放っておき、眠くなくてもお布団でごろごろし、迷子を見つけたら近くの人間をおびき寄せ、魔族に捕まった人間はぼくに対処させ、家事はあまりやらないタイプでしょう! あと、聖書なんか読まなくていいです」

「読むフリですよ」

「よろしい。ぼくが捨てておきます」

「それにしても、私がちょっと勇者っぽくしただけでこれですか」

「普段が勇者っぽくなさすぎるものですから」

「私だってやる時はやりますよ」

「珍しいことがあるのですね。もしや、何か欲しいものが?」

「なぜそういう考えになるのです」

「人間から謝礼を得たり、ぼくからお小遣いをもらったりするおつもりなのかと」

「別に、何も求めていませんよ」

「見返りを求めずに人間を助けていたのですか⁉」

「勇者ってそういうものだと思いますが」

「勇者はそうでも、勇者さんがそうとは限りませんよ」

「魔王にここまで言わせる勇者もすごい」

「体調が悪いんじゃないですよね?」

「元気ですよ」

「本物の勇者さんですよね?」

「私の偽物とかメリットがないのでやめた方がいいです」

「ぼくの気が済むまで確かめたいので、抱きしめてもよろしいでしょうか?」

「頭かち割りましょうか?」

「あ、勇者さんです。安心しました~」

「これで判断されてもな」

「今日の勇者さんはすべてが珍しかったのでドキドキしちゃいました」

「四年に一度の勇者っぽい勇者です」

「四年前はまだ勇者ではありませんでしたよね?」

「表現のひとつです。それくらい珍しい私なのですよ」

「ではでは、数年に一度の珍しい勇者さんならば、ぼくとハグしたり手を繋いだり一緒にハートフル動物映画観たり添い寝したり愛を囁いたりしてくれるってことですか⁉」

「もしそれらをしていたら偽勇者です。すぐさま倒してください」

「床に頭をこすりつけてお願いするので、本物勇者さんになってくださいよう」

「少しはプライドを持ってくださいね」

「せめてハグは!」

「五億歩譲って映画なら」

「そん、そんなに譲る?」

「ハートフル動物映画っていうのがね」

「映画の内容の方を譲っていたんですか?」

「わくわくゾンビチャレンジ映画とか、どきどきサメパニック映画ならいいですよ」

「そんな感じのおもちゃがあったような……」

「ていうか、映画ならよく一緒に観ているじゃないですか」

「一緒の空間にいる、が正しいかと」

「チラ見しているのを知っていますよ」

「通して観ても内容の理解ができないほどカオスなのでチラ見でじゅうぶんかなぁって」

「まったく情けないですね。私も理解して観ていませんよ」

「理解していないんだ」

「ああいうのは雰囲気とノリとテンションと感覚と気分と勢いを楽しむものです」

「そういう楽しみ方もよいですね」

「私たちの会話みたいに」

「もうちょっと内容も楽しんだ方がより楽しめますよ」

「ほどほどが一番です」

「もうちょい、もうちょい……」

「適度というのは便利な言葉ですね」

「では、適度にハグしませんか?」

「体の骨をバキバキに折られるってことですか?」

「誰が馬鹿力ですか!」

「あなたですよ」

「加減していますよう。何年、人間社会で生きていると思っているのです」

「経験しか豊富じゃない」

「ぼくは勇者さんに合わせたハグや添い寝や囁きができます」

「私も魔王さんに合わせたすてきなことができますよ」

「えっ、そ、それは?」

「斬首と切腹」

お読みいただきありがとうございました。

四年に一度なので、次回のレアデーSSは2028年ですね。


勇者「次は魔王っぽい魔王さんの話ですかね」

魔王「何をすればよいのですか?」

勇者「人間を誘拐したり痛めつけたり怖がらせたり」

魔王「いやですよそんな魔王みたいなこと!」

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