441.会話 三角巾の話
本日もこんばんは。
三角巾のSSってなんだろうって思います。なんでしょうね。
「魔王さん見てください。私、死んじゃいました~」
「えっっっっっっっっっっっっっっっっっ」
「冗談ですけど」
「…………………………びっっっっっっっ……くりしました」
「そのようですね。冗談ですので、ご安心を」
「冗談でも死ネタはおやめくださいね……。ぼくが死んじゃうので」
「挿絵にあった幽霊の真似をしてみたんです。三角巾で幽霊になれるそうですよ」
「いわゆる天冠ですね。ある文化の中では、死装束のひとつとされています」
「死装束?」
「亡くなった人が着る服のことです。国や町、村によって様々です」
「三角巾を頭につけるとは、けったいな文化があるものですね」
「理由はいくつかあるようですが、これもまた気持ちの問題でしょう」
「これをつけるだけであなたも幽霊! 人間を脅かして楽しくなろうの会」
「きみも人間ですよ」
「人間じゃない魔王さんが一番驚いていた。では、新たな驚きをいざ」
「心臓に優しい驚きでお願いします」
「三角巾をふたつにすると猫の耳」
「心臓に悪すぎる驚きですあまりのかわいさにぼくの心臓は当然のように止まりました」
「元気そうですね」
「そもそも、三角巾をふたつにして猫耳にしようという発想と行動がかわいすぎるのが大問題ですよねいや無問題なんですけど気持ち的に爆発するくらいの愛おしさと愛がもう」
「よく回る口ですね」
「死装束のイメージがあった三角巾が一瞬でぷりちー猫耳と化してぼくは幸せです」
「よかったですね」
「黒髪勇者さんに白猫耳がついているのが若干のコスプレ感あって良しですし、がんばってねこちゃんに扮しています感が愛おしさをより一層高めるという論文がないですけど」
「ないんだ」
「ぼくの限界具合は何よりの証拠だと思いますこれこそ安心と信頼の魔王さんですよ」
「へえ」
「止まらないぼくのしゃべりに対して簡潔な一言で済ます勇者さん安定でよきかな」
「もう取っていいですか?」
「だめですまだ写真を撮っていません動画も三十分はほしいです写真は額に飾らないと」
「白い三角巾が死装束のひとつというのは不思議な感じがします」
「写真撮りたい写真撮りたい写真撮りたいなぜですか?」
「黒髪が不吉とされるように、死の色は黒のイメージがありますから」
「動画も撮りたい動画ほしい動画で見ていたいたしかにそうですね」
「むしろ、白は神聖な色のはずです。死と結びつくイメージがあることに驚きました」
「白猫勇者さんよしよししたいなでなでしたい抱きつきたい逆に言えば、神聖だからこそ眠りにつく人を包む色にしているのかもしれませんね。聖女は白を基調とした服を着ます。それはまさしく、白が穢れなき神聖の色であることを示しています」
「なるほど。それはそうと、全部口に出ていますよ。縫い付けましょうか」
「やだぁ……」
「死装束の色は白。ということは、魔王さんは――ハッ」
「気づいた! ってお顔ですが、違いますからね」
「準備はできている。いつでもオッケーってことですよね」
「違いますよ」
「私としたことが、魔王さんの気持ちに気がつかなかったなんて」
「ラブコメならドキッとするセリフのはずなのに、ちっともうれしくないです」
「いつでも殺してねっ。語尾にハートつき」
「うわあ」
「私の口からハートという言葉が出たんですよ。泣いて喜んでください」
「勇者さんのハートはまさしく心の臓という意味なので……」
「オールウェイズ死装束とは、魔王さんも奇妙なことをします」
「この世の白い服すべてに謝ってください」
「ひらひらふわふわ具合が永久の眠りにちょうどよさそうですし」
「可愛さ以外の理由はありません」
「魔王さんはずっと死装束を着ていたのですね」
「本日三度目の違いますよ」
「そうなると、これが足りませんね。はい、どうぞ」
「白猫耳もとい三角巾を渡されてしまった」
「ちゃんと正装してください」
「ただでさえ白いぼくが白い三角巾をつけたら、それはもう白猫なんですよ」
「本日四度目の違いますよ」
「着る服に意味を持たせなくてもいいのです。着たい服を着ればいいのですから」
「私もいつか、死装束を着るのでしょうか」
「……。事前に言っていただければ、きみの着たい服をご用意しますよ」
「お任せします」
「わかりました。では、美しく可愛く可憐で儚いぼく特注のドレスを」
「わー……。死にたくなくなってきちゃった」
「それはよいことです」
お読みいただきありがとうございました。
今ではドレス装束もあるそうです。白色なのでウエディングドレスのようですね。
魔王「送る側が白い死装束を着る文化も存在するようですよ」
勇者「その文化でいくと、魔王さんのことですね」
魔王「そうなります」
勇者「そちらの方がしっくりきます」