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434.会話 腹巻きの話

本日もこんばんは。

まだまだ寒いので、みなさまあったかくしてお過ごしくださいね。

「勇者さん、またお腹を出して寝ましたね?」

「なんのことやら」

「熱を出したのは誰ですか」

「誰かなぁ……」

「勇者さんですよね」

「……圧がすごい。そうですね。私です」

「もうっ! ちゃんとお布団かけて寝てください!」

「すみません。私のダイナミック寝相が本領発揮してしまいまして」

「しっかり意識ある状態で蹴っ飛ばしていましたよね?」

「……えへ」

「困った子の勇者さんにはこれを」

「なんですかこれ。ふわふわもこもこ」

「腹巻きです。お腹に巻いて使う物で、就寝時の利用で選んだので厚めになっています」

「あったかそうですね」

「ぜひご利用ください」

「機会があれば使わせていただきます」

「ぜひ、ご利用ください、ぜひ」

「圧がすごい」

「そもそも、年頃の少女がお腹を出すこと自体、ぼくは容認しかねるんですよ」

「宿の中ですし、他に誰もいませんよ?」

「そうですけど、そういうことじゃないのです」

「何が問題なんですか」

「同じ部屋にぼくだっているんですよ?」

「そうですね」

「そうですねって、勇者さん?」

「何か問題でも?」

「うーん、ぼくは何と言えばいいのでしょう。……でもちょっとうれしい」

「なんですか?」

「いえいえ。腹巻きはお腹を温めることができます。鞄に入れておくとよいでしょう」

「あ、顔に巻くといい感じです」

「そこが勇者さんのお腹なんですね。よしよししてあげましょう」

「うそうそ冗談ですでもほんとにあったかいこのまま冬を乗り越えたい気持ち」

「息継ぎしてください」

「息を吸うと腹巻きが口と鼻を塞いでかなりピンチなんです」

「腹巻きを顔に巻いているからですよ」

「だってすごいぽかぽか……」

「勇者さんだとわかっているのでぼくはいいですが、何も知らない人が見たらおばけだと思っちゃいますよ。すぐ妖怪になるんですから」

「野ざらしの顔ってどうしても冷えるんですよね」

「だから腹巻き」

「顔を温めるのにも最適です」

「呼吸困難の時点で適してはいないんですよ」

「命の危険を感じるぬくもりです」

「息できてないんですってば。はやく取ってください」

「うっ……。さ、寒いです」

「お顔が真っ赤ですよ。だいじょうぶですか?」

「せっかくぽかぽかしていたのに」

「くらくらしているように見えますが」

「問題ありません。世界は回るといいますし」

「明らかに眩暈ですよ。座ってください」

「全身がぽかぽかです。腹巻きってすごいんですね」

「お水飲んでください」

「魔王さんは最近ぽかぽかするものをくれますね。おかげでほっこりですよ」

「マフラーも靴下も腹巻きも適度なぬくもりを提供するはずのものなのですが」

「えへへ……。くらくらします……」

「勇者さん、別の世界に行かないで戻ってきてください」

「おっきなうさぎさんにもふもふされている気分です……」

「完全に別世界じゃないですか」

「魔王さんもご一緒にいかがですか?」

「ぼくは腹巻きをプレゼントしただけなのにどうしてこうなったのでしょう」

「ふわふわって口を塞ぐのに最適ですね」

「正しい使い方をする理由がありありと」

「あたま……、くらくら……」

「あれっ⁉ なんか、熱が上がっていませんか⁉」

「くらくら~……」

「健康のために渡した腹巻きが裏目に出るなんて!」

「ちょっと寝ますね……」

「あ、ええと、ぼくは看病の準備をします」

「暑いので服を脱いでもいいですか」

「なんのための腹巻きだったのでしょう……」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんの脆弱具合は魔王さんの悩みの種です。


魔王「体を温めすぎるのも体に悪いなんて、人間というのはどうしてこう……儚い……」

勇者「いつもお世話になっております」

魔王「でもその脆さも好き……愛おしい……」

勇者「愉快なひとだ」

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