432.会話 ダウジングの話
本日もこんばんは。
今日は神の枝が登場します。伝説の枝とは従妹です。嘘です。
「今日はこの神の枝を使い、埋蔵金を探そうと思います」
「突然しゃがみ、枝を拾ったと思ったら埋蔵金ですか。お金がほしいならここに――」
「お金の気配を感知しました」
「ぐえっ。え、枝を刺さないでくださいよう」
「埋蔵金ではないようですね。埋まっているのはどうでもいい内臓です」
「どうでもいい内臓」
「さあ、行きますよ。今日中に見つけないといけません」
「時間制限があるのですか」
「私が飽きるまでの時間です」
「なるほど理解」
「神の枝はこっちだと言っています。山道ですね」
「埋めるなら人気のない場所が最適ですもんね」
「こっちかなぁ」
「ナチュラルにぼくを刺すじゃないですか。痛いです」
「違ったか。じゃあこっちかな」
「器用にポシェットを奪わないでください」
「これも違った。ぽいっ」
「神の枝を捨てましたけど」
「本気で間違えました。捨てたいのはポシェットです」
「捨てないでくださいね。回収回収」
「埋蔵金の気配を感じません。神の枝は眠っているようです」
「振り回さないでください。全然眠っていませんよ」
「おや、この地面……。真新しい土が被っています。埋蔵金を埋めたに違いありません」
「ついさっき埋めたような土ですけど」
「誰かのへそくりですね」
「埋蔵金って、もっと古い時代のお金というイメージなのですが」
「魔王さんからすれば、百年前だってついさっきでしょうよ」
「まあ確かに」
「ご覧ください。神の枝も激しく揺れ動いています」
「残像が見えます」
「まさしくここです。掘り起こしましょう。えいやっ」
「危ないものじゃないでしょうね……?」
「んん……? 何もないです」
「動物が掘った跡かもしれませんね」
「もしくは、誰かが埋蔵金を掘り出した跡か」
「名探偵勇者さんには悪いですが、お宝が埋まっているならもっと深いはずですよ」
「小さくてもめちゃくちゃ高価なものはあるでしょう」
「それはそうですけど」
「奪われた埋蔵金は、きっと手のひらサイズで国が買えるほどの価値がありました」
「そもそも勇者さんの埋蔵金じゃないんですけどね」
「先に見つけた方の勝ちなら、魔法で地面をひっぺ剥がしてやりますよ」
「せめて神の枝で探してください」
「掘り起こした時に折れちゃいました」
「真っ二つですね」
「神の枝が二つに……。なるほど。これが神託ですか」
「あのやろうに告げられたくないです」
「では、自然の摂理にします」
「従いましょう」
「真っ二つに折れた。つまり、枝の中央に埋蔵金があるということです」
「中央ですか。この先の道でしょうか」
「進みましょう。埋蔵金はすぐそこです」
「山道なので慎重に進んでほし――どうして躊躇いなく走るんですか勇者さん」
「誰かに奪われる前に奪わなければ」
「奪うって言ってますけどだいじょうぶですかね?」
「ここでの奪うには『見つける』の意が九十パーセントあります」
「残りの十パーセントは?」
「『奪う』の意です」
「だめじゃないですか」
「魔王さん、神の枝が示す先はもうすぐそこですよ。こんにちは埋蔵金――」
「危なーーーーーいっ‼」
「ぐえっ。……い、息が……」
「崖です! ストップ!」
「私の息がストップしているのですが」
「危険です止まってください勇者さん!」
「私の心臓が止まりそう」
「あああっ! だ、だいじょうぶですか⁉」
「ダメージの九十パーセントは魔王さんによるものです」
「すみません……! 残りの十パーセントは?」
「埋蔵金がなかったことです。探り当てたのはただのピンチですよ」
「冒険者は事故で亡くなることが多いですからね……」
お読みいただきありがとうございました。
神の枝だと思えば神の枝です。
勇者「危なかったです」
魔王「ほんとですよ。お宝と命、どちらが大事ですか」
勇者「どちらも特には」
魔王「嘘でも命って言ってくださいね」