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43.会話 森林浴の話

本日もこんばんは。

森林浴したいなと思って書きました。近くに森がほしい年ごろです。

「ほどよい木漏れ日、穏やかな風、静かな雰囲気……。森林浴にはもってこいですねぇ」

「あああああ…………」

「なんつー声を出しているんですか、勇者さん。お風呂上りのおじさまですか」

「失礼ですね。森林浴をこれでもかと満喫しているんですよ」

「ぼくたちしかいないからいいものの、ちょっとだらけすぎですよ。どういう格好ですか、それ」

「このくらいの光なら体全体に受けてもいいかなと」

「日頃の遮断した紫外線をここで回収するんですか」

「森林浴をしていて思ったんですけど、私、葉緑体がほしいです」

「ついに人間をやめるんですか」

「だって便利じゃないですか。色も緑になって森の中では保護色ですよ」

「緑色の勇者さんは見たくないですね。ちょっとその、アレです、はい」

「気持ち悪いと言いたいのですか。カメレオンに謝ってください」

「カメレオンと人間は同じ土台に乗せて考えるべきではない気が……」

「それこそ失礼ですよ。生きとし生けるもの、すべて等しく同じ土台に乗せるべきです」

「す、すみません。つい命に順番をつけてしまう癖がありまして……」

「魔王っぽいセリフですね。もっとくださいそういうの」

「だめなんじゃないんですか?」

「だめだからいいんですよ。悪の親玉感があります。よっ、大将」

「適度な日光を浴びているからか、勇者さんの機嫌が心なしか良い……」

「人のいない森の中って最高ですね。湖のほとりに家建てたいです。はっぴー隠居生活」

「長生きする気になりました?」

「それはいやなのでいま家建ててください。数時間だけ住みます」

「無茶苦茶ですねぇ」

「魔王さんは、隠居生活のご希望は?」

「魔王城から離れて、誰もいない静かな場所がいいですね。半径百キロに街があるとうれしいです」

「もうここでいいじゃないですか。半径百キロならなんでもあるでしょうよ」

「毎日森林浴をし、風の声を聴きながらジョギングをし、ランチは外で優雅に、ディナーは炭火でバーベキュー……。ああ、いいですねぇ」

「魔王らしさが欠片もないですね。人体実験場でも併設しておいてください」

「んな物騒な。木造コテージの隣に鋼鉄の建物だなんて景観が損なわれます」

「もっと自然的な建物にすればいいんですよ。ハンモックやパラソルを設置してカモフラージュし、地下では身の毛がよだつような実験を――」

「しませんよ? それに、こんな穏やかな場所でいったいなんの実験をするんですか」

「食事睡眠を無制限に許可された人間性を失ったものたちの末路を記録するんです」

「遠回しにご自分の話をされています?」

「私は人間性を保っているので」

「その姿で言われても説得力が皆無です」

「このあたりの草、めちゃくちゃ寝心地がいいです。……ごくり」

「食べたら環境破壊ですよ。森林が泣きますよ」

「その辺にいる鹿はいいのに⁉ 私だけだめなんですか⁉」

「そこまで覇気迫る勢いで言わなくても。鹿と同列に並べられていいんですか?」

「私より鹿の方が立派に生きている気がします」

「勇者さんも立派に生きてま……、いまはちょっとぐーたらですけど」

「森林浴される森も鹿の方が大事なんでしょうね。天秤にかけられたら負ける気しかしません」

「鹿だけに……」

「この世界のためにあなたを殺した方が良さそうですね」

「すすすすみません、つい出来心で」

「なんだか森が『はやく出て行け』と言っているような気がしてきました」

「ずいぶんネガティブですね。さっきまでの機嫌はどこへ?」

「見てください、私を。こんなに太陽光が当たって、じりじりと焼かれています……」

「のんびりしすぎて日の傾きが変わったんですね」

「あんなに優しい木漏れ日だったのに……。ぐすん」

「勇者さんの脳が思考を停止しているので言いますけど、移動すればいいのでは?」

「めんどうなんです」

「出ましたよ。めんどくさがり屋な勇者さん」

「澄んだ空気と木の匂い、絶妙な風が眠りを誘う……。あとは日差しだけなのに……」

「森も困惑してるでしょうね。動けよって」

「森が動けばいい……」

「わがままですねぇ。それに、森は動けませんよ。根っこがあるでしょう?」

「根っこごと浮いて移動する城があるじゃないですか。本気出してください、森」

「あれは森の力じゃなくて石の力ですよ」

「ハッ! わかりましたよ、魔王さん。例の石を探せばいいんです」

「探してどうするんですか?」

「この森ごと移動して生活するんですよ。そうしたら家ももったいなくないです」

「それより最適な解決策がありますよ」

「なんですか」

「きみが動くことです」

お読みいただきありがとうございました。

天の空の城、おもしろいですよね。

勇者さんはわりと本気で例の石を探そうと思っています。


勇者「草で作ったベッドも気持ちよさそうですね」

魔王「ファンタジーですねぇ」

勇者「お腹すいたら食べていい」

魔王「草食系ヘンゼルとグレーテルですか」

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