427.会話 ブランケット症候群の話
本日もこんばんは。
ブランケット症候群とはあれです、自分にとって安心する手放せないあれって感じの物のあれです。そうです、それです。ではどうぞ。
「勇者さんが幼い頃からぼくを与えていれば、きみの安心毛布はぼくだったのだと……」
「何の話ですか?」
「幼少期の英才教育の話です」
「絶対違いますよね。真面目に答えてください」
「今からでもきみの安心材料をぼくに上書きしたいという話です」
「ちょっと近づいた気がします。真剣に答えてください」
「ミソラさんの立ち位置にぼくがいきたかったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「かなり理解しました。嫉妬ですね」
「お気に入りなのはいいことですけど! ぼくの方が先にいたのに! わぁぁぁぁん!」
「ぬいぐるみにまで嫉妬しなくても」
「妥協はできません」
「過激派」
「勇者さんに楽しみと安心を感じさせる役割はぼくがよかったんですぅぅぅぅぅ!」
「欲望の権化」
「ぼくだって儚げ美少女お肌すべすべもちふわぬくもりの魔王なのに!」
「詐欺じゃないですか」
「勇者さんのお望み通りの姿にもできるんですよ?」
「知っていますよ。でも、ふわふわ枠はミソラでじゅうぶんです」
「両手に花ができるのに」
「両手で抱きしめられるのはひとりまでです」
「くっ……、勇者さんのチャームポイント『小柄』が仇となったか……!」
「床と仲良くするのはいいですが、私は昼寝しますよ」
「まさかミソラさんと⁉」
「だめですか?」
「だめじゃないです最高にかわいい画になりますぼくはカメラの準備をしてきますね」
「やかましいですね」
「撮り終わったら、間に入ってもよろしいでしょうか?」
「よろしくないですが?」
「ぼくの安心毛布は勇者さんなんです」
「そうですか」
「冷たい声……」
「ミソラは渡せませんが、魔王さんのベッドの毛布は使っていいですよ」
「それ、ただのぼくが使う予定の毛布ですよね」
「そうですね」
「無慈悲」
「勇者が魔王に慈悲などくれてやるわけないでしょう」
「あたりは厳しいのに、ミソラさんを抱きかかえているせいでただのかわいい画です」
「何か言いました?」
「かわいいですね!」
「そういうところですよね」
「光栄です」
「相変わらず褒めてはいない」
「それでは、ぼくは勇者さんからの熱い拒否をいただいたので」
「熱い拒否」
「勇者さんコレクションを抱きしめてお昼寝しようと思います」
「不審者だ」
「ほっぺをすりすりするには質感がさびしいですけど」
「言っていることがアブナイひとすぎる」
「ほのかにぬくもりも感じます」
「やだこわい」
「冗談ですよ?」
「冗談だという言葉が冗談であることを私は知っています」
「ぼくの本気度をやっとご理解いただけたようで」
「本気度と書いて危険人物度と読む」
「せめて文字数は合わせてほしいです」
「またルビで『やばいやつ』ってつける時がきましたね」
「ぼくにつけるルビは『いつも笑顔ですてきなひと』でお願いします」
「自分から言うところがなんか、あーって感じです」
「またまた~」
「ミソラは静かでいいですね」
「いや、たぶんですけど、ミソラさんはめちゃくちゃやかましいと思います」
「なんでそんなことわかるんですか」
「同族の匂いを感じるんです」
「魔族じゃなくてぬいぐるみですよ?」
「言葉を変えます。同担の匂いです」
「何を言っているんだろう」
「しかも、強烈な同担拒否の匂いがします……!」
「ほんとうに何を言っているんだろう」
「負けられない戦いがここにあるんです!」
「愉快なひとだなぁ」
お読みいただきありがとうございました。
魔王さん、愉快なひと。
勇者「ぬいぐるみにまで嫉妬しなくても」
魔王「それだけぼくが本気ということです」
勇者「ぬいぐるみとバトルするんですか?」
魔王「ふわふわ対決でしたら、いざ」
勇者「変化するな」