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423.会話 七草粥の話

本日もこんばんは。

七草粥より山菜そばの方が好きなみなさまのためのSSです。

「今日のお昼ご飯は七草粥ですよ」

「ななくさ……? ははあ、魔王さんったら、やっと雑草の良さに気がついたんですね」

「たしかに野草ですが、一般的に食べる草です。勇者さんの毒草とは違いますよ」

「どう見てもただの草」

「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロです」

「呪文ですか」

「七草の内訳です。無病息災を願って食べるものですよ」

「多病の私へのあてつけですか」

「多病のきみを想っての料理です。しっかりがっつりきっちり食べてくださいね」

「おいしい」

「ただのお粥ですから」

「体調を崩した時に魔王さんがやたら作るやつの味です」

「それをお粥というのです」

「昨日もこれだった気がします」

「昨日から風邪をひいていますもんね」

「数時間ぶりだな、お粥よ」

「数時間前は食べられませんでしたもんね。少し元気になったようで安心しました」

「いやぁ、最近寒いですからね」

「寒くなくても体調崩す人はどなたでしたっけ」

「ホトケさんですかね」

「シャレにならないのでやめてください」

「どういう意味ですか?」

「体調が悪くて頭が回っていないのか、単に知らないだけなのか、果たして」

「魔王さんは無病息災粥食べないんですか?」

「名前が長くなっている。食べますよ」

「七草粥に七つの草が入っているのなら、八草粥とか十一草粥もあるんですか」

「語呂が悪いですね」

「好きなだけ雑草を入れる八百万草粥を作りましょう」

「神様みたいに言わないでください」

「世界中の毒草を使って作る、魔王さん専用の毒粥です」

「おどろおどろしい……」

「味は保証しますよ」

「勇者さんが? それはまた珍しいですね」

「一級品の不味さです」

「そっちですか」

「こんな不味いもの、滅多にありませんよ」

「なんでちょっと楽しそうなんですか」

「人生で一度は食べてみたいものです」

「人生で一度しか食べられないんですよ。死ぬので」

「とはいえ、世界中の毒草を集めるなんて夢物語なので、今日はこちらのお手軽毒草をご用意しました。じゃじゃーん」

「いま、鞄から取り出しました?」

「昨日、雪の中で探したんです」

「だから風邪ひいたんですか? やめてくださいほんと」

「まじで寒かったです」

「がんばるところが違うんですよ」

「凍えながら採ったので、ぜひ食べてほしいです」

「食べるので二度としないでください」

「これを魔王さんの七草粥に入れるとあら不思議。八草粥の完成です」

「あの、草に土がついていたような……」

「寒さの震えを利用して払い落しましたよ」

「洗ってはいないんですね」

「だって水が冷たいから」

「宿はお湯が出ますよ」

「えー、出ませんでしたよ」

「どこの蛇口を使ったんですか?」

「外のやつです」

「あれ、そもそも凍っているので水すら出てきませんよね」

「驚きのカチカチでした。私の歯の音みたいで笑っちゃった」

「笑えないので温かくしてください?」

「ところで、お味はいかがですか?」

「そうですねぇ。ほろ苦さを横からぶん殴る感じで土の味がします」

「自然本来の味ってことですね」

「本来すぎますけど」

「地面から力をもらい、元気になるということで」

「力をもらったの、草じゃなくて土の方では」

「健康になればセーフってことで」

「ひとつだけ、完全にアウトな部分があるんですよ」

「どこですか?」

「毒草であること」

お読みいただきありがとうございました。

お粥と仲良し勇者さん。


魔王「ぼくへのいたずらの為に身を犠牲にすることはやめてください」

勇者「毒草粥を食べながら言われるとおもしろいですね。体調はどうですか?」

魔王「特に変わったことはありません。土の味が気になるくらいです」

勇者「効果なし、と」

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