420.会話 目の色の話
本日もこんばんは。
みなさまが気になったり気にならなかったりしたりしていなくもなさそうな目の色についてのお話です。
「魔なるものの目はどうして赤いのでしょうか」
「勇者さんが魔族にご興味を……? 熱でもあるんですか今すぐ休んでください!」
「失礼ですね」
「だってぇ……。勇者さんのくせに魔族のことを質問するなんておかしいですよう」
「失礼だな。……魔族といえば赤目。これまでもほぼ例外なくそうでしたよね」
「変化魔法で本来の姿かたちを偽っているものは別ですけどね」
「でも、本来の色は赤。なぜなのでしょうか」
「さあ?」
「さあって、魔王さんは魔王でしょう」
「赤色だったから赤色なんですよ、きっと」
「説明になってない」
「……神様の考えることなんてわかりませんよ」
「なんですか?」
「いえいえ。それよりも、ぼくは勇者さんの目についてお話ししたいですよう」
「私の目も赤色ですけど」
「似て非なるものです」
「同じ色だから忌み嫌われているんですが」
「違う色です」
「頑固だな。私も変化魔法が使えれば解決ですよね」
「使えないので未解決ですね!」
「やかましいわ」
「魔族も変化が得意なものと不得意なものがいますから、気にしてはいけませんよ」
「私は魔族じゃないんですってば」
「フォローのつもりで言っただけですよう」
「って、そうだ。私は赤色の話をしようと思ったわけじゃないんです」
「そうなんですか?」
「魔なるものは赤目。赤子でも知っている常識です」
「赤子は知らないと思いますけど……」
「その頂点たる魔王さんが青目なのはどうかと思います」
「ぼく、怒られているんですかね?」
「その姿が変化魔法による偽りなのは知っていますが」
「偽り」
「お前魔族だろ攻撃を回避するために青目なのは遺憾です」
「お前魔族だろ攻撃」
「腹立つので、赤青黄黒緑朱白その他の色に一秒ごとに変わるようにしてください」
「なにそれおもしろいですねぇ――と思いたいですが、一周回ってこわいですよ」
「とても直視できません」
「それは困ります」
「さて、魔族の赤目は人間の返り血ですかね」
「勇者さんから出てくるセリフが毎度毎度こわいんですけど」
「でも、目に血が入るととても不快なんですよ」
「年齢制限の気配がするのでやめてください」
「私の目が赤色じゃなかったら、何もかもが違ったのでしょうね」
「それでも、ぼくはきみと旅をしましたよ」
「物好きは簡単には変わらないようですね」
「死んでも直らないでしょうね」
「魔王ジョークにしてはレベルが低いんじゃないですか」
「くるくる頭が回る勇者さんには遠く及びませんから」
「変化魔法が使えない私は今後も赤色のまま生きていくのでしょうけど」
「けど?」
「めちゃくちゃ前髪を長くするとか」
「ヤブさんと被ります」
「サングラス常備とか」
「セレブ勇者さんは解釈違いです」
「布で隠すとか――ちょっと待て、今なんて言った」
「布で隠したら、そもそも前が見えないでしょうよ」
「貧乏で悪かったなこのやろう」
「怒らないでくださいよう。ぼくがいますから!」
「これ見よがしに金貨を出さないでください」
「やめてくださいぼくの目に金貨を埋め込んだら金色になってしまいます!」
「カラーチェンジ」
「いやですあの同担拒否と一緒のカラーなんて!」
「じゃあ銀貨にしますか?」
「ぐっ……。だいじょうぶですか? 白髪に銀色の目なんて神秘的すぎません?」
「やかましいな?」
「失礼しました。白髪青目でも神秘度五億パーセントでしたね!」
「うるせえんですよ」
「お、落ち着いてください? ほら、勇者さんの好きな色を見て。つまりぼくの目!」
「……自惚れんなってんですよ」
「おや、行ってしまいました。ふっふ~ん、今日は自惚れんな勇者さんをゲットです」
お読みいただきありがとうございました。
結局よくわからずに終わるのが当作品の見どころです。
勇者「赤目じゃないと魔王だと思われないってことも?」
魔王「たまにありますよ」
勇者「あるんだ」
魔王「失礼なので滅しています」
勇者「滅してるんだ」