42.会話 髪飾りの話
本日もこんばんは。
世の中いろいろな髪飾りがあるんですね。めちゃくちゃ検索して書きました。
「勇者さんの赤いリボン、黒い髪によく似合いますね。角みたいでかわいいですよ」
「ちっ」
「なんで舌打ちするんですか⁉」
「私の趣味じゃありません。勝手に着けられたんです。あんのクソ神様。ぶっころ」
「地雷を踏んだ気がします。でも、ほんとうにかわいいんですよねぇ」
「死にたいようですね」
「本心を言っただけですよう。趣味じゃないなら、他の髪飾りを着けたらいかがですか? バレッタにヘアカフス、シュシュやコーム、それからカチューシャ、かんざし、ヘアバンド! カチュームもかわいいですよ~」
「一ミリもなに言っているかわからない……。お詳しいですね、魔王さん」
「勇者さんに似合いそうなヘアアクセサリーを旅すがら見ていましたからね」
「ご自分で着けて、どうぞ」
「おそろいでいいと言うならぼくも着けますが」
「くっ……! 新たな脅し……!」
「勇者さんは髪が長いのでヘアアレンジが楽しいですよね。そこに、ワンポイントで髪飾りを着けると……。はあ、考えるだけで楽しいです」
「楽しそうで何よりですが、私は興味ないです。食べられないし」
「リボンを髪の毛に直接編み込むのもいいですよね……。リボン編み込みと言って、非常にキュートでプリティーでエレガントなんですよ!」
「聞いてない……」
「リボンを結ぶ場所を変えるだけでイメージがガラッと変わりますよ。やってみま――」
「やりません」
「うぐぐ……。では、こちらの空色のリボンならどうですか!」
「……やりません」
「そんな。絶対かわいいのにぃぃ!」
「空色のリボンは黒髪と合わないでしょう。魔王さんの方が似合――、こほん、ちょっと貸してください」
「す、捨てないでくださいね」
「捨てませんよ。はい、後ろ向く」
「へあぁぁぁ~?」
「できました。我ながら自分の才能が恐ろしいです。どやあ」
「おお……! これはもしや、リボン編み込みじゃないですか。すごいです、勇者さん! とってもお上手ですよ」
「そうでしょう。褒め称え、崇め祀ってください」
「やたらとスケールが大きいですね。にしても、かわいいです。リボンおそろいですね」
「形が違うのでセーフにしてやります。感謝しやがれください」
「態度も大きいですね。……えへへ~、うれしいです。初めてです、こういうの」
「リボンは他に使い道があるのでいいですね。かんざしも武器になります」
「物騒な思考やめてください。絶対目潰し用ですよね」
「いろんなところに刺すんですよ」
「せめて挿すにしてください。ね、もっといろんな物を着けてみましょうよ、ね?」
「う……。圧を感じる……」
「カチューシャなら簡単ですよ。すぽっとはめるだけです。どうぞ」
「さらっと刺繍のカチューシャを手渡された……。ええい、着ければいいんでしょう、着ければ」
「わあっ! かわいいですよ、勇者さん! 細やかなお花の刺繍がよくお似合いです」
「……むう」
「うわわっ! なにするんですか……って、お花の飾りがついたカチューシャ……?」
「道連れです」
「…………」
「いやなら私も外しますから。……なに笑っているんです?」
「……ふふっ。いえいえ、道連れですね。はい、喜んで」
「私、リボンとカチューシャって着けすぎじゃないですかね」
「えー、かわいいですよ? 他にも着けます?」
「フードを被るのでいらないです」
「せっかくのかわいい勇者さんが見えなくなるじゃないですかやだー!」
「仕方ないですね。ベールで妥協しましょう」
「カチューシャとベールがくっついている物ならありますよ。でもこれ――」
「そぉれ」
「いや、ベールは後ろに……ですね。聞いてます? 勇者さん?」
「いやー、これいいですね。簡易カーテンのようで」
「めちゃくちゃ不審者ですよ。あと……」
「ふうー。ふうーー。おお、楽しいですね。ペラペラなので息で吹き飛びます」
「あの、勇者さん。遊んでいるところ申し訳ないのですが」
「なんですか? 魔王さんもやります?」
「いえ、ぼくは遠慮しておきます。あの、そのベールのことなんですけど」
「はい?」
「全部見えていますよ。薄いので」
「…………」
「照れているかわいいお顔もばっちりです。あ、隠した」
お読みいただきありがとうございました。
髪飾りや髪型などの一覧が載った大辞典的なものが欲しくなるお話でした。名称が一番の壁です。
魔王「勇者さんはおめかしのし甲斐がありますねぇ」
勇者「抵抗するのもめんどうになりました。私が着飾って誰が喜ぶんですか」
魔王「ぼくですが⁉ ご不満でも⁉」
勇者「圧が……圧がすごい……」




