417.会話 ドラゴンの話
本日もこんばんは。
みなさま、2024年もよろしくお願いします。
辰年ですので、ドラゴンの話です。
「うわ……、びっくりした」
「影ですね。この影は……、やはりドラゴンですか」
「うわ……。びっくりした」
「だいじょうぶですよ。降りてきたらぼくがぶっ飛ばしますから」
「あまり見ない魔物なのでドキッとします」
「きみがときめきを⁉ おのれドラゴン、ぼくにだって全然ときめいてくれないのに!」
「そっちの『ドキッ』じゃないですけど。あと、やかましいですよ」
「腹立つので撃ち落としていいですか」
「やめてください。関わりたくないんですから」
「ドラゴンの肉はおいしいと魔界で評判ですよ」
「人間にとっては毒じゃありませんでしたっけ?」
「そうでした。おのれドラゴン、役に立ちませんね」
「朝っぱらから殺伐としないでください。それにしても、寒いなぁ……」
「戦って体を動かすと温かくなりますよ」
「私に戦えって言ってます? 嫌ですよ」
「ドラゴンの牙とか羽とか爪とか目玉とか、強力な魔法道具に使えますよ」
「高く売れると?」
「しばらくぼくがいらない生活ができるほどに」
「それは魅力的ですね」
「あ、待ってください今のは例えであってぼくはきみがいないと生活できないので考えを改めていただきたくうそ待って大剣を持たないで戦わないでくださいよぉ!」
「めんどくさいひとだな……」
「勇者さんから冷たいためいきが……。ぼく、火でも吹きましょうか?」
「ドラゴンと対抗するおつもりですか」
「使う魔法によって、いろんな技を使えますよ。炎はもちろん、氷や水、雷や冷気など」
「想像するだけで強そうです。嫌だなぁ」
「土砂を吐くドラゴンもいました」
「それはなんか、体調悪そうに見えるというか、なんというか、うん」
「基本的に超級以上なので、見つけたら逃げてくださいね」
「逃げられる気がしない。だって飛んでるんだもの」
「死んだふりとか」
「効果あるんですか?」
「まったくありません」
「ないなら言わないでくださいよ」
「希望は持つべきかと思いまして」
「効かない対策は絶望を抱かせるだけですよ」
「勇者ともあろう方が絶望なんて言ってはいけません」
「では、なんと言えば?」
「『たぶんなんとかなる気がする』」
「絶妙に私が言いそうなセリフをチョイスしてきましたね」
「これまでの旅を踏まえ、ぼくが絞り出したきみの言葉です」
「これまでの旅が魔王さんをこうしてしまったことに何の感情も湧きませんけど」
「湧かないんですねぇ」
「魔王さんがいれば、たぶんなんとかなる気がしますよ」
「ゆ、勇者さん……!」
「今もこぶしに魔力をためているあなたを見るとね」
「ドラゴンをぶっ飛ばしたくて仕方ありません」
「どうしようもなくなったら、さすがに私も戦いますよ」
「寒くて丸くなったまま動かないきみが?」
「これはあれです、絶対防御姿勢です」
「何から守っているのですか?」
「寒さ?」
「声も体も震えていますが、防御できてそうですか?」
「できてない……。寒い……」
「はやめにお宿に行きましょうね」
「握りしめたこぶしを解除してからにしてほしいです」
「すみません、ドラゴンがずっと上空にいるものですから、つい」
「風が強くてさらに寒い……。なんか上から吹いてくるし……」
「ドラゴンの翼による風です」
「おのれドラゴン、撃ち落としてくれる」
「ぼく、やってきましょうか?」
「落下位置が私の真上になりそうなのですが」
「ドロップキックでズラしますから安心してください」
「絵面に不安しかない」
「やだなぁ、ぼくは魔王ですよ? 必ず息の根を止めてきます」
「すてきな笑顔で物騒なことを」
「勇者さんにいたっては服にくるまって顔が見えませんからね」
「凍える……」
「今日のご飯はお鍋にしましょう。ドラゴンの肉で」
「だから毒なんですってば」
お読みいただきありがとうございました。
今年もこんな感じで日々続いて行きますので、どうぞのんびり、お付き合いくださいませ。
勇者「ドラゴンってどんな味がするんですか?」
魔王「調理法にもよりますが、ぼくとしては某チキン店の方がおいしいと思います」
勇者「人間の生活に馴染み過ぎたようですね」
魔王「喜ばしいことです」