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416.会話 夜更かしの話

本日もこんばんは。

たまには夜更かしもいいですね。

「おや、今日は夜更かしですか?」

「あんまり眠くないので、また映画観賞か読書でもしようかと思いまして」

「よろしければ、ぼくとお話でも?」

「いつもしているじゃないですか」

「いつでもどこでもどれだけでもお話したいのですよ」

「相変わらず物好きですね。いいですよ。眠くなるまで、ですが」

「では、何を話しましょう。なんでもいいですよ」

「そうですね……。今日も魔王さんは昼まで寝ていましたね」

「勇者さんと夜更かしするのを見越してのことです」

「よく言う……。私のフライパン攻撃でやっと起きたくせに」

「鼓膜が破れるかと思いました」

「私は破るつもりで鳴らしました」

「いやぁ、布団から顔を出したら無表情でフライパンを鳴らす勇者さんが見えるんですもん。ぼくは幻覚かと思ってまた寝ようとしましたよ」

「私が許しませんでしたけどね」

「ですが、勇者さんもお昼寝の時、全然起きませんでしたよ」

「朝から疲れたせいです」

「すよすよ寝ている勇者さんをばっちり写真に収められたのでよいですが」

「よくないですが?」

「お昼寝し過ぎると、夜に眠れなくなると心配でしたが、案の上ですね」

「写真を出せ」

「いやです。もうぼくのコレクションに加わりました」

「魔王さんが寝ている間にどうにかするしかない」

「ぼくを早起きさせるおつもりですね」

「こうでもしないと起きないのもどうかと思います」

「気持ちだけはありますよ」

「だけじゃだめなんですよ。行動に移さないと」

「ですが、勇者さんだっていつも行動できていませんよ」

「当然です。私には行動はおろか、気持ちすらありませんから」

「胸を張って言うことではないかと」

「低予算により生まれた愛しきクオリティのB級映画を観る元気しかありません」

「いつも通りで安心しました」

「ちなみに、魔王さんとの会話はその半分以下の元気で足ります」

「省エネですね」

「何も考えず、口だけ動かせばいいのでラクですよ」

「今の理屈でいくと、ぼくたちの会話はB級映画よりも内容薄っぺらになりますが」

「よくわかりましたね。まさしくその通り」

「ぼく、そこまでカオスなこと話していませんよ」

「存在がカオスだからでは」

「あ、なるほどー。なるほどじゃないですよ」

「セルフツッコミのおかげで私の体力が温存されます」

「これから何かと戦うんですか」

「明日の朝、起きない魔王さんと戦うんですよ」

「ぜひがんばっていただきたいですね!」

「自分で起きれば苦労ないんですけど」

「実に難しい」

「だったら夜更かしせずに早寝してください」

「勇者さんが起きているのに、ぼくだけ寝るんですか⁉」

「そこまで驚きますか」

「今日が終わるその日まで、勇者さんのすべてを目に焼き付けないとです」

「これだから過激派は」

「今日の勇者さんは今日だけですからね」

「まだ日記はつけているんですか?」

「もちろんです。これからも書き続けますよ」

「毎日同じ内容になりません?」

「似て非なる日常です」

「つまらない日記になりそうですが」

「決してそんなことはありませんよ」

「それならまあ、いいです。今日の日記はこれから?」

「はい。夜更かししたことを書かないとですね」

「私のフライパン攻撃も書いておいてください」

「お任せください」

「次こそ鼓膜を破るという私の誓いも」

「お……任せください」

「視線を逸らすな」

「え、ええと……。あ、勇者さん、そろそろ日付が変わりますよ」

「そのようですね。内容薄っぺらの会話で眠くなってきましたし、この辺で」

「ちゃんとお布団をかけて寝るのですよ。風邪をひかないように」

「親ですか」

「明日の朝になればこどもになりますけどね!」

「自覚があるならちゃんと起きてください」

「がんばりますぅ~」

「それでは、また明日」

「はい、また明日。おやすみなさい、勇者さん」

「おやすみなさい、魔王さん」

「やさしい夢をみるのですよ」

「……」

「どうしました?」

「……あなたも、です」

「えへへっ。はい!」

2023年も『魔王っぽい勇者と勇者っぽい魔王』をお読みいただき、ありがとうございました。

2024年ものんびりまったり、お付き合いくださいませ。

それではみなさま、よいお年を。やさしい夢をみてくださいね。


勇者「大量のもふもふに埋もれてひたすら昼寝する夢をみました」

魔王「よかったですねぇ」

勇者「魔王さんはもふもふに潰れてぺしゃんこでした」

魔王「なんてこったい」

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