414.会話 靴下の話
本日もこんばんは。
クリスマスなので、クリスマスっぽいものを。
「朝、起きたら枕元に靴下が置いてありました。魔王さんのですか?」
「ぼくのじゃないです」
「でも、他にいませんよ」
「ぼくのじゃないです」
「え、じゃあ、おばけ――」
「勇者さんのです! おばけじゃないです! 安心して!」
「魔王さんからのプレゼントですか」
「そうで――うわぁあぁぁちが、いや、違わないけどあのそのえっとうええぁぁ」
「前も寒い季節にプレゼントが置かれていたことがありました」
「そっ、それはええと、こ、今回はぼくです!」
「ふむ?」
「足が寒いとおっしゃっていたので、健康のために!」
「なるほど。それでモコモコ靴下なのですね」
「勇者さん、お宿でのんびりする時は基本的に裸足ですから」
「おかげで寒いのなんの」
「こたつ入ってくださいな。お布団もどうぞ。暖房も強く――」
「そこまで気にしなくていいです」
「だって勇者さんが風邪引いちゃうじゃないですかぁ!」
「だいじょうぶです」
「あれ、靴下は履かないのですか?」
「……考えています」
「そこまで思考を要するものではないと思うのですが」
「靴下……。ううん……」
「もしかして、靴下が苦手とか……」
「あ、いえ、そういうわけではなくて」
「では、なにゆえ悩むのですか」
「……靴下を履いたら、枷飾りが見えなくなるなぁ……って」
「……………………」
「……なんですか、その顔は」
「いえ、あまりの愛おしさに爆発しそうになっただけです」
「勝手にどうぞ」
「そんなことを気にしていたのですか」
「そんなことって……」
「そんなことですよ。枷飾りのせいできみが風邪を引いたら困ります」
「むぅ……」
「大事にしている。その事実だけで物にとってはじゅうぶんですよ」
「靴を履いている時は見えないので、こういう時くらいしか拝めないのです」
「勇者さんが裸足でいる理由って、そういうことなんですね」
「……結構、気に入っています、からね」
「お声が小さいようですがっ‼」
「魔王さんはやかましいです」
「ごめんなさい、つい」
「でも、モコモコ靴下もかわいいです」
「暖かいですよ~」
「……一足だけですね」
「ハッ! 洗濯分も含めて二足必要でしたか!」
「……そうじゃない」
「ぼくを見てどうしました?」
「いえ。……次は何か、うん。まあ、いつかね。そのうち、たぶん」
「ひとりごとも聞きたいのですがっ‼」
「あなたはほんとうにやかましいですね」
「いやぁ、えへへ」
「……せっかくなので靴下はいただいておきます」
「はい、ぜひ」
「そういえば、宿に靴下の飾りがありましたが、そういうものなんですか」
「そういうものなんですよ」
「……もしかして、これも吊るすんですか?」
「いえ、履く用です」
「違いがわかりません」
「勇者さんはゆっくり眠ればいいのですよ」
「余計にわからん」
「勇者さんは今年もいい子だったってことですよ」
「…………」
「なにゆえ不満そうなお顔をするのですか」
「……いえ、別に」
「あ、そうです! 靴下で隠れちゃうのが気になるのであれば、ぼくがアレンジして腕輪とか髪飾りに変えましょうか?」
「……今は、このままで」
「よろしいのですか?」
「これは、足にあることに意味があるので」
お読みいただきありがとうございました。
口には出さずとも心の中では、ということが多い勇者さんです。
勇者「おお~、すごいモコモコ。気持ちいい」
魔王「履くものですからね」
勇者「手触りがいいので眠たくなってきました」
魔王「履くものですからね⁉」