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405/705

405.会話 魔の毒の話

本日もこんばんは。

お馴染みのあのコーナーのお時間です。

「勇者さん、魔なるものと戦う時は絶対にケガをしてはいけませんよ」

「それ、耳にイカタコエビのスペシャルお好み焼きができそうなくらい聞きました」

「魔なるものは魔力でできていることはご存知ですよね」

「それはさすがに」

「では、その魔力が人間にとって毒であることは」

「何度か聞きましたね」

「きみも例外ではないのですよ」

「らしいですね。勇者補正の敗北です」

「魔力が強ければ強いほど、毒は強力になります。そして、侵食レベルが深ければ深いほど、聖なる力で浄化できる可能性が低くなります」

「そうなんですね。……あの、これってもしかして例のコーナーですか」

「しっかり聞いてください」

「圧」

「魔力をこめた攻撃には毒が入っていると考えてください」

「あー、だからケガをするなってことですか」

「傷口から毒が入れば侵食は速く深くなります。戦闘でできた傷も元からあった傷も同様。つまり、魔力攻撃は受けないことが前提ですよ」

「無茶を言いますね」

「きみはご自分がケガをすることに頓着がなさすぎます」

「好きでケガをしているわけではありません」

「ぼくがいる時は守れますが、いない時は意識してくれないと困りますよ?」

「善処します」

「心がこもっていません」

「いつものことです」

「……いいでしょう。では、かき氷もびっくりの怖い話をします」

「……えっ」

「魔なるものの毒に侵され、浄化もできないほど進行した人間は等しく命を落とします」

「……まあ、そうでしょうね」

「ですが、ごく稀に死なないことがあるのです」

「ほんとですか」

「死なない代わりに、魔なるものに転じるのです」

「なっ…………」

「珍しくちゃんと驚きましたね」

「だって人間が魔なるものになるなんて聞いたことがありません。神様もそんな事――」

「アレが教えると思いますか」

「思いません。いつものやつです」

「魔なるものに転じた人間はもうどうすることもできません」

「つまり……」

「殺すだけです。それに、侵食によって自我もほぼ消滅状態になりますから、転じたあとはもはや別物だと考えてよいでしょう」

「今まで聞いたこともない話です。ほんとうにあるんですか」

「ごく稀ですよ。ぼくは何度も観測していますけど」

「人間が魔なるものに、ですか……」

「魔力に吞み込まれると言った方が的確かもしれませんね。まあ、ご安心を。百年に一度あるかないかの出来事ですから」

「珍しいことなんですね」

「珍しいですが可能性はゼロではないのです。気をつけるに越したことはありませんよ」

「……わかりました」

「聞き分けのない子には実例をもって説く。この手は使いたくなかったのですが、魔の毒はきみにも関係のある話です。頭に入れておいてくださいね」

「幽霊番組も真っ青の怖い話でした」

「ごめんなさい。怯えた勇者さんもかわ――こほん、かわいいですよ」

「言い直した意味」

「ごめんなさい。真面目な雰囲気に限界がきました」

「もうちょっと頑張ってくださいよ」

「今日は固い話でしたので、癒しの為に勇者さんを抱きしめてもいいですか」

「魔王さんは魔力でできているんですよね」

「そうですよ。この姿は魔法によるものですから」

「…………すすす」

「なにゆえ遠ざかるのです⁉」

「魔王さんは魔力の塊。ハグは攻撃。つまり、抱きしめられたら私は死にます」

「死にませんよう! ぼくはいつも魔力を抑えて過ごしていますから平気です」

「魔王さんの毒で侵食されて魔なるものになっちゃう」

「な、なりませんし、ぼくがさせません!」

「こわーい」

「あ、また無表情で言ってる!」

「魔王さんに言われた通り、毒に気をつけようと思います。いざ、実践」

「勇者さんがどんどん離れていく……」

「ていうか、勇者補正くらいつけろや神様」

「アレには何を言ったって無駄ですよ」

お読みいただきありがとうございました。

魔の毒、なんだかこわいですね。


魔王「あのー、微妙な距離感が悲しいのですが」

勇者「だって魔の毒がどうのって」

魔王「ぼくは愛しか振り撒きませんよう!」

勇者「振り撒くな振り撒くな」

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