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404.会話 モスキート音の話

本日もこんばんは。

モスキート音と耳鳴りを間違える、そんな日々。

「勇者さんが露骨に嫌そうな顔をしているのも珍しいですね」

「変な音が聴こえる……」

「ピーという音ですか?」

「耳障り……」

「モスキート音ですね。若い人しか聴こえないそうですよ」

「あー、だから魔王さんは平気なんですね」

「ぼくはお年寄りじゃないです」

「ロリババアのくせによく言います」

「せめておばあさまと言ってくださいよ」

「…………」

「なんです、じっと見て。照れちゃいますよう!」

「似合わねー……と思って」

「モスキート音が嫌すぎて口調まで荒くなっていますよ」

「どこから出ているんですか?」

「この機械から出しています。勇者さんが気づくかチャレンジ中だったのです」

「壊していいですか」

「止めるのでやめてください」

「テレビが壊れたのかと思って剣を持ってしまったじゃないですか」

「ゆえにぼくは慌ててスイッチをオフにしましたね」

「不快なだけでいいことがありません」

「使いようによっては便利ですよ」

「そこまで言うなら例を三十八個出してください」

「出せそうだけど難しい数ですね」

「モスキート音とやらは魔族にとっても不快に感じるのでしょうか」

「ぼくとしては魔族の高笑いとか魔物の鳴き声の方が不快ですが」

「露骨に嫌そうな顔をしていますね」

「耳障りすぎて自分の鼓膜を破ったことがありますよ」

「やだ過激派」

「すぐ再生しちゃうんですけどね」

「これだから魔王は」

「それぼくのセリフです」

「それにしても、ただの音のくせにこうも嫌悪感を抱けるのですね」

「対魔族用の不快音を開発したら教会のない小さな町や村も助かりますね」

「それ勇者のセリフですよ」

「だって勇者さんが言わないから」

「それはそう」

「小さいスピーカーを内蔵したランタンを軒先に吊るしたり」

「蚊取り線香かな」

「町や村の境界にフェンスと一緒に設置したり」

「獣除けかな」

「町内放送で定期的に流してもいいですね」

「防災訓練じゃないんだから。あ、これは似たようなものか」

「勇者のいない場所でも安心安全に暮らせるようになるとよいのですが」

「でも、音で倒すというのはとてもいいと思います」

「おや、やけに勇者さんが肯定的ですね」

「動かなくていい」

「怠惰なだけでした」

「録音したものを流せばさらに時短」

「勇者が時短とか言っちゃだめですよ」

「録音機を売れば大儲け」

「勇者さん、しっ!」

「勇者の声には魔を滅する力がこめられていてもよいと思うのです」

「ぼく、勇者さんのお声が大好きなのでもっと聞きたいです!」

「効果なし、と。しゃべるのやめるか」

「そんなぁ!」

「かわりにモスキート音を流そうと思います」

「クレームがきますよ」

「うわ、不快な音」

「勇者さんも喰らっているじゃないですか」

「耳栓しよ……」

「それだとぼくの声も聴こえなくなるのでは⁉」

「そうですね」

「当然のように言われた」

「耳栓をすれば大体の音は聴こえなくなります。視界の隅で雄叫びをあげる魔物の声もきれいさっぱり」

「当然のように無視。いや、倒してくださいね?」

「耳栓で聴こえませーん」

「そんなこと言ってる場合――って、どうしました?」

「脳内に直接神様の声がした……」

「今日イチ嫌そうな顔ですね」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは若いのでばっちり聴こえます。


勇者「不愉快……」

魔王「何を言われたんですか?」

勇者「今日観ようと思っていた映画のネタバレをされました」

魔王「極悪じゃないですか」

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