389.物語 踏み出すあなたに光あれ プロローグ
本日もこんばんは。
物語パートです。内容的にはもっと後の方でやるべきものだと思いますが、書きたくなったので書いちゃいました。久しぶりのあの人や初めましてのあんな人やこんな人も登場します。お楽しみに。
プロローグは雰囲気だけなので読まなくてだいじょうぶです。
『踏み出すあなたに光あれ』は全12部構成のため、二日間に分けて投稿します。一気読みしたい方はまた明日、お会いしましょう。
天目が書きたいことを勢いのまま書いたのでいつも以上にハチャメチャです。いつも以上にあたたかい目でお読みください。でも内容はいつも通り。それではどうぞ。
薄暗い部屋の中、ある人物はプレートに水の入ったコップ、パン、副食を二品、小さな甘味を乗せ、スプーンやフォークを取りにレンガの床を踏む。
コツン、コツン――。どこか響く足音を聴くものは他にいない。
耳に届くのは聞き慣れた水の音。止まることを知らぬ水音はその人物が生まれる前から流れている。
だが、そんなことはどうでもいい。
かつての儀も信仰する神も信じていない。
信じるのは、己の力と燻る感情。あの時から決して消えぬ恨みの炎は水に濡れても衰えることはない。
暗い道を照らすのはわずかな明かりだけ。
地上から遠く離れたこの場所には神の光すらも届かない。
うまく動かない口元がきり……と歪む。
神などいない。そう思って何年も経ったが、もうじき神が降臨する。
彼らの信じる神は求めていない。必要ない神を君臨する座から引きずり下ろし、己が渇望する神をこの国に……。
歩くそばを流れる水。誘うように進む先に神はいる。
言葉で繕い、教えを説き、使命を与えた小さな神が。
何も知らなければ求めない。神は無垢で純粋であるべきだ。
では、彼らの信じる神はどうだ?
意味のないことを罪とし、罰を与えることを正当化する愚かなもの。
燃やし続けた心が灰になってもまだ燃える。
考えれば考えるほど顔が痛む。
――だいじょうぶ。もうじき穏やかに笑えるだろう。
プレートを持つ手が震える。うれしい。うれしい。うれしい。
やっとこの時がきた。悲願が果たされる時がきた。
喜びで胸がいっぱいになり、枯れた涙が溢れてくるような気がした。
ここまで生きてきた意味が形となる時、悲憤慷慨してきた己の人生が癒されるだろう。
なんと幸せなことだろうか。
偽りで塗りつぶしたすべてが本物となる。
いけない。喜びでいつもの自分ではなくなってしまう。必死に抑えようとするが、喉の奥から堪えきれない笑いがふつふつと湧いて来る。
蒼然たる空間に響いたその声はひどくしわがれ、掠れていた。
プロローグ、お読みいただきありがとうございました。
まったく意味がわかりませんね。最後まで読めばたぶんわかります。
次回より本編です。お楽しみくださいませ。