383.会話 魔女の話
本日もこんばんは。
やっとこさ魔女の話をします。
「魔女について書かれた本がゴミ捨て場に置いてあったので持ってきました」
「持ってきました、じゃないんですよ。危ないものだったらどうするんですか」
「ただの本ですよ?」
「魔導書の中には持っただけ、開いただけで影響を及ぼすものもあります」
「平気です。見た感じ、一般人向けに書かれた本のようですから」
「どうしてそう思ったのです?」
「魔力をこめなくても読める」
「なるほど」
「すごく深い頷きですね。……私は魔女や魔法使いのことを何も知らないので、こういう本を読むのもいいかと思いまして」
「……では、第六回『教えて! 勇者さん』のお時間……ですかね……」
「やる気がなさそうですね?」
「だって題材が魔女なんですもん……。やる気出ないですぅ……」
「自分で本を読むのでいいですよ」
「お待ちください。一般人向けに書かれた魔女の本はほとんど……ええと、あまりいいものではないので、それを読むくらいならぼくがご説明いたします」
「そうなんですか? では、これは今日の焚き火に使いますね」
「えーっと……、何が知りたいですか?」
「まじでやる気がないですね。そうだなぁ、まず、魔女って何ですか?」
「そこからですか? ええと、魔女とは魔法を使う人間の……主に女性を指す言葉で……魔法使いでもいいんですけど……区別する意味とかなんとかで……?」
「ほんとに詳しいんですか?」
「あんまり興味がなくて……」
「そもそも、なぜ魔法使いと魔女という言葉があるんですか? 魔法を使う人間はすべて『魔法使い』でいいじゃないですか。使い分けがめんどくさいです」
「あぁ、それはですね、ちゃんと理由があるのですよ」
「あ、やっと『教えて! 勇者さん』の時間が始まりそうですね」
「まず、魔なるものは魔力によってできているので、魔力を持っていて当然なんです。だから、わざわざ『魔法を使える魔物』という言い方などしません」
「そうですね」
「ですが、人間は本来、魔力を持っていないのが普通です。はるか昔、魔力を持つ人間が発生してから現在まで、強い偏見と差別が残っているのはご存知かと」
「……はい」
「魔力を持ち、魔法を使う人間は、魔力を持たない人間によって酷い歴史を歩みました」
「…………」
「そんなある日、ひとりの魔法使いが魔法使いの為の居場所を作ろうとしたそうです。そして、世界中から救いを求めて集まった魔法使いたちにより、彼らは生きる場所を得た」
「まるでおとぎ話のようですね」
「最初に立ち上がり、魔法使いの為に生きた魔法使いは女性でした」
「つまり……」
「はい。彼女を信じ、ついていく魔法使いたちは、先導者であるその人に特別な呼び名を決めたそうです。それが、魔女。魔力を持ち、魔法を使い、魔法使いを導き、魔法使いの為に生きた女性。時は流れ、魔法を使う女性のことを『魔女』と呼ぶようになった」
「なるほど」
「女性だけ別個で名称があるのは、始祖とされる魔法使いが女性だったからですね」
「なかなか興味深い話でした」
「魔なるもの同様、『魔法使い』という言葉は魔法を使う人間すべてを意味しますから、どちらを使っても間違いではありませんよ」
「今日はかなり勉強になりました」
「いつものコーナーでもちゃんと学んでくださいね」
「魔王さんは魔王なのに人間のことに詳しいですよね」
「時間だけはありますから」
「深い納得」
「色々あって魔法使いについて調べたこともあるんですよ」
「調べた割には興味なさそうなんですよね」
「あんまりいい思い出じゃなくて……」
「魔王さんって魔女と腐れ縁があるんですかね」
「いやだぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁ!」
「うるせえんですよ」
「二度と魔法使い魔女には関わりたくないです……」
「無理すぎる」
「やっぱりぃ……」
「さて、コーナーも終わったところで暇つぶしにこの本でも読もうと思います」
「だめです。没収!」
「あ、まだタイトルも読んでいないのに」
「タイトルって……げっ!」
「なんですか? 教えてください」
「だ、だめですこんなものポイです!」
「『魔女狩りと異端審問の歴史』?」
「どこから顔出して読んでるんですか?」
お読みいただきありがとうございました。
今回出てきた魔女の伝説はいずれ物語パートに登場する予定です。いつになることやら!
勇者「魔王さん、当然のように本を火にくべましたね」
魔王「あ……、違う方法で廃棄するべきでしたかね」
勇者「燃やしちゃだめなんですか?」
魔王「魔女と火はちょっと……ね」