366.会話 朝食の話
本日もこんばんは。
朝食とは、つまり朝ごはんであり朝飯でありモーニングであり朝餉のことです。
「朝食とは、何時から何時の間であれば朝食なのでしょうか」
「ぼくが悪かったですので……」
「眠りにつき、次に起きた時はすべて朝という考えをしてもよいのでしょうか」
「ぼくがぜんぶ悪かったですってばぁ……」
「午前中であれば朝ごはんになるのか否か。あなたはどう思いますか」
「ごめんなさいぃぃ~……」
「何度起こしても起きず、朝食の時間を過ぎてしまったことへの謝罪は命ですよ」
「勇者さんが引っ張っているのはぼくのアホ毛ですが……」
「引っこ抜きましょうか?」
「すみませんすみませんすみませんいだだだだっ」
「せっかく二食付きの宿に泊まっているのに、なんともったいないことを」
「ぼくをほっぽって食べてきてもよかったんですよ?」
「勇者だと思われている魔王さんを連れて行かないと不審がられるんですよ」
「そ、そうでしたね」
「ねぼすけ魔王さんのせいで朝食抜きになってしまいました」
「超ショックですね!」
「………………」
「……すみません、言葉を間違えました」
「宿の朝食時間は七時から九時に設定されていました。その時間に入らないと朝食はいらないと見なされてしまうわけです」
「そうですね」
「魔王さんがやっと体を起こしたのは何時だったでしょうか」
「十時半ですね!」
「遅い」
「ごめんなさい」
「旅をしている私たちは、そこまで時間に縛られて生きているわけではありません」
「せいぜい昼夜の境くらいですものね」
「ですが、宿に泊まると宿側のスケジュールに合わせなくてはいけません」
「特に食事の時間は制約がありますからね」
「せっかく用意してくれるのに食べないのは失礼です」
「それはほんとにそう」
「私はフロントに謝罪の電話をしておきました」
「いい子」
「ぽんこつねぼすけあと五分魔人が起きないので朝食は食べられません、と」
「ぽんこつねぼすけあと五分魔人」
「フロントの人は『気にしないでください』と笑って答えてくれました」
「いい人」
「これでお金をもらっているからです」
「真実を言わない」
「個人的には、十時半でも問題なく朝食の時間だと思います」
「のんびりぐーたらしていると遅くなる時もありますからねぇ」
「私たちふたりだけなら何の問題もないのですが、宿の場合は別ですよね?」
「圧がすごい」
「そして、魔王さんを床に正座させて説教をしている間にチェックアウトの時間が迫っているのです。一体どうすればいいと思いますか」
「ここに二泊しましょう。お金ならありま――」
「はやく支度してください」
「ただ今」
「食べ物の恨みは強いですよ」
「勇者さんが言うと説得力がありますね」
「勝手に食べるスタイルの朝食なら今日も食べられたんでしょうね」
「衛生的にもお宿でそのスタイルはあまりないと思いますよ」
「お腹すいた……」
「あ、すごく不満そうなお顔! かわいい!」
「二度と何も食べられないようにしましょうか」
「すみませんでした」
「魔王さんの準備ができるまで、外に出ていてもいいですか」
「構いませんが、何をしに行くのですか?」
「その辺に生えている草でもつまもうかと」
「すぐ支度するのでお部屋で待っていてください」
「空腹」
「わかりましたからぁ! でも草はだめですそんなもの食べさせませんよ!」
「ぜんぶ起きなかった魔王さんのせいです」
「き、昨日、夜更かししてしまって……。えへへ」
「寝起きが悪いくせに夜更かしとはいい度胸ですね」
「いやぁ、えっへん!」
「褒めてない」
「ごめんなさい」
「さて、ふざけた会話をしている間にチェックアウト時刻を過ぎました」
「まじでごめんなさい」
お読みいただきありがとうございました。
この後、魔王さんが全力で謝罪してからチェックアウトしました。
魔王「朝ごはんに何か買いましょう」
勇者「もしゃもしゃそうですねもしゃ」
魔王「何の音――って、勇者さん、草を食べない! 没収!」
勇者「ああー」




