365.会話 世界樹の話
本日もこんばんは。
世界樹という言葉もかなりファンタジーっぽいですよね。
「勇者さん、木陰でお昼寝するのがお好きですねぇ」
「文句があるならあっち行ってください」
「ないのでここにいますね」
「もう少し葉が広がっているといいんですけど……。日が当たる……」
「せっかく見つけた木ですが、お昼寝には向いていなかったみたいですね」
「昼寝用の木を持ち運びたいです」
「大工に転職するおつもりですか」
「そもそも、私が木の元に行くのが間違っているのです。木が来い」
「木が動いたら魔物だと思いますよ」
「幹が太くて葉がわさわさ生えて木陰を作りぬくもりをくれる世界最強の昼寝樹はどこ」
「昼寝樹はわかりませんが、世界樹ならありますよ」
「なにそれ知らん」
「普通の人は行けない場所ですので、静かなお昼寝にぴったりかと」
「どこにあるんですか?」
「知りません」
「知りません?」
「聖性の木なので魔王とは縁遠いのですよ」
「聖性となると、勇者である私とは縁のあるものってことですよね」
「そうなります」
「いま初めて知りましたよ」
「でしょうね」
「…………」
「そんなお顔をしないでください。アレが丁寧に教えるわけないでしょう」
「そうでしたね。でも、たった今、私は最高の昼寝スポットを知ってしまいました」
「あれ、もう行くのですか? 寝っ転がったばかりなのに」
「最高の昼寝を求め、世界樹とやらを探す旅に出かけましょう」
「ぼくたちの旅にそれっぽい目的が!」
「……だめです」
「あ、倒れた」
「ねむい……」
「危ないのでゆっくり倒れてください」
「むちゃいう……」
「世界樹はいいのですか?」
「まおうさんみつけてきて……」
「ぼくは見つけられないと言いましたよ。魔王だとだめなのです」
「世界樹というくらいですから、とても大きな木なのでしょうか」
「ですかねぇ?」
「つまり、その辺に生えている木を集めて括って地面に挿したら世界樹ですか」
「毎度のことながらきみの『つまり』はつまっていないんですよ」
「どこにあるかもわからないものを探すなんてめんどくさい」
「神様に訊きますか?」
「思ってもいないことを言わないでください」
「バレましたか」
「世界樹……。聖性の木……。所在地不明……。ハッ!」
「また何か閃いたんですか?」
「世界樹の枝は、伝説の枝ですか?」
「おぉ、なんだかそれっぽいことを言っていますね」
「聖性の木ならば、不思議な力の五つや八つあるはずです」
「絶妙な個数」
「世界樹の枝で杖を作れば、世界最強の魔法使いが?」
「勇者さんは魔女ではない定期です」
「じゃああれだ、えーっと、最強の目潰し用の武器ができる」
「すぐ目を潰そうとするぅ」
「燃やしても燃えない性質があれば永久に焚き火ができます」
「旅人にとっては地味に必要な要素ですね」
「疲れた時に枝を集めるのはしんどいのです」
「地面とくっついて全然動きませんもんね」
「枝が来い」
「横暴」
「世界樹も来い」
「そればかりは勇者さんが言うと……ですね」
「なんですか?」
「あれは人ならざるものです。勇者や聖女より神に近い存在ゆえ、きみが求めれば世界樹への道が開かれるかもしれませんよ」
「まじで世界樹が来るんですか」
「可能性はあるかもですねぇ」
「よぉし、世界樹に行ったらキャンプファイヤーしようっと」
「開かれた道が閉ざされた気配が」
「魔王さん火炙りの刑」
「飛び火っ」
お読みいただきありがとうございました。
ユグドラシルと迷いましたが、目に優しい漢字を選びました。
勇者「このーきなんのきーきになるきー」
魔王「これはりんごの木ですね」
勇者「りんごなんてありませんよ」
魔王「収穫後ですからね」