364.会話 春夏秋冬の話
本日もこんばんは。
最近、四季が二季になっていますよね。この世の終わりです。
「勇者さんの好きな季節は何でしょうか。ぼくは気になって気になって」
「気になって?」
「今日の夕飯を作る手がうまく動きません」
「一大事ですね。いいでしょう。お答えします。適温ならばいつでもいいです」
「若干テキトーに答えている感じがしますが、その心は?」
「四季というものがそもそも……」
「そこからですか」
「一年中適温になればいいのに」
「気温差が重要なこともあるのです。特に作物など」
「ずっと適温だとおいしいものが育たないと?」
「そういうこともありますね。それに、四季の良さもあるでしょう?」
「…………ッ⁉」
「そこまで驚くこと言いましたかね?」
「四季の良さ……。それは、こたつです!」
「そこまで驚くことでしたかね?」
「私はこたつのすばらしさを知りました。世界に感謝したほどです」
「まずはこたつに感謝するべきかと」
「夏は嫌いでした」
「唐突ですね。……ん? でした?」
「海を知ったので……、少しはいいかなと思うようになっただけです」
「おやおや、うふふっ。そうですかそうですか~」
「顔がやかましいですよ」
「失礼しました。春はいかがですか?」
「お花見はすばらしいですね。おいしいものがたくさん」
「花より団子の勇者さん」
「……桜もきれいでしたよ。また見てもいいです」
「またお花見しましょうねぇ。秋はどうでしょうか?」
「マロンスイーツですね。攻撃力の高い栗をぶん投げるのも一興」
「勇者さんがケガをするので投げるのはやめましょうね。冬はどうでしょう?」
「こたつこそ至高」
「深い頷き……。勇者さん、こたつ好きですよねぇ」
「こたつという棺桶に入って眠りたいです」
「すぐ闇深いこと言う」
「魔王さんもいかがですか、棺桶?」
「せめてこたつの方で誘ってください」
「羽毛布団を敷いた棺桶でアイス食べながらお花見したいです」
「色々混ざってますよ」
「そう言う魔王さんの好きな季節は何ですか? 別になんでもいいんですけど」
「本音が口から駄々洩れですね。ぼくの好きな季節、それは、勇者さんと過ご――」
「見た目的には冬ですね」
「最後まで言わせて」
「人間に対する愛的には春でしょうか」
「あの、最後まで」
「魔なるものや神様に対する殺意は冬の厳しさの如く」
「あのぉ」
「秋は……、何も出てこない。思考の限界です」
「イメージの問題ではなく! ぼくは勇者さんと過ごす季節ならば全部好きですよう!」
「出た、好感度上昇作戦」
「ぼくは常に本音を駄々洩れさせる気持ちで生きています」
「少しは仕舞っておいてください」
「勇者さんを見ると勝手に口から出てくるんですよね」
「真顔で言われるとこんなにこわいんですね。笑えや」
「にっこり。勇者さんと過ごす春夏秋冬はかつてなく色鮮やかなのです」
「花とか山とか、季節によっていろんな色がありますけど、私は何もしていませんよ」
「えへへ~。ぼくの目にはとってもすてきな世界が見えていますよ?」
「……? 眼科行きますか?」
「視覚の異常ではなく」
「抉るだけなら私にもできます」
「そういうことをですね」
「魔王さんにしか見えていない色があるのでしょうか。ふうむ、気になります」
「そ、そんなに近くで見つめられると! ぼ、ぼくはぁ!」
「あ、隠した。やっぱり眼球に秘密があるんですね。教えてください」
「秘密なんてありませんよう!」
「春夏秋冬によって瞳の色が変わるとか?」
「ぼくはいつでも青い目ですよ」
「春は桃色、夏は青色、秋は黄色、冬は白色」
「勇者さんがお望みなら変えてみましょうか?」
「……いえ、だいじょうぶです。はー、それにしても暑いですね。これだから夏は」
「勇者さんは夏が苦手ですねぇ。秋が恋しくてたまらないって感じですか?」
「そうでもありませんよ。……昔よりは、ね」
読みいただきありがとうございました。
夏の殺意の高さは異常です。この世の終わりです。
勇者「それでも暑いものは暑いです」
魔王「アイス食べますか?」
勇者「ただの液体に見えるのですが」
魔王「驚異の暑さにより秒で溶けました」