36.会話 色の話
本日もこんばんは。
色の話ということで、おふたりの好きな色がわかる回です。
「カラフルなおうちですね~。かわいいです。ぼく、住んでみたいです」
「目がチカチカする住宅街ですね。早々に抜けましょう」
「おとぎの国のようですよ。のんびり見ていきましょうよ。あ、このおうちかわいい!」
「屋根が黄色、外壁が朱色って……。落ち着かないです」
「温かい色だと思うのですが。そういえば、勇者さんの好きな色ってなんですか?」
「好きな色ですか。気にしたことはないですね」
「でも、このおうちはお好みではないんですよね」
「好きな色と家の塗装は別問題ですからね」
「なるほど」
「魔王さんのお好きな色は何です? 魔王らしく黒色とか灰色とか、暗黒感のある色?」
「ぼくの好きな色ですか~。たしかに黒色、好きですよ。暗黒感は関係ないですけど」
「そこは嘘でも言っておくところですよ」
「なるべく嘘は吐きたくないのです。あと、黒色より好きな色がありますよ」
「それは?」
「赤です」
「……やはり、のほほんとしていても魔王ですね。穏やかな旅をしていて、鮮血の色が恋しいのでしょうか」
「違いますよう。そんな物騒な理由じゃありません」
「というと、他に理由があるんですか」
「そりゃあ、もちろん。とってもすてきな理由がありますよ」
「……? なんで私を見るんです」
「それはそうと、勇者さんのお好きな色をまだ答えてもらっていませんよ」
「私は……」
「……? その目はどういう感情なんですか?」
「いえ、お気になさらず。そうですね、答えるならば青色でしょうか」
「おお! して、理由は?」
「理由……ですか……」
「……? だから、どういう感情ですか、それ」
「いえ、お気になさらず。あとは、緑色も好きです。落ち着きます」
「寒色系というやつですね。それに自然を思わせる色です」
「自然ですか」
「青は空! そして海! 緑は草原! そびえる山々の色ですよ~」
「海、ですか」
「はい。勇者さん、海はご存じですか?」
「いえ、海という言葉だけ誰かの会話で聞いた覚えが」
「とってもすてきな場所ですよ。そうだ! 今度海に行きましょう」
「楽しそうですね、魔王さん」
「そりゃもう! ずうっと遠くまで広がる一面の青い世界です。太陽の光がきらきらと反射し、波の音が風に乗って響いているんですよ。ざぶーんざぶーんと寄せては返す波はずっと見ていられます。空とは違うきれいな青色が見られますよ」
「……きれいな青色ですか。ちょっと見てみたいですね」
「海を見たら、もっと青色を好きになると思いますよ。空と海の青色コンビネーションです」
「……。困りましたね、まさか楽しみができるとは」
「いいことじゃないですか。ハッ、ぼくがプレゼンしたら勇者さんの楽しみが増え、好きな色も増える……⁉」
「斜めの解釈ですね。ツッコみませんよ」
「と、いうわけで、カラフルパラダイス魔王爆誕です」
「うわぁ……。なんですか、気でも狂いましたか」
「そこで投げ売りされていた在庫処分パーティー品を片っ端から装備しました。どうですか?」
「どうですかと訊かれても、隣を歩かないでほしいとしか」
「お好みの色はありますか? あ、このバンダナとかどうです? 青色ですよ」
「青色が嫌いになりそうです」
「そんな」
「その腰に巻いているふさふさしたやつはなんです? バランの進化系ですか?」
「お弁当に入っているアレと一緒にしないでください」
「ばかみたいにでかいサングラスの意味あります? 顔の半分埋もれていますよ」
「めちゃくちゃ視界が悪いです。いつの日か、勇者さんが転んだのもわかります」
「在庫処分品なんですよね。めんどうですし、そのままゴミ箱に行っていただいて」
「そうですね。ちょうどゴミ置き場がありますし、もったいないですが廃棄しましょう」
「なんでサングラス外しているんですか」
「なんでって、捨てるわけですし……?」
「そのままゴミ箱にって言いましたよ。そこから動かないでくださいね」
「もしや、ぼくごとですか? さすがに泣いちゃいますよ」
「ものすごい勢いで処分品を吹っ飛ばした……」
「うえええええんぼくはゴミじゃありませんんんん!」
「はいはい、知ってますよ。……やっぱり、あのサングラスはない方がいいですね」
「視界が悪いですもんね。ってあれ、なんで笑ってるんです?」
「いえ、お気になさらず」
お読みいただきありがとうございました。
魔王さんの好きな色、赤(と黒)。
勇者さんの好きな色、青。
魔王「カラフルパラダイスなぼく、そんなにだめでした?」
勇者「白黒の世界になってほしいと切に願うくらいには」
魔王「白黒の世界でもぼくたちはそのままでいられますね!」
勇者「お互いの好きな色が消え去りますけどね」
魔王「アッ‼」




