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358.会話 遊園地に来た話その➈・観覧車

本日もこんばんは。

遊園地といえばのアトラクションです。また回っていますね。

「最後のアトラクションはこちらです」

「どう見ても回ってる。また回ってる。これだから人間は」

「ですが、三半規管を労わるゆっくりスピードでまったり景色を見ることができますよ。そしてそして、遊園地と観覧車の組み合わせはいつだってマロンがいっぱい……」

「ロマンロマン」

「おっと、待ち受ける勇者さんとの雰囲気ばっちぐー密室空間ですてきな雰囲気大作戦に意識が奪われてしまい、素で間違えました」

「全部しゃべっていますけど」

「むぐっ」

「今更口を抑えても遅いですが、せっかく並んだ列から外れるのはもったいないので乗ろうと思います。ロールケーキみたいでおいしそうですし」

「後半が本音ですね」

「さて、私は遊園地というもの自体初めてで、観覧車なるものも初めて乗るのですが」

「そうですね」

「向かい合いように座席があるにもかかわらず、隣り合って座るのがマナーなんですか」

「そうですね!」

「若干の傾きを感じて嫌なのであっち行ってください」

「もしかして、こわいのですか!」

「なんでうれしそうなんですかやめてください違います近いですあっち行けってば」

「こわいなら余計に近くにいるべきだと思いまして!」

「やかましいですこっち見んな」

「つれない勇者さんもかわいいですねぇ。ではでは、写真が撮りにくいので、ぼくは反対側に移動しますね――っと、そんなことを言っている間にもうこんなに高いですよ」

「ほんとですね。乗ってきたアトラクションがあんなに小さく……」

「賑やかだった世界から一気に離れていきますね。こうしてふたりきりでいると、いつものぼくたちを思い出して安心しちゃいます」

「遊園地に連れてきたのは魔王さんでしょう」

「人混みが苦手なきみですが、遊園地の楽しさを味わってほしくて。……ですが、想像以上に勇者さんの三半規管が悲しくて……。すみませんでしたぁ~……」

「……別に、あなたが謝ることではありませんよ」

「楽しそうだったのがシューティングゲームしか思い浮かばなくてぇぇぇ……」

「……魔王さんは」

「はい?」

「魔王さんは楽しかったですか? 今日、私と遊園地に来て」

「そ、そりゃあもう! 勇者さんコレクションもたくさんゲットできました!」

「私は世界に遊園地という場所があることを知りませんでした。あなたが連れてきてくれなかったら、ずっと知らなかったでしょう。だから、貴重な時間になりました」

「貴重な……とは、つまり」

「楽しかった……です」

「ほんとですか⁉」

「ジェットコースターはダイナミック三半規管破壊でしたし、おばけ屋敷は心臓に悪いし、ゴーカートはアクセルが弱いし、コーヒーカップは提案者の頭を疑いますし、空中ブランコは三半規管破壊再びでしたが」

「感想が楽しそうじゃないですぅ……」

「この空間と時間を楽しんでいる自分がいることを感じていました」

「ほんとですかぁ……?」

「地平線に沈んでいく夕日だって、ここに来なければ見られませんでしたよ」

「え?」

「頂上です」

「わぁっ……! きれいですね、勇者さん!」

「これから魔なるものたちの時間だというのに、地上はずいぶんと煌びやかです」

「遊園地とはそういう場所ですから!」

「まったく、人間たちは夜まで遊ぶつもりなんですか」

「ぼくたちも、ですよ」

「……悪い顔」

「魔王ですから」

「ところで、このゴンドラとやらが落ちたらどうなるのでしょうか」

「今いい雰囲気だったのにどうしてそういうことを言うのですか」

「耐久性はいかほど」

「頂上から落下したら死にますよ」

「一日に一度、ランダムで一つ落下するというのは」

「命懸けのアトラクションはやめてくださいね」

「では、ランダムで爆弾が積まれている方向性で」

「全部危険なんですよ」

「観覧車はドキドキイベントが発生すると看板に書いてありました」

「意味が違うんだぁ」

「観覧車も後半戦です。さて、何でドキドキしたいですか?」

「エッ⁉ 選ばせてくれるんですか?」

「爆弾、毒薬、こんにゃくの三つからお選びください」

「どう足搔いてもロマンチック路線にはいかないのですね」

お読みいただきありがとうございました。

観覧車のスピードなら三半規管もにっこり。


勇者「ふわぁ~。ねむねむ」

魔王「あのー、少しくらい危機感とか……」

勇者「魔王さんがいるのに危機感?」

魔王「いいんだか悪いんだかですねぇ……」

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