357.会話 遊園地に来た話その⑧・シューティングゲーム
本日もこんばんは。
勇者さんの時代到来。
「しばし休憩してからやって来たのはここ! 回らないアトラクションです」
「えーっと、敵を倒してポイントを集めろ、ですか」
「勇者さんにぴったりかと思いまして」
「そうですね。私の殺意が火を吹きそうです」
「なぜぼくを見て言うのですか? 倒すのはゲーム内の敵ですよ」
「仕方ないですね。やってやりましょう」
「回復したからかちょっと元気そうですね。安心安心です」
「ふふふ……、すべての敵を蜂の巣にしてやります」
「元気すぎですね?」
「自動で動くトロッコに乗ってステージごとの敵を撃っていけばいいのですね」
「室内は少し暗いですがだいじょうぶですか?」
「銃で敵を狙い撃つのに明るい場所でやるやつがいますか? 見つからずに撃つんですよ。暗闇に紛れて急所を確実に撃ち抜いて息の根を止めるのです」
「言っていることは概ね正しいのですが、勇者としてはグレーゾーンですよ」
「銃を武器に持つ勇者もいたでしょう?」
「そりゃあいましたけど……」
「魔王さんを蜂の巣にする練習といきましょう。いざ、勝負」
「機関銃を持つ勇者さん、異様にお似合いですよ」
「ありがとうございます撃ちましょうか?」
「どういたしましてだいじょうぶです」
「敵に光る丸が浮かび上がっています。急所?」
「そのようなものです。あれを撃つとポイントが入りますよ」
「ふうん……。……こうかな」
「うわすごい。ノーミスで全ヒットですか。びっくりして声の抑揚が消えましたよ」
「あ、魔王さんの倒す敵がいなくなりましたね」
「時間経過で復活するのですが、間髪入れずに勇者さんが倒すのでね」
「敵がいれば倒す。当然のことです」
「発言は勇者っぽいですね」
「一匹たりとも逃さない」
「アブナイスイッチが入ったんですか?」
「雑魚どもめ」
「もう魔王じゃないですか」
「そういうあなたは銃すら持っていませんけど」
「敵がいないので、楽しそうな勇者さんを見ることにしました」
「角度的に魔王さんを撃つことができなくて悲しいです」
「実弾は出ませんからね?」
「現実でも一発当てるだけで敵を倒せたら便利なんですけど」
「勇者の力をこめたり、聖性を強くしたりすればできるでしょうね。雑魚なら一般的な銃器でも倒せますよ。それこそ、このゲームみたいに」
「つまりこれは、ゲームであってゲームではないのです」
「どこかで聞いた言い回しですね。許可取ったんですか?」
「取っていません」
「だめじゃないですか。勇者ならその辺はしっかりしなきゃだめですよ」
「勇者なので少しくらいは許してほしいものです」
「めんどくさいだけでは。それにしても勇者さん、シューティングゲームお上手ですね」
「天才なので」
「ボケたつもりでしょうが、まじで才能ですよ。ここまでノーミスですもん」
「たいして難しくないですよ?」
「簡単に言いますねぇ。加算されていくポイントのスピードがこわい」
「命が失われていく実情です」
「突然の闇」
「あ、音楽が変わりました。ボス戦ですか?」
「巨大なドラゴンが出てきましたね。狙い撃つポイントは開閉する口の中だそうです」
「そぉい」
「嘘でしょ?」
「勝ちました」
「まだ口を開けていなかったと思うのですが」
「牙の隙間から撃てます」
「やだこの子天才」
「ふふん。どんなもんじゃいこんなもんじゃい」
「得意げな勇者さん、良い!」
「最終ポイントが出ましたね。私が二万ポイント、魔王さんがゼロポイント」
「差」
「二万ポイントといわれてもよくわかりませんね。普通はどれくらいでしょうか」
「これまでの高得点者がランキングで表示されていますよ。どれどれ……、勇者さんが一位! さすがです、勇者さん!」
「二位の人、八千ポイントしかありませんよ。集計間違っているんじゃないですか」
「きみのシューティングスキルが異常なだけかと」
「それでも差が大きすぎます。ヒット判定が壊れていたのかもしれません」
「壊れていたのはたぶん勇者さんの方ですよ」
お読みいただきありがとうございました。
勇者さんはゲームが得意。
勇者「限界値を出す挑戦をしてみたいです」
魔王「水を差すようで悪いのですが、限界値は二万だそうです」
勇者「えー、不満」
魔王「きみが強すぎるんですよう」