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353.会話 遊園地に来た話その④・ゴーカート

本日もこんばんは。

レールがついているタイプのゴーカートはつまらないと思います。

「勇者さんの不満がさらに増したので、三歳児にはできないアトラクションにやって来ました。こちらをご覧ください。ふふん、ゴーカートです!」

「あれで魔王さんを轢けばいいんですね」

「よくないです。そういうアトラクションではありません」

「敵を轢いた数がポイントになるんじゃないんですか」

「そんなダイナミックなものではなく、コースを走って楽しむものですよ」

「あ、私、免許証とかいうやつ持っていません」

「だいじょうぶですよ。事前に準備すべきものはひとつだけ」

「それは?」

「目一杯ゴーカートを楽しむ心です!」

「ないから帰ろうかな」

「そそそそそそう言わずに! 代わりにぼくが準備しますから! わぁ楽しみですぅ!」

「なんかすみません」

「実際の車とはかなり違いますが、いざ運転と参りましょう!」

「二人で乗るんですね」

「ひとりずつでも遊べますが、これなら合法的に勇者さんの近くに乗れ――」

「しゅっぱーつ。そぉい」

「うぎゃああアクセル全開ぁぁぁ」

「あ、結構いい感じですね。時の支配者になった気分です」

「ゴーカートで味わえるものなんですかそれ」

「これで旅をしたら風は気持ちいし、速いし、魔物は轢けるしで、すてきですね」

「涼しい顔して魔物を吹き飛ばす勇者さんは見たいです」

「いくらで売っていますか?」

「ゴーカートを買う人は遊園地関係者だけだと思いますよ」

「えー。最近欲しいと思った物の中では、五十三番目に欲しいレベルなのに」

「低いですね。ところで勇者さん、ゴーカートは初めてですよね?」

「もちろんです」

「運転……、お上手ですね? どこかで習ったのですか?」

「待ち時間に他の客の様子を見ていただけです。アクセルとブレーキでしたっけ? ペダルは二つだけですし、ハンドルも左右に動かす程度で難易度は高くありません」

「ゴーカート初心者なのに、一度も壁にぶつかっていません……」

「ぶつかったら事故じゃないですか」

「それはそうなんですけど、ここまで滑らかに運転されると脳がバグるというか」

「何か悪いことが?」

「ありません。非常に安定したドライブテクニックでございます」

「どこ見て言ってんですか」

「いやぁ……。こどもの成長って速いんだぁと……」

「それにしても、全然敵が出てきませんね」

「ゴーカートってご存知ですか?」

「障害物や敵、他の客との熱いバトルを繰り広げるものですよね」

「いやそれ、カート違いですね」

「いつでも戦えます」

「運転してください」

「おや、魔王さん。前方に敵を発見しました」

「勇者さんの卓越したドライブテクニックにより、前のお客さんに追い付いてしまうという異常事態が発生したようですね。危ないですし、この辺で止まりましょう」

「戦わなくていいんですか?」

「ゴーカートってご存知ですか?」

「植え込みにある石を投げて車体を破壊するんですよね」

「カート違いの方でも知らない戦闘方法を出さないでください」

「石は強いですよ。投げてよし、詰めてよしです」

「投げない。詰めない」

「コーナーに引っかかって進めないようですね。今のうちに突撃しますか?」

「しちゃだめですからね?」

「そぉれ」

「あぁぁぁあだめですってばぁ! ……あれ?」

「お気をつけてー。さいならー」

「ぶつけたことで引っかかりを直したのですね。さすが勇者さんです!」

「うるせえんですよ。偶然ですたまたまです気まぐれです気のせいです」

「またまたぁ~。そんなこと言ってぇ~えええわぁぁぁぁぁやめてくださぁぁぁ」

「アクセル全開で突っ走りましょう。ゴールまでもうすぐですよ」

「勇者さん壁! 目の前、壁ですよ⁉」

「一度くらいは当たって砕けたいですよね」

「ゴーカートってご存知ですか? これ三回目の問いなんですけど」

「ご存知ですよ。今日知りました」

「わざわざ当たりにいかなくても」

「でも、看板に『当たって砕けろ! 熱いバトルのゴーカート』って書いてありました」

「アトラクション名を真に受けないでください。ですが、素直な勇者さんもすてき――」

「ばこん」

「イダッ!」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは運転得意なタイプだと思います。


勇者「これ楽しいです」

魔王「気に入っていただけたようでなによりです!」

勇者「操作に慣れたところで魔王さんを……にこり」

魔王「すてきな笑顔ですがだめですからね」

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