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352.会話 遊園地に来た話その③・メリーゴーランド

本日もこんばんは。

二階建てのメリーゴーランドにちょいとばかしテンションが上がる天目兎々。

「妙に不満げな勇者さんとやって来た三つ目のアトラクションはこちらです!」

「派手」

「感想が短いですね。もう少し何かありませんか?」

「回っています」

「そうですね。というわけで、メリーゴーランドですよ、勇者さん!」

「なんとおぞましい光景でしょうか」

「何か勘違いしていそうなのでお訊きしても?」

「生きた馬を何かで固め、装飾品をつけて棒に固定しているのでしょう?」

「想像力」

「何年も何年も固定されたまま回し続けられ、その身が朽ちるまでこのまま……」

「さあ、ぼくたちの番が来ましたよ~」

「また強制的に乗せられた……。あれ、魔王さんは哀れな馬に乗らないんですか」

「ぼくはここからメリーゴーランドを楽しむ勇者さんの写真を撮ろうと思いまして」

「馬車を半分だけ切り取ったところで?」

「その感想には若干頷きたくなりますね」

「あ、動き始めた。……ん? 上下に動くんですね」

「楽しいですか~? あ、目線はこちらに~」

「へぇ……。そういう仕組みなんですね。オルゴールを思い出します」

「頭上を見て現実を見ないでください。今は夢の時間です」

「この馬たちの時給っていくらだと思います?」

「夢をぶち壊す質問ですね」

「同じことの繰り返しですが、姿勢を留めることは容易ではありません。装飾品もかなり重いでしょう。中には口を開いたままの馬もいます。喉カラカラ待ったナシですね」

「最近は暑いので水分補給は大切です。って、そうじゃなくて」

「馬か……。移動が速くなりそうですね」

「お馬さんを連れた旅人も多いですからね。荷物も運んでくれますし」

「非常食にもなる」

「深く頷きながら言わないでください」

「馬刺し……」

「メリーゴーランドのお馬さんを見ながら馬刺しのことを考える人は勇者さんだけです」

「そんなまさか。見てください、この筋肉」

「作り物ですからね?」

「立派ですねぇ。よーしよーし」

「撫でても懐きませんよ」

「固い音がしました。これが現実」

「夢を見る時間なのに現実ばかり直面する勇者さんですね」

「魔王さんがカメラを構える続ける限り、私は現実しか見られないのです」

「今こそぼくのドリームタイムです」

「夢と現実は紙一重ですね。あとでデータ消そう」

「なな、なんてことを言うのですか。絶対に死守しますよ」

「やれやれ。ところで魔王さん」

「なんですか勇者さん」

「ゆっくりではあるものの、こうして回り続けていると私は」

「私は?」

「三半規管に嫌な予感を抱き始めるものでして」

「ハッ⁉」

「メリーゴーランドの仕組みを解明しようと上を見上げたのも裏目に出ましたね」

「ハッッッ‼ ま、まさか勇者さん!」

「酔ったかもしれません。あはは」

「あまりに儚く脆い三半規管ですね⁉ 動いている途中ですが、固定されている座席に移動してください。ぼくがサポートするので転ぶ心配はありませんよ」

「上下回転から解放されても土台自体が動いているので諦めるしかない」

「メリーゴーランドの楽しげな音楽とは裏腹に深いため息が……」

「しかしまあ、ただ回っているだけなのに人間のこどもはずいぶん楽しそうですね」

「メリーゴーランドという施設がひとつの夢みたいなものですから」

「……もしかして、これも対象年齢が三歳だとか言います?」

「いやですねぇ。対象年齢が三歳だとしても、それ以外の人が楽しんではいけないというわけではありません。ほら、親御さんたちも楽しんでいますよ」

「あれは自分のこどもが楽しそうだからじゃないですかね。……ん?」

「どうしました? じっとぼくを見て」

「こどもが遊ぶ様子を微笑ましく見守る親……。時にはカメラで写真を撮り、時には手を振って応える。この構図どこかで……」

「そんなに見つめられるとドキッとしちゃいますよう!」

「ねえ、魔王さん」

「なんでしょう?」

「私のこと、三歳児だと思ってます?」

「さすがに思っていませんよ」

「ならいいのですが」

「三歳児のようにかわいいと思っていますよっ」

「似たようなもんじゃないですかこのやろう」

お読みいただきありがとうございました。

メリーゴーランドってたまに変な生き物もいますよね。


勇者「誰が三歳児ですか誰が」

魔王「かわいいって意味ですよう」

勇者「魔王さんの言葉は信用なりません」

魔王「本心なのに」

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