350.会話 遊園地に来た話その①・ジェットコースター
本日もこんばんは。
おふたりが遊園地に遊びに来たということで、全10回にわけて遊園地SSをお送りいたします。
お遊びSSなので魔族も魔物も赤目も黒髪も関係なしで突き進みます。それではお楽しみください。
「やって来ました、遊園地~! いえ~いぱちぱち~。楽しみましょう、勇者さん!」
「人が、人が多い……人が……人間がいっぱい……帰る……」
「帰らないでください。それに、人が少ない日を選んで来たんですよ。混んでいる時はこの十三倍くらいの人間が園内に散らばります」
「微妙な倍数なんなの……」
「せっかくの遊園地ですよ。楽しみましょうよう~。てことで、はい、どうぞ」
「なにこれ。邪魔……。なにこれ、なに?」
「かわいいパシャパシャですねぇパシャパシャお似合いパシャパシャですよ~」
「カメラを止めろ」
「それは遊園地に来たらつけなくてはいけない物です。いいですか。つけてください」
「うそだぁ。だって耳つきカチューシャつけてない人もいる――」
「つけてください。写真撮っていいですか? つけてください」
「こわいなぁ。……いいですよ。いいですよっていうか、魔王さんの圧がやばいので」
「わぁい! では、さっそくアトラクションに行きましょう~。まずはあれです!」
「あれって……ナニアレ」
「ジェットコースターです。機械がものすごいスピードで動くんですよ」
「頭上から悲鳴が聞こえるのですが」
「乗りましょう! 乗りましょう!」
「おわわわわ……。か、顔隠さないと……」
「身長は……だいじょうぶそうですね。よぉし、れっつご~」
「なにがなんだかわからない……。そもそも遊園地ってなに」
「楽しく遊ぶところですっ。ほら、出発のベルが鳴りましたよ!」
「がっつり固定されている……。むぅ……」
「動かしちゃだめです。外したら死にますよ」
「魔王さんがなんとかしてくれる……って、どんどん上にあがっていますね」
「そろそろですね。勇者さん、準備はいいですか?」
「なんの――っちょっと待ってちょっと待ってちょっと……うっっ」
「ひゃあああああ~風が気持ちいいですぅぅぅぅぅ~わぁぁぁぁぁい~」
「………………」
「なんつー顔してるんですかぁ」
「………………」
「勇者さん~? 終わりましたよ?」
「…………っぜぇ、はぁ、な、なんてことありませんでしたね。ふふっ、ふふふ」
「どこ向いているんですか?」
「もっと説明がほしかったです……うぐぐぐ……」
「地に足つけて生きていきたいと言いつつ、浮遊魔法を要求する勇者さんにぴったりだと思ったのですが、だめでしたかね?」
「これはなんか違う……。なんか違うと思うんですよ……」
「ほうきデートしていたじゃないですか」
「あんな高くまで飛んでいませんよ。上空をご覧ください」
「何十メートルくらいあるんでしょうねぇ。景色も良し、風良しで楽しかったです」
「景色見ている暇なんてない……」
「お顔が青いような気がしますが、ええと、帰ります……?」
「なに言ってんですか。元取ってからじゃないと帰りませんよ。……遊園地の元ってどうやれば取れるんですか?」
「たくさん遊べばいいんじゃないですかね? 気に入ると思ったのですが、ごめんなさい、配慮が足りませんでしたね……。首を斬ります」
「こんなところで斬るな。阿鼻叫喚ですよ。……はあ、遊園地おそろしい場所」
「本来は楽しい場所のはずなのですが」
「最初にジェットコースターを考えた人は一体どうしたのでしょう」
「刺激がほしかったと予想します」
「急降下、回転、急上昇、猛スピード、ひねり……。ハッ、わかりました」
「お聞かせください」
「紛れもなく体操選手です」
「紛れてないんですよ」
「習うより慣れよって言うじゃないですか」
「体に刻み込むレベルが強すぎると思います」
「あれを十回乗ったら新たな世界へ行ける気がしました」
「魂抜けてません?」
「今も回転しまくれそうな勢いで世界が回っています」
「たぶん眩暈ですね。座ってください」
「いくらでも魔物を倒せそうですよ。カモン魔物たちぶった斬ってあげましょう」
「今回、魔なるものはご都合主義で登場しません」
「なんの話でしたっけ?」
「遊園地で遊びましょうというお話です。あわよくば勇者さんコレクションを増や――」
「次のアトラクションに参りましょう。ジェットコースターはもういいです」
「園内マップの順番通りに回って行こうと思うのですが、どうでしょうか?」
「めんどうなのでお任せします」
「わかりました。マップナンバー二のアトラクションはおばけ屋敷です」
「ちょっと話し合いましょう」
お読みいただきありがとうございました。
命の危険を感じる暑さゆえ、外に出ることなく遊び気分を味わえるSSになれたらと思います。涼しい部屋で遊園地SSを読んでくださいね。
勇者「景色一ミリも見られませんでした」
魔王「ぼくもです」
勇者「あなたは平気そうだったじゃないですか」
魔王「ずっと勇者さんを見ていましたゆえ! えへん!」