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333.会話 魔法道具の話

本日もこんばんは。

定期的にこういう話をしないと『ジャンル:ファンタジー』を消さねばならなくなると思いました。

「魔法道具を使えば私も魔王になれると思うのです」

「静かにアイス食べていると思ったら突然どうしました? 魔王になりたいんですか?」

「自分の力ではなく、道具の力でふはははするんですよ」

「動詞みたいに使わないでください」

「以前、魔法使いには基礎魔法が存在すると聞きました。しかし、私にはない。これは不公平ですよね。ということで、魔法道具をください。これでも私も山火事を起こせます」

「起こさないでください。魔法道具って一般には流通しない代物なんですよ。その辺に売っているものではないので、すぐに『はいどうぞ』というわけにはいきません」

「どこに売っているんですか」

「魔法使いのコミュニティでしょうね。ぼくには必要ないので気にしたことありません」

「空を飛ぶのが苦手な魔法使いはこの世にいると思いますか」

「それはいると思いますよ。魔法の中にも得意不得意はありますからね」

「浮遊魔法を補助する魔法道具……あると思いますか」

「あると思いますよ。……なんですか、そのお顔は」

「魔法道具で固めた勇者、いかがですか」

「前にもいましたよ」

「ちっ……。二番煎じになってしまうじゃないですか」

「それはそれでいいと思いますけど」

「斬新さがないと飽きるでしょう、この会話みたいに」

「飽きたんですか⁉ あ、飽きたんですか⁉」

「二回も言わんでよろしい。いつもいつも似たような会話をして飽き――」

「飽きたんですか⁉」

「……はあ。魔法道具があれば日々の生活が便利になると思ったんです」

「山火事願望ではないんですね」

「二パーセントくらいはあります」

「あっちゃだめなんですけどね」

「そもそも、魔法道具ってどうやって作るんですか? 私にもできます?」

「ハッ、これは例のコーナーですか? ですよね?」

「いや、別にそういうわけじゃ――」

「それではやっていきましょう! 第五回『教えて! 勇者さん』。今日の議題は『魔法道具』です。いえ~いぱちぱち~やったね~わ~いそれではお伝えします」

「切り替えこわいな」

「魔法道具とは、なんの変哲もない道具に魔力をこめ、魔法陣を刻むことで、道具を使うものの魔力あるなしに関わらず魔法を使用できるという優れモノです。開けたりボタンを押したりすることが発動条件になるものと、持ち主の任意のタイミングで発動するものと、作成者が指定したタイミングで発動するものと、ある一定の条件下で発動す――」

「いろいろあるんですね」

「もう飽きたんですか!」

「魔法道具によって違うなら、いま覚えてもあんまり意味はないと思って」

「それはそうですけど。知っていて損はないと思いますよ?」

「誰か大量生産してくれないかなぁ。便利なやつ」

「魔法道具を作るのって大変なんですよ。魔力のこめ方ひとつとっても難しく、大量生産なんて夢のまた夢。魔法陣の発動条件を細かくすればするほど完成は困難で、作れたとしたら一点ものです。ぼくでもやりたくないですよ」

「ほしいのに」

「勇者さんのためなら作ります! と言いたいところですが、魔なるものの魔力と人間の魔力は少し異なりますからね。魔法道具には繊細な人間の魔力の方が向いているのです」

「繊細ってなんですか」

「ごちゃごちゃしているってことです」

「たぶん違う気がする」

「めんどくさいってことです」

「人間ってめんどくさいんですね。辞めたい」

「勇者さんもかなりめんどくさいタイプの人間ですが、きみの周りも負けていませんよ」

「魔王さんとかね」

「ぼくは人間じゃないです」

「じゃあ、魔なるものもめんどくさいってことですよ。魔法道具作ってください」

「誘導されていた……? どんな魔法道具がほしいんですか?」

「ぐーたらすればするほど威力が増す爆弾とか」

「なんのエネルギーを溜めるんですか」

「想像するだけですべてを思い通りに動かせるアホ毛とか」

「装着型なんですか」

「私にアホ毛がないのは魔法道具のアホ毛を装着するためなんですよ」

「そうなんですか?」

「んなわけあるかい」

「あ、理性があった」

「呼び鈴を鳴らすだけでご飯が出てくる魔法道具もほしいです」

「ぼくの話してます?」

「お会計の時に勝手に支払われる魔法道具も……魔王さんだ」

「魔法道具について興味がおありでしたら、魔法使いに訊くのがよいかもしれませんね。魔法使いの中には自分の固有魔法を道具に込めて使っている者もいますから」

「時短テクですね」

「他に、魔法をより鮮明に強力に簡単に明確に確実に発動するためのものでもあります」

「よくわからんです」

「例を出してみますね。ぼくは光魔法を使いますので、魔法陣を懐中電灯に刻みます」

「懐中電灯」

「この懐中電灯に魔法陣を刻めば、あとは魔力を込めれば複雑な魔法でもすぐに発動できるというわけです。便利でしょう~」

「さっき、魔力の有無にかかわらずって言いませんでした?」

「おっ、いいところに気がつきましたねぇ! さすが勇者さん!」

「その懐中電灯で目を潰してやろうか」

「褒めたのに……。魔力の有無は基礎魔法等にしか影響しないのです。固有魔法はあくまで固有。そのひとだけのものですから」

「私なら何がいいでしょうか」

「茨魔法ですからねぇ……。糸車?」

「持ち運びという言葉をご存知でしょうか」

「は、針はいかがでしょう! アッ、待ってください針は小さいくせに尖っていて危険なので勇者さんが常に持っているには非常に不安をそそられる物ですので却下」

「提案しながら却下するとは器用ですね。魔王さんのくせに」

「茨に似た何か……。茨に関係する何か……。ハッ!」

「思いつきました?」

「じょうろはどうでしょう!」

「灰になった魔王さんを地に撒き、花を咲かせるための養分にしろってことですね」

「ちが、違いますよう。植物を育てるために水やりは必要ですから……」

「新たな命の礎となれ」

「勇者さんはたまに見せるその圧で敵を倒せると思います」

「そう言いながらカメラを構えようとする魔王さんはいい度胸してますよ」

「生きがいですから」

「……魔法でカメラを奪おうと思いましたが、例のごとくすぐには使えない私です。はあ……、やっぱり剣の方がはやいですね」

「長く使っているものや思い入れのあるもの、大切なものでも適応できますよ」

「では、この剣に私の魔法陣を刻めば……?」

「勇者さんだけの魔法道具の完成ですね」

「キタコレじゃないですか。ついに私もめんどうな準備とおさらばできるのですね」

「ですが、勇者さんの素質ではそもそも魔法道具を作れないでしょうね」

「……………………。ぽいっ」

「剣を捨てない」

お読みいただきありがとうございました。

つまり魔法道具とは「なんかめっちゃ便利かも」ということです。


魔王「カメラに魔法陣を刻めば怪しまれずに写真が撮れる……?」

勇者「悪知恵は働くんですね」

魔王「千年に一度あるかないかのひらめきです」

勇者「千年前のひらめきが気になってきました」

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