324.会話 牧場の話
本日もこんばんは。
牧場のソフトクリームっておいしいですよね。
「今日は牧場にやってきました。のんびりしてくつろぐとしましょう」
「魔王さん、あそこに牛がいますよ」
「牧場ですからね。牛舎にはもっとたくさんいるはずです」
「なんてことでしょう。なんてことでしょう。なんてこったい」
「やけに驚いていらっしゃいますね。どうしました?」
「牧場に住めば牛乳飲み放題ってことですか?」
「違いますね」
「牛肉食べ放――」
「違いますから剣をしまってください」
「じゃあなんなら食べていいんですか」
「向こうでソフトクリームが売られていますよ」
「食べます」
「搾りたての牛乳で作ったミルクソフトです。牧場ならではですね」
「ねえ、魔王さん」
「なんですか?」
「あのレストランの前に立っているのぼり」
「おすすめメニューが書かれていますね」
「『新鮮肉厚! 牛肉ステーキ』」
「ど、どこから仕入れているのでしょうね」
「『生きている彼らに出会いたい人はお近くの牛舎まで!』」
「人の心あります?」
「とは書いていませんけど」
「びっくりしたぁ……」
「牧場には他になんの肉がいるんですか?」
「チョイスする単語を間違えていますよ」
「おっと。牧場には他になんの動物がいるんですか?」
「牛、馬、ひつじ、豚、鶏、ライオン、カピバラ、キリン、ヤギ、うさぎなどです」
「うさぎもいるんですか」
「牧場によりますけどね。ここにはいるそうですよ。行きますか?」
「ソフトクリーム食べてから行きます」
「もちろんです。それではお店に――って、ツッコんでいただいてもいいですか?」
「どこにですか。ソフトクリームが冗談だったら怒りますよ」
「怒る勇者さんはレアなので見たいですが、そこではありません。ライオンとかキリンは牧場にいません」
「そうなんですか? ちょっと見たかった……」
「ッッッ‼ すっ、すすすすすみませんぼくとしたことがっ!」
「どうでもいいですけど」
「いつも通りですねぇ……。では、お詫びにソフトクリーム十個」
「食べていいんですか?」
「はお腹を壊すので二つまでです」
「むっ。私はそんなにやわじゃありません」
「かき氷でお腹壊したのはどこの誰でしたっけ」
「魔王さんですね」
「きみです」
「見てください、魔王さん」
「よく聞いてください。冷たいものの食べ過ぎは体調に影響するので――」
「ソフトクリーム二つ買ってきました」
「そもそもきみは体調を崩しやすいところがある――」
「頭に乗せたら白うさぎの耳みたいですよ」
「ぼくの話聞いてます⁉ あとそんなかわいいことするなら事前に言ってくださいカメラの用意ができていないじゃないですか写真撮ってもいいですかお願いします‼」
「もぐもぐ」
「ああぁぁああぁぁぁ食べてしまわれた……」
「おいしいです」
「それはなによりですぅ……」
「牛に会いに行きましょう」
「うさぎさんではなく?」
「まずはソフトクリームのお礼を」
「おや、すてきですね」
「ステーキ食べた後だと行きにくいと思って」
「そ、そうですね」
「どういう気持ちで会えばいいかわからなくなります」
「目線を合わせられませんね」
「そういえば、魔王さんはソフトクリーム食べないんですか?」
「ぼくはお腹いっぱいですので。えへへへへ」
「怪しい……。まあいいや。穏やかなところですね、牧場」
「また来ましょう。きみが望むならぼくはいつでも連れてきますよ」
「次はライオンがいる牧場に」
「牛たちが脱兎のごとく逃げ出すさまが思い浮かびます」
「身が引き締まりそうですね」
お読みいただきありがとうございました。
牧場で飼われているうさぎさんもかわいいですよ。
勇者「なんで牧場にはライオンがいないんですか?」
魔王「基本的にここは牛やひつじ、ヤギといった動物を飼育する場ですからね。一緒にすると食べられちゃうでしょう?」
勇者「なるほど。ならば柵をつければいいんですよ」
魔王「それは動物園ですね」