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322.会話 聖書の話

本日もこんばんは。

ファンタジーワールドでは定番の聖書の話です。

「この世界、道端に本が落ちているのが常識だったりします?」

「ぼくの知らない世界ではそうかもしれませんね。また落とし物でしょうか」

「なんの本でしょうか。もう読めますよ。えーっと……あっ」

「これは読まなくていいです。捨てていいです。捨てなさい」

「落とし物かもしれないのに?」

「捨てるべき本もあります」

「なになに……聖書?」

「こらっ! 読んじゃだめですってば!」

「読むとまずいことが?」

「あの神様が聖女を通じて書かせた書物なんぞ読むもんじゃありません」

「私情が爆発しているようですが、それに関しては私も同感です」

「今日の焚き火に使いましょう」

「聖書は燃やしても燃えない性質があったり」

「するんですか⁉」

「するんですかって訊こうとしたんです」

「ぼくが知る限りはないと思いますけど……。おおおう、考えたら一気に寒気が」

「聖書には聖水みたいな力が」

「あるんですか⁉」

「あるんですかって訊こうとしたんですよ。先に言うなって」

「ないと思いたいですが、腐っても聖性を掲げていますからね。ぼくたち魔なるものには効果ありですよ。雑魚程度なら弾けますので、お守りとして持っている人間は多いです」

「ふうん。ただの本なんですけどね」

「勇者さんにとっても聖書は」

「弾け飛ぶ効果があるんですか?」

「そんな効果はありませんけど……。神に選ばれし人間であるきみも、聖書の力を引き出せる存在だということです。所持しているだけで簡易防御にもなりますよ」

「へー……。別にいいかな」

「おや、よろしいのですか? 動かずとも防御できますよ?」

「だって本って結構重いですし」

「それはそうですね」

「焚き火の方が好きですし」

「寝落ち待ったナシですね」

「聖書は食べられない」

「聖書を食べようとする人は初めてだと思います」

「あっさり塩味っぽくないですか?」

「すみませんその感性はちょっとよくわかりません」

「揚げたらおいしそうではあるんですよ」

「ないと思いますけど……」

「でも、『別に本を食べなくてもよくね?』と思ってやめるんです」

「理性が残っていてよかったです」

「ということで、この聖書は焚き火にくべようと思います。夜まで持っていてください」

「ぼくがですか。構いませんが、はやく粉々にしたくて仕方ありません」

「魔王さんにはどのような効果があるのでしょう」

「ただ腹立つだけです」

「声に出して読むと攻撃力五パーセントアップ」

「したらいいですけど、しませんよね」

「魔王さんにはこんにゃくの方が効きますもんね」

「それはほんとにそう。確かに聖書には微量なりとも聖なる力がありますが、所詮は書物。しかも世界中に流布しています。つまり、たいして強いものじゃありません」

「こんにゃくもいたるところで売られていますけど」

「買い物には心を整え深呼吸をし座禅を組み脳を空っぽにしてから行っています」

「そんなことしてないでしょうに。あ、魔王さん、この文字なんて読むんですか?」

「ええと、これはですね――イダッ! ビリっときましたぁ……」

「なるほど、そのくらいの効果はあるんですね」

「ひどいですぅ……。ぼくの純粋な優しさを攻撃するとはおのれ神様」

「神様って魔王さんの敵なんですか?」

「今それ訊きます? え、今さらですね? ほんとに?」

「神様なら魔王さんを倒せそうですけどね」

「……まあ、いろいろありますから。ところで勇者さん」

「どうしました?」

「ぼくに聖書を掲げて押し当てて潰そうとしないでください」

「焚き火にくべられる前の最後の抵抗です」

「聖書と名乗るなら聖なる存在の一員である勇者さんを温められる火になれることに喜びなさいよ‼ ぼくだってくっついて勇者さんをぽっかぽかにぬくぬくにした――」

「変化魔法って火にもなれるんですか」

「できますけど、性質まで変化するわけではありませんから」

「性質……。ふむ、では本の姿になってみてください」

「なにを企んでいるのですか」

「聖書VS魔書」

「絶っっっっ対にぼくが勝ってやる!」

お読みいただきありがとうございました。

この世界では、ただの聖書なら教会に行けばもらえます。


勇者「どういう内容が書かれているんですか?」

魔王「おもしろいもんじゃありませんよ」

勇者「読んだことあるんですか?」

魔王「ひまつぶしに」

勇者「魔王がひまつぶしに聖書を……変な世界」

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