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321.会話 猫じゃらしの話

本日もこんばんは。

我が家のうさぎさんに猫じゃらしを買ったのですがガチモードで警戒されて逃げられました。

「…………なんですか」

「え、いや、あの、そのぉ~……、勇者さん、道端の草とか雑草とか毒草とか食べるので、これも気に入るかなぁと思いまして~……」

「申し訳なさそうな顔をしながら草を振るのはやめてください」

「遊びたくなりませんか?」

「私のことをなんだと思っているのです」

「勇者さんですが、時折猫ちゃんだと思っています」

「人間を辞めているつもりはないのですが」

「こちら、エノコログサと言いまして、簡単に言うと猫ちゃんと遊ぶ草です」

「私は人間のつもりです」

「猫ちゃんになってもいいのですよ?」

「猫に謝ってください」

「そんなこと言わないでくださいよう~。ほらほらほらほら」

「やめろ近づけるなうわもふもふなんだこれ」

「エノコログサを振ると猫ちゃんがじゃれつくんですよ。いかがですか?」

「私は人間だと何度も」

「あそこに猫ちゃんが」

「……ちょっと貸してください」

「はいはい、どうぞです」

「……エノコ……なんとかをこうして、そぉい」

「恐る恐るやってみる割には動きが猛者っぽいですね」

「ネズミの動き方を再現しています」

「ガチじゃないですか」

「お……おぉ……! 猫が寄ってきました。すごいです、ハンターの目をしていますよ」

「あっちもガチですね」

「あ、エノコさんが狩られた」

「誰ですか」

「一瞬の猫パンチでしたね。間近で見られて満足です」

「本来はもっとかわいらしく遊ぶもののはずですが……、まあいいでしょう」

「エノコさんはガチ猫パンチを見たい時に役立つと学びました」

「いろいろ違いますが、まあいいでしょう」

「魔王さんのガチ魔王パンチを見たい時も使えますか?」

「ぼくはパンチしません」

「猫になったつもりで」

「ぼくに人間を辞めろとおっしゃいますか」

「最初から人間じゃない……」

「あ、もしかして猫魔王の再来を望んでおられますか? まったく勇者さんたら、初めからそう言ってくださればいい――」

「それは結構です」

「しょも……。定期的に変化しないとやり方を忘れるんですよう」

「魔王さんの記憶力のせいです。そぉれそぉれ」

「エノコログサをぼくにすり寄せて何を……うわわわふわふわもふもふぞわぞわわわ」

「記憶を呼び起こす儀式を」

「また知らんものを創り出している……」

「いかがでしょう。パンチを繰り出したくなってきましたか?」

「ぼくが猫だった時の記憶が鮮明に……! ネズミ、ネズミを狩らねば!」

「ネズミってあんまり食べる肉がなさそうですよね」

「ぼくが猫だった時の記憶にツッコんでいただいてもよろしいですか?」

「私が知らないだけでそういうこともあるのかなって」

「ありません。ぼくはいつでもどこでもここでもそこでも魔王です」

「私が振っているエノコさんを狙っているくせに」

「勇者さんがぼくと遊んでくださっているのかと思いまして」

「この遊び方でいいんですかね」

「ぼくは勇者さんが望むなら猫にでもネズミにでもなりますよ」

「もうちょっとプライドをだな」

「ぜひ、ぼくを猫ちゃんだと思って猫じゃらしを振りまくってください」

「飽きました」

「なんと⁉ このままでは勇者さんとじゃれつく計画が失敗――っとっとーいあはは」

「まあ、そんなとこだろうと思いました」

「え、えへへ、あははは~……あっ、猫じゃらし返されちゃいました」

「草で私の気を引こうなど百年早いんですよ」

「百年待ったら勇者さんが死んじゃうじゃないですか」

「……まじの目だ」

「ぼくにとって年月はどうでもいいですが、勇者さんとの日々は一秒たりとも捨てられません。一瞬だって切り取ればすてきな写真になります。ふっふっふ……!」

「プライドを捨てながら生きるその姿勢はいいと思います」

「猫じゃらしもいいですが勇者さんを見ながら勇者さんの写真を眺めるのも……アッ!」

「風で飛んでいきましたね」

「待ってくださいそれだけはだめですぼくの宝物がぁぁぁぁぁぁぁ!」

「魔王さんにとっての猫じゃらしは写真ですか。……やれやれ」

お読みいただきありがとうございました。

ガチモードの魔王さんによって写真は無事帰ってきました。


勇者「ほーれほーれ」

魔王「ぼくの写真を猫じゃらしのように!」

勇者「あ、向こうにもう一枚」

魔王「どこですかどこですか⁉ 写真ー!」

勇者「これまじでやってんですかねぇ」

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