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317.会話 ドッペルゲンガーの話

本日もこんばんは。

日本に住んでいる人のドッペルゲンガーが外国に出現したとしたらパスポートってどうしたのでしょうか。職員に止められるドッペルゲンガーさん、見てみたいです。そんなお話(違います)。

「勇者さん、ドッペルゲンガーというものをご存知ですか?」

「びっくりハンガー?」

「熱で変形したゴミ箱直行のハンガーのことですね――って、そうじゃなくて、ドッペルゲンガーです。自分自身、もしくは自分にそっくりな人のことでして、ドッペルゲンガーに会うと死んでしまうという都市伝説があるんですよ。こわいですね!」

「つまり、魔王さんのドッペルゲンガーと魔王さんを会わせると……大爆発と」

「火薬でも詰められていたんですかね」

「ドッペルゲンガーってただのそっくりさんじゃないんですか?」

「そういう説もあるみたいですが、忽然と姿を消す性質や本人と関係のある場所に出現することから、魂が抜け出たものと考えられているそうですよ」

「ふうん。あんまり興味はないですね」

「勇者さんのドッペルゲンガーに会えたら……と考えることがあるのです」

「会ったら死ぬんじゃないんですか」

「おかわいい勇者さんがふたり……。両手に勇者さん……」

「両手に私の死体?」

「縁起でもないことを言わないでくださいよう」

「会うと死ぬって言うから」

「ドッペルゲンガーと仲良くなれば死を回避できます」

「都市伝説にも抜け道があるんですね」

「ぼくがいま考えました」

「そうですか。魔王さんのドッペルゲンガーを探してきます」

「まあまあまあまあまあまあまあ、待ってください」

「長い。やかましい」

「ぼくは分身が作れますから、ドッペルゲンガーみたいなものですよ」

「分身体には会っても死にませんよ」

「都市伝説には抜け道があるものでして」

「自分にそっくりなドッペルゲンガーですか。私の代わりにやらないといけないことを全部やってほしいです」

「たとえば?」

「勇者の使命とか」

「やらないといけないのにやっていないじゃないですか」

「やか、やかましいですね。やる時だってありますよ」

「ちょっと焦りましたね」

「お風呂に行くのがめんどくさい時に、代わりに入ってほしいです」

「本体とドッペルゲンガーは体共有式なんですかね」

「歩くのとか」

「ただ怠惰なだけじゃないですか」

「生命活動に関することを頼みたい……」

「ドッペルゲンガーも『それはちょっと自分でやってよ』と思うでしょうね」

「いや、私のドッペルゲンガーなら『わかる。めんどいよね』と言ってくれるはずです」

「そしたらドッペルゲンガーもめんどくさがってやらないんじゃないですか?」

「ハッ、盲点」

「性格が違うドッペルゲンガーならいいんですけどね」

「それは私に似た別人ってことですよ。魔王さんは黒髪と赤目なら誰でもいいんですか」

「そんなことはありません! 勇者さんであることが最も重要であり、勇者さんが黒髪と赤目だったからその色も好きになったというだけで――って、なんか怒ってます?」

「怒ってません。そもそも、私が何に怒るというのですか」

「あ、いえ、なんだか不満そうな気配を感じたもので」

「気のせいです」

「そうですか? ふーん……。あ、でもでも、通りすがりにきれいな黒髪の人を見つけるとつい目で追ってしまうことはありますねぇ」

「そうですか」

「はい。……。やっぱり怒ってますよね?」

「怒ってないです。私に怒りの感情はありません」

「それもどうかと思います」

「怒るとエネルギーを使うじゃないですか。めんどくさいです」

「感情は豊かに持った方がいいですよ。お怒り勇者さんもコレクションしたいですし!」

「…………」

「なにゆえゴミ箱を開けたのですか」

「魔王さんのドッペルゲンガーいないかなって」

「ぼくのドッペルゲンガー、ゴミ箱に住んでいる設定なんですか。というか、やっぱり怒ってますよね。だからぼくのドッペルゲンガー探しているんですよね?」

「違います。うるさいです。やかましいです。ドッペルゲンガー連れてきてください」

「めちゃくちゃ!」

「…………」

「ねえねえ勇者さん。勇者さんの不満そうなお顔を見るためにああ言いましたが、本当はそんなことしていませんよ。いつもきみを見るので忙しいですから」

「……。甘いもの持ってます?」

「もちろんです。はい、チョコレートどうぞ。お腹すいたんですか?」

「いえ。エネルギーを使ったので」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんはいつエネルギーを使ったのでしょうか。


勇者「私のドッペルゲンガーを百人くらい連れて魔王討伐に行きたいです」

魔王「全員サボると思いますよ」

勇者「私もそう思いました」

魔王「何人いてもひとりと変わりませんね」

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