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311.会話 ブランコの話

本日もこんばんは。

ブランコの持ち手部分の鎖で手をケガしたのは今となってもよくない思い出です。

「ブランコに乗りながら、穏やかな時間を過ごすふたりの少女……。まるで小説漫画映画のワンシーンだと思いませんか? 思いますよね? 思ってくれたらうれしいです!」

「思いません」

「しょも……。こんなに雰囲気があるのに……。ところで勇者さん、なにゆえ止まったままなのですか? もしや、ブランコお嫌いでした?」

「えっ、動かすんですか、これ」

「えっ、そ、そうですよ。ぼくは止まったままの方がカメラを構えられるからそうしていますけど、ブランコは本来、漕いで遊ぶものです。見ててくださいね。そぉい~」

「ほおー、なるほど。で?」

「で?」

「そうやって、何になるんです? その次は?」

「勇者さん、ブランコって知ってます?」

「知らないです。魔王さんに引っ張られて乗せられて今に至るゆえ」

「ああ……。ええと、遊具のひとつなんです。漕ぐ楽しさ、風を感じる楽しさを感じられるものですよ。どのくらい高く漕げるか勝負したり、靴飛ばしをしたり」

「ふうん。漕いで……ね。こんな感じでしょうか。ん? 合ってる?」

「前に出る時に足を前方に振って、うしろに下がる時に後方に……説明が難しいですね」

「地面を蹴った方がはやいです」

「よければ、ぼくがうしろから押しますよ。そういうやり方もあるのです。うまく漕げない人や小さなお子さん、青春したい人には超おすすめなのです」

「最後の何」

「ということで、触れる許可をいただきたく」

「……いいですよ」

「ありがとうございます。それでは、いきますよ~。そぉれ~」

「おお、これがブランコ。あ、風がいい感じですね」

「しっかり鎖を握っていてくださいね。離すと危ないですよ」

「勢いそのままうしろを振り返ったら魔王さんを蹴り飛ばしそうです」

「危険行為です。いろんな意味で」

「……ふふっ、ブランコを漕いでいるだけなのにおもしろいですね」

「楽しいですか? えへへ、引っ張ってきた甲斐がありました~」

「靴飛ばしやりましょう。遠くに飛ばした方がブランコから突き落とされるんですよね」

「知らない靴飛ばしですね。遠くまで飛ばしたら『やったぁ』でいいんですよ」

「えー。せめて腕一本くらい賭けましょうよ」

「腕は二本しかないんですよねぇ。靴飛ばしはそんな物騒な遊びではありません」

「私が勝ったら今日の夕飯はすき焼きです」

「ふふ、はい、わかりました。ぜひ勝ってくださいね」

「魔王さんも手を抜いたら許しませんよ。いざ、勝負。とうっ」

「全力で靴を飛ばします。えーいっ!」

「…………」

「おっ、結構飛びましたよ~。ぼく的最高記録です。勇者さんの靴はどこに……おや?」

「……靴、脱ぎ忘れました」

「……んっふふふ、なんてことでしょ、んふふ……かっっわいいですねぇふふふふ」

「こっち見ないでください」

「ごめんなさい、赤くなっている勇者さんが最高にかわいくて目を逸らせません」

「だって靴……履いたままブランコ漕ぐじゃないですか……」

「ふふふ、そうですねぇ。下、地面ですもんね。履いていないと汚れちゃいますからね」

「……笑いながらフォローしないでください。……むぅ」

「ごっ、めんなさ……ふふっ。はぁ~、えっと、靴飛ばし勝負ですが、勇者さんは靴を飛ばしていないので勝敗はなしということで、どうでしょうか?」

「いいですけど……夕飯がかかっていたのに……」

「では、こうしましょう。もう一度靴飛ばしをして、靴が上向きに落ちたら勝ち」

「そういう判定方法もあるんですか?」

「おまじないのひとつなんですけど、今回はそれ置いておいて。ぼくか勇者さん、どちらか一方でも上向きに落とせたら勝ちです。夕飯はすき焼きですよ」

「任せてください。それならできます。たぶん。それっ」

「ぼくも行きます。どんなもんじゃ~」

「……変な掛け声ですね。さて、結果は……あっ」

「おお! 勇者さんの靴が上向きですよ。やりましたね。すき焼きゲットですよ~」

「魔王さんの靴はどこですか? 見当たらないのですが」

「ぼくですか? 飛ばし過ぎてブランコに引っかかりました。ほら、上」

「そんなことある? でも、ある意味で上向きですよね」

「では、ぼくも成功ということで。やったぁ」

「ブランコにはいろんな遊び方があるんですね。座るだけでもいいですし」

「こうしてふたりだけでいると、なんだか普段言えないことも言えそうですよね」

「普段言えないこと?」

「本音で語り合うってことですよ」

「そんなに隠していることありませんけど。……いや、ありますね」

「ぜひさらけ出してみてくださいな」

「ブランコで酔ったみたいです。吐きそう~。あははー」

「すぐ降りてください。楽しそうに漕がない! ストップ! 勇者さんストップ!」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは三半規管が弱いかもしれない。


勇者「おまじないというのはなんですか?」

魔王「靴が上を向いていたら明日は晴れる……などなど。今度やってみましょうか」

勇者「靴で天候がわかったら苦労しません」

魔王「例のごとく気持ちが大事ってやつですよ」

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