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309.会話 本屋の話

本日もこんばんは。

本屋さんは眺めるだけでも楽しいと思います。行くまでがめんどくさいです。

「勇者さんが本を読めるようになったので、読書を新しい趣味にしていただきたく、本屋にやって参りました。どうですか? 読みたいものがあれば何冊でも買いますよ」

「図書館とは違うんですか」

「ここでは本を買うことができるのです。背表紙、表紙、装丁、題名、絵など、内容以外でも気に入ったものがあれば手に取ってみてください。本との出会いはすばらしいものです。きっと勇者さんの心を豊かにしてくれますよ」

「あ、かぐやさん。ほんとうに売っているんですね。ちょっとびっくり」

「売れっ子なので特設コーナーが作られていますね。『勇者っぽくない勇者様が紡ぐかつてない勇者の物語』もかなり売れているみたいです。ほら、八百万部突破ですって!」

「よくわかりませんけど……。よかったですね?」

「シリーズ化を求める声がたくさん寄せられているようです。みんな、勇者さんの物語が大好きなんですね! ぼくもうれしいですはっぴー」

「シリーズ化って……。また取材に来るんですか、あのひと」

「あ、どこへ?」

「一冊くらいは買おうかな……と思いまして」

「いいですねいいですね。気になるジャンルはありますか? ファンタジーやサイエンスフィクション、恋愛ものやコメディ、ミステリーなどなど」

「楽しいやつ……とか」

「でしたらコメディですかね。物語も良い意味で軽く、くすっと笑いながら読めるかと」

「コメディコメディ……。うわ、いっぱいありますね。どれがいいんだか……」

「『千里の道も靴を履いて』はいかがでしょう。世界を救う大役を任された主人公が仲間を集めながら進む物語なのですが、主人公が小さなことに気を遣いすぎて仲間たちからツッコまれまくるという話です。『一歩踏み出す前に靴を履かないと』が決めセリフです」

「……なんともいえない。あと、それの作者って」

「かぐやさんです」

「やっぱり。なんだかタイトルに同じ匂いを感じましたよ」

「こちらはどうでしょう。『時葉金也』です。時葉家に生まれた金也という人物が持ち前の人の良さと運で問題を解決する笑いあり涙ありのコメディ作品ですよ」

「作者……」

「かぐやさんです」

「……うん。たくさん書いているんですね。すごいです」

「ぼくが好きなのは『火のない所で煙を起こせ!』です。これ、すっごくおもしろいんですよ! 規格外の頭脳と性格を持った主人公が強大な組織と立ち向かう物語です」

「強大な組織って、もう火事が起きているようなもんじゃないですか」

「それすら炎上させるのが主人公です」

「こわぁ……。なにしでかしてるんだろう。こわぁ……」

「テキトーに選んでもだいじょうぶですよ。彼女、とても悲しい物語は好みませんから」

「……そうですか。そうですね。あのひとのことですから」

「ぼくはこれを買います。『ミイラ取りがミイラになった⁉~全人類ミイラ化まで残り三日になりました~』の新刊です」

「ミイラのゲシュタルト崩壊」

「突如として世界に現れた『包帯ぐるぐる帝国』。国を治める坂東は全人類をミイラにするために包隊を率いて人々を襲いだす。友達や家族がミイラにされていく中、主人公は新たに出会う仲間たちとともに包帯を、そして坂東の心を解くために立ち上がる……」

「ちょっとすみません。ばん、坂東?」

「悪の親玉ですよ。過去の出来事が彼を包帯のようにぐるぐる巻き、おそろしい計画を実行させるに至ったらしいのですが、詳しいことはまだわかっていません。ちなみに、こちらが彼の過去が明かされる第三十八巻になります」

「結構長いな。むしろそこまで明かさずによく続いていますね」

「ミイラ化を解く魔法が発見されて、過去に失った仲間を取り戻す展開が熱くて人気が高いのです。ぼくもテンションあがりましたよ」

「ミイラになっても戻れるんですね」

「包帯ぐるぐる帝国のミイラは単に包帯ぐるぐるされるだけですから」

「坂東優しい」

「巻いた包帯を操作して操るという算段です。包隊、結構強いですよ」

「うん……。そうですか。私は別のにします」

「本屋さんにはかぐやさん以外の本もたくさんありますから、お好きなものを」

「ありすぎてわからないので、テキトーに……これっ」

「なになに、『木を見て森を見て君を見て』ですか」

「タイトルからは内容がわかりませんね。作者は……まじか」

「安定のかぐやさんですね」

「何冊書いてるんですか、あのひと……!」

「これはぼくも読んだことないですね。買いますか?」

「絶妙な疲労を感じるのでこれにします……」

「読んでみたらとっても好きな本になることもありますよ。本屋さんでの出会いは一期一会。たまたま手に取ったことも何かの縁かもしれませんね」

「手に取る本がぜんぶかぐやさん……。こわぁ……なんでぇ……」

「勇者さん、気づいていましたか?」

「なににですか」

「ここ、タ行の作者の場所です」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんはなんだかんだで楽しく読むのだと思います。


勇者「ミイラのやつ、ちょっと気になってきた……悔しい……」

魔王「いつでもお貸ししますよ」

勇者「坂東の過去が気になったのが本気で悔しいです」

魔王「別に悔しがらなくても……」

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