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308.会話 お酒の話

本日もこんばんは。

お酒のシチュエーションにもロマンがいっぱいですが現実もいっぱいです。

「うへへ~勇者さぁ~んうへへ~」

「うわ、なんですか、うわ」

「めっちゃ嫌そうなお顔ですね。ぼく、いま酔っぱらっているんですよ~」

「酔っぱらい……? あ、お酒、ですか」

「勇者さんも一緒にどうですか~? アルコール度数が低いものもありますよ~」

「……結構です。未成年ですし。たぶん」

「国や地域によって飲酒可能年齢は違いますよ」

「でも、いりません。そんな体たらくになりたくないですし」

「勇者さんの場合はお酒飲んでいない時の方がこの体たらくですよ」

「失礼ですね。全力でだらけているだけです」

「勇者さんは泣き上戸か笑い上戸かはたまたなんでしょう~。気になるんですよう」

「魔王さんはうざ絡みに拍車がかかりますね」

「勇者さんとくっつきたいがために飲んでいます」

「それはいつも」

「酔っぱらいのぼくはどうですか~? かわいいですか?」

「寄るな。あっち行け。見るな」

「辛辣」

「お酒片手に近づかないでください。私はお酒飲めません」

「飲んだことあるんですか?」

「……。うるさいです」

「純粋な暴言。ですが、酔っぱらいには効きませんよ~」

「どのくらい飲んだんですか」

「とりあえず瓶を四本ほど」

「とりあえず……? 私が知らないだけでそのくらい飲むものなんですか」

「ひとによると思いますよ。ぼくは酔わないのでいくらでも飲めっ――ととと」

「酔わない?」

「やだぁ、酔っぱらいのたわごとですよう。……お顔がこわいですよ?」

「酔わないって言いましたよね?」

「うぐっ……。い、言いましたかねぇ……?」

「酔っぱらったふりでくっつこうとしたんですか。なるほどなるほど」

「た、大剣を持たないでください。いま! いま酔いが醒めました!」

「私のおかげですね。感謝してもいいんですよ」

「アリガトゴザイマ……剣先が頬に……。お酒はおいしくて楽しいらしいですよ?」

「誰かが楽しく飲んでいるのを見ればいいです」

「ワインを傾ける勇者さんとか、最高にすてきだと思うのですが!」

「ワイン……。結構です」

「わ、わかりました剣先どけて……。勇者さんはお酒が苦手ということで、わかりました。ぼくは酔っぱらいのふりをしますので、ぜひあしらってください」

「話の流れが理解できなかったのですが、お酒飲んでいないからでしょうか」

「酔っぱらいの言うことなんか信用しちゃだめですよ」

「つまり、魔王さんの言うことすべてですね」

「つまらないです。酔っぱらいの、です」

「常時酔っぱらいみたいなものでしょう、あなた」

「そんな。心の奥底から本音しかしゃべっていないぼくを酔っぱらいと言うだなんて」

「根底にお酒が流れているのでしょうね」

「血潮みたいに言われても」

「お酒を飲ませて酔わせて眠らせ、その間に倒すという物語があるそうですね」

「突然なにかと思ったら、ぼくにお酒を手渡してなにをするおつもりですか……って、いまおっしゃいましたね。倒すんですね。いやです。ぼく、酔いませんし」

「酔っていると思えば酔っているのです。簡単なことですよ。いつもやっているでしょ」

「いつもはシラフです!」

「お酒ってアルコールが入っているんですよね?」

「そうですよ。それがどうか――って、マッチ……。まさか勇者さん」

「燃えるんですか?」

「燃えますよ。危ないですからやめてくださいね」

「お酒を浴びるように飲みたいと言っている人を見たことがあるのですが」

「たくさん飲みたいってことですよ」

「お酒を浴びてドキドキ着火チャレンジじゃないんですか」

「ドキドキじゃなくてメラメラします」

「…………じっ」

「なにゆえぼくを見ているのですか」

「お酒はアルコール……。飲んだらお腹に入る……」

「なんだかものすごく危険なことを考えていませんか?」

「魔王さん、魔王さん。マッチ、飲んでみませんか?」

「勇者さん、勇者さん。マッチは飲み物じゃないんですよ?」

「やってみないとわかりません」

「わかります。はあ……、勇者さんの話は酔っぱらいの人よりカオスですよ」

「お酒の力もそれまでってことですね」

「きみのカオス具合が強すぎるだけです」

「本来は魔王もそのはずなんですけどねぇ」

お読みいただきありがとうございました。

魔王さんはお酒に酔いません。


勇者「酔っぱらったふりをして楽しいですか?」

魔王「勇者さんの冷たい目をいつもより軽やかに対応できる気がします」

勇者「さみしいひと」

魔王「一言の攻撃がえげつない……」

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