302.会話 魔法陣の話
本日もこんばんは。
ファンタジー作品であることを以下略。
「第三回『教えて! 勇者さん』のコーナーはじまりはじまり~。いえ~いぱちぱち」
「飽きました」
「だめです。大切な話です。きみは勇者なのに知らないことが多いですからね。ぼくがしっかりと教えて差し上げます。心して聞いてください」
「頭して聞きます」
「こほん、第三回の議題は魔法陣についてです。魔法陣とは何か、はい勇者さん!」
「あー………、えっと、なんかあれ、魔法を使う時のあれです」
「まあ、よし!」
「よくないです。指摘するとこですよ、ここ」
「魔法陣とは魔法の構築式です。魔力によって形成され、魔法を発動するための道具と考えてよいでしょう。簡単な魔法ならば魔法陣なしでも使えますが、強力になればなるほど魔法陣の必要性は増します」
「魔法陣を見るとファンタジーって感じがして割と好きです」
「そのとーり」
「どのとーり?」
「魔法陣は魔法を象徴するものです。とはいえ、魔法陣なしでばんばん魔法使った方が速くて強いのでは? と思うひともいるかと」
「私みたいな人がね」
「魔法陣を使用するメリットはしっかりあります。まず、魔力の安定です。次に魔法の安定。そして、魔法の発動を操作できること」
「好きな時に発動できるってことですか」
「はい。ですから、事前に張っておいて罠として使ったり、何十年後に自動発動するように設定できたり、その応用は多岐にわたります。かなり便利ですよ」
「何十年後まで残っているものなんですか」
「それは魔法や魔力量にもよりますが、理論上は可能です」
「魔王さんも百年後に発動する、世界を壊滅させる魔法を張っているということですね」
「ですね、じゃありません。そんな魔法は張っていませんよ。……可能ですけど」
「魔法陣、めちゃくちゃ便利じゃないですか」
「もちろん、デメリットもありますよ。とっても強い魔法の準備中に魔法陣を壊されたらこめた魔力ごと消滅しますし、発動中の魔法陣を壊したら中断させることもできます」
「でもそれも?」
「魔法や魔力量によります!」
「結局、力こそパワーなんですよ。やれやれ」
「勇者さんがどんどん怠惰な格好になっていく……」
「だって、どんなに対策しても相手の魔法、魔力量、素質によっては水の泡になるってことでしょう? 考えるだけ無駄じゃないですか。やる気出ない……」
「とはいえ、魔法は絶対ではありません。完璧に見える魔法にも必ず穴はあります。ですから、決して諦めてはいけませんよ」
「魔王さんにぜんぶやってもらいます」
「ぼくがいない場合はどうするんですか」
「いない場合が思いつかないので」
「えっ、それはつまり、えへへへへ、ですが用心は必要ですよえへへへへへ」
「隠しきれないものがありありと」
「こほん、ぼくにとって相性の悪い魔法もありますからね。悔しいですが」
「それっ」
「わわっ、突然魔法陣を作ってどうしました?」
「ファンタジーな私をお見せしようかと」
「誰にです?」
「私に。……だって全然ファンタジー感ないから……。魔王と勇者がいるのに……」
「ぼ、ぼくもお手伝いしますよ。そぉれ」
「どんな魔法の魔法陣ですか?」
「特になんでもない魔力だけをこめた魔法陣ですよ」
「つまんない……」
「あっ、飛んできた茨でぼくの魔法陣が粉々に」
「魔法、使いにくいし疲れるし難しいしだるいしあんまり強くないし……」
「あああああ、そんなに落ち込まないでくださいよう。ほら、スマーイル」
「茨でぐるぐる巻きにしてやろうか」
「なんで!」
「魔王さん、見てください。魔法陣を茨でぐるぐる巻きにしてみました。かつてなく禍々しい魔法陣のできあがりです。もはやラスボスが使うやつですよ、これ」
「巻かれるのぼくじゃなかった……」
「よく見ると、なんかわからん文字みたいなものがありますね」
「ああー、それは……」
「読んでみてください」
「人間の言葉では発音できないので、『教えて! 勇者さん』のコーナーはここでお開きにいたしましょう」
「勝手に開催して勝手に終わらせた」
「どうですか? しっかり覚えましたか?」
「力こそパワー」
「間違いではない」
お読みいただきありがとうございました。
魔法陣ってコンパスで描くんでしょうか。
勇者「魔法陣を作るのも疲れるんですよね」
魔王「後天的な人の悩みですねぇ」
勇者「最初から絵に描いておき、コピーして持ち歩くのはどうでしょう」
魔王「それはただの絵ですね」