289.会話 パペットの話
本日もこんばんは。
SSを書くためにパペットを検索したらかわいいものがたくさん出てきました。癒しです。
「勇者さん、勇者さん、こんにちは。今日も元気かな? お菓子食べる?」
「セリフだけだとただの怪しいひとですが、今日は見た目も怪しいですね」
「パペットという操り人形です。種類はいろいろありますが、これは手にはめて動かすタイプですね。どうですか? かわいいでしょう~」
「ぬいぐるみが手にくっついているみたいです」
「これをつければ勇者さんが優しく話しかけてくれると思いまして」
「そんなに邪険にしゃべっていました?」
「あ、いえ、小さな子に対するしゃべり方というか、そういうのを期待しました」
「……私は誰に対しても変わりませんよ」
「そうですか? ですが、せっかくです。今日は一日パペット魔王でお送りしますよ」
「律儀に黒猫のパペットだし……」
「勇者さんの分もありますよ。お好きなものをどうぞ」
「犬猫うさぎクマカエルひよこワニライオンきつね……あと変なやつ。好きなのと言われましても、なんでもいいですよ。えーっと、じゃあこれで」
「うさぎさんですね。勇者さんにぴったりです」
「どういう意味ですか」
「かわいいという意味です。はい、うさぎ勇者さんこんにちは~。黒猫魔王ですよ」
「これでしゃべらないといけないんですか」
「もちろんです……と言いたいところですが、お好きにしてくださいませ。いやなことはしなくていいですからね」
「……手触りはいいと思います。ふわふわですし、かわいいですから」
「なにゆえお顔を隠すのです?」
「パペットがしゃべっている……からです。私は寝ています」
「……んふふふ~。そうですかパペットが。ハッ、パペット越しなら手、手とか……」
「やめろ」
「うぎゃぁ、パペット攻撃! 顔を隠しているのにどうやって見ているのでしょう」
「気配……じゃなくて、パペットが見ているからに決まっています」
「そーっと……ひぇぇあぁ、やっぱりバレる」
「パペット越しでも触れる感覚はわかりますから」
「すごいですね。では、二重パペットはどうでしょうか」
「ふわふわが増えた。うーん、ふわふわ。でも感じる」
「三重パペット!」
「うーん、まだ感じます」
「もはや気持ちの問題ですね。だってガン見していますもん、勇者さん」
「いやぁ、つい。魔王さんの煩悩オーラが漂いすぎて見てしまいました」
「こんなにかわいいパペットをつけているのに?」
「パペットでも隠せない煩悩ってことですね。謝ってください」
「ごめんなさい」
「パペットに」
「そっちですか。ごめんなさい……って、ぼくがぼくに謝っているみたいですよ」
「一緒に頭下げましたもんね。愉快でしたよ」
「同時に別のことをするのが苦手なものでして」
「いつもささっと料理するくせによく言いますよ」
「ずっとやってきたおかげで、料理だけは慣れましたから。パペットでもできますよ」
「さすがにそれは無理ですよ。うまく持てませんし、ふわふわですし」
「そろそろ夕飯の時間ですから、今日はパペット料理といきましょう」
「その言い方だとパペットを食べることになりますが」
「なに食べたいですか? なんでもこいです!」
「そうですねぇ、お鍋……とか」
「いいですね。お任せください。具材たっぷりのすぺしゃる鍋を作りますよ」
「……と言われたものの、ほんとにパペットをつけたまま作るんでしょうか」
「おっなべ~。おっなべ~。ふんふ~ん」
「わざわざパペットにビニール被せるならパペットを取ればいいのに」
「お野菜お肉お魚~」
「よく両手にパペットをはめたまま料理できますね。普段の不器用が嘘みたいです」
「そろそろかんせ~い。勇者さーん、お皿の用意をお願いできますか?」
「わかりました。……あの、お鍋持って行ってもいいですか?」
「えっ、熱いですよ危険ですよ火傷しちゃいますぼくが持っていきますから」
「パペットの力を確認したくて」
「パペットの力ってなんですか」
「料理をする魔王さんを見ていて、パペットの可能性を感じました」
「ありがとうございます?」
「パペットつけたままじゃ何もできないと思っていた私がいたのは確かです」
「そうですか。何の話ですか?」
「けれど、それは間違いだった。いま、私はパペットの力をここに証明します」
「ぼくの料理で証明されたと思うのですが。あっ、お鍋ほんとに熱いですよ!」
「とりゃあ、どうだ」
「両手パペットでお鍋持ってる……」
「これがパペットの真の力です。熱くない。……でもちょっと滑るな」
「大人しくミトンを使ってください」
お読みいただきありがとうございました。
勇者さんと魔王さんのパペットがあったらかわいいと思います。言うだけならタダです。
勇者「スプーンもパペットで持つんですか。器用じゃないですか」
魔王「……ふふん!」
勇者「あ、魔法で浮かせていますね?」
魔王「……バレた」