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277.会話 擬人化の話

本日もこんばんは。

今日は魔王さんを擬人化するお話です。

「おや、紙とペンを持ってお勉強ですか? それともお絵描き?」

「お絵描きです。魔王さんを擬人化しようと思いまして」

「ぼくはもう人の姿ですけど……?」

「詐欺じゃないですか」

「そ、そもそも形を持たなかったぼくはどんな姿になろうと詐欺になりますよ。逆に、どんな姿でもぼく……とも言えます!」

「魔王さんを魔王にしようと思います」

「ぼくは最初から魔王ですよう」

「世の人間どもが考える魔王のイメージをすべて入れ込んだ最強の魔王」

「……を描くんですか?」

「を擬人化しようかと思いまして」

「勇者さんの言い方だと、魔王は人の姿をしていないようですね」

「つい。ほんとうは超絶巨大な暗黒物質の方が魔王っぽい気がするんですけど」

「……図らずも原初のぼくに近い姿を言っている」

「それを擬人化してみます。まずは黒髪」

「暗黒物質なら黒でしょうからね」

「魔なるものは赤目を持ちます。てことで目は赤色」

「そうですね」

「魔王さんは通報ぎりぎりのかわいい子好きなので、少女の体を持たせて」

「通報ぎりぎり……。通報……」

「髪いじりが好きなので髪は長めに」

「ぎりぎり……。通報……」

「赤色が好きなので服は赤をメインに、魔族っぽく黒色を入れて」

「ふむふむ。勇者さんは絵がお上手ですねぇ」

「最後に、魔王にふさわしく物々しい武器を持たせます」

「大きな剣ですねぇ。使うのが難しそうです」

「はい、完成です。世の人間どもが以下略の魔王の擬人化イメージを描き起こしました」

「わ~。……というかこれ、勇者さんじゃないですか?」

「どうしてこうなった……」

「頭を抱えないでください。そりゃあ、イメージを敷き詰めてできた姿がこれならば、勇者さんが間違われるのも自然ですねぇ」

「うぐぐぐぐぐ……」

「魔王の擬人化が勇者さんってことですか」

「うぎぎぎぎぎ……」

「魔王の姿をした勇者。なんと不思議なことでしょう」

「はあ……。これだから世の中は……」

「勇者さんはもはやご自分の絵を描きに行っているように感じましたけどね」

「ハッ、なぜ私は少女の姿にしたのでしょう。魔王ですよ? 上腕二頭筋が爆発しているような屈強な男の方がそれっぽいと思いませんか?」

「ぼく、男なら少年が許容限度です」

「通報されたくなければ発言には気をつけてくださいね」

「むぐっ! わ、わかりました」

「魔王さんは意味わからんばか力をしています。筋肉ムキムキ説があります」

「この細い腕を見てくださいよう。か弱い少女のそれでしょう?」

「細い腕からあの力は出ないんですよ。人間らしくしてください」

「魔王の擬人化に力は必要ですか? 否! いりませんよ」

「ていうか、なぜ私は魔王を擬人化しているのでしょうか。おそるべき存在ならば、人外の方が恐怖を感じるはずです。人型にするからだめなんです」

「ぼくが人間好きだからですね」

「異形の怪物が『ニンゲン、スキ、ナカヨク、スル』とか言っている方が不気味です」

「なにゆえカタコト……」

「人に擬える必要なんてないのです。理解しがたい姿こそ魔王にふさわしいのですよ」

「新しく描きますか? では、いま描いた紙はぼくにください」

「魔王というより私の絵みたいになっちゃいましたけど」

「だからほしいのです」

「……まあ、絵ならいいですよ」

「わあい! 額縁に入れて飾りますね!」

「やめんかい」

「あ、では、異形の怪物が人間の少女からもらった絵を大切に飾る姿に、人間と魔なるものの共存を見た勇者さんというていで」

「謎の設定やめてください」

「人間の優しさに触れた怪物は、自分の姿を人間に寄せるのです」

「物語が始まった」

「そして、怪物を擬人化した結果うまれたのが」

「うまれたのが?」

「ぼくです」

「すぐわかる嘘はやめてください」

「半分くらいは合っていますから!」

「それなら、半分人間で半分怪物じゃないと辻褄が合いませんよ」

「そういう半分ではなくてですね」

お読みいただきありがとうございました。

魔王の擬人化は勇者さん……によく似ている姿になるみたいです。不思議ですね。


魔王「勇者の擬人化もしてみましょうか」

勇者「それこそすでに人ですよ」

魔王「では、一度バケモノにしてから」

勇者「それだと魔物なんですよ」

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