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275.会話 オーバードーズの話

本日もこんばんは。

サブタイ不穏ですが平和な内容です。


(当作品はフィクションであり、当該行為を推奨、助長する意図はありません)

「勇者さん! どうしたんですかこの大量のお薬は! まさか飲んでいませんよね⁉」

「まだ飲んでません」

「まだ⁉ 飲むおつもりですか? だめですよ危ないです危険ですデンジャラス!」

「たくさん飲めば、その分効果も上がると思ったんですけど」

「そんなことはありません。容量と用法を守らないと命に関わることもあるんです」

「あー、大量に水を飲みますからね」

「いや、違いますけど……。はあ、びっくりしました。なんのお薬を飲もうとしたんですか? どこか体調の悪いところがあるなら教えてくださいな」

「特には」

「特には? じゃあなんでお薬……」

「映画を観ていたら、薬をお菓子のようにパリパリ食べている人がいて、おもしろそうだったので試してみようと思ったんですよ」

「その映画のタイトルなんですか? 作った人は誰ですか? どんな内容でした? ぜひぼくに教えてください絶対に許さない勇者さんに危ない知識を植え付けるなんて絶許」

「魔王さんが久々に魔王オーラを出していますね」

「勇者さんも、映画は映画だと考えてくださいね。あくまでフィクションです。危険なものも多いですから、決して真似してはいけませんよ」

「魔王さんのオーラがガチなので頷いておきます」

「では、お薬は没収――回収しますね」

「この場合は没収でもいいような」

「人間はほんとうに脆い生き物なんですよ。たった一錠の薬でも、一滴の毒でも、一本の針でも死んでしまうこともあるのです。お気をつけくださいね」

「わかりました。パリパリ」

「ちょっと⁉」

「よく見てください。ラムネです」

「この流れでそんなややこしいもの食べないでください!」

「食べます?」

「いただきますけど! パリパリ!」

「バリバリバリバリバリバリ」

「いくらラムネでも食べ過ぎはよくないですからね」

「薬でできなかったのでラムネで映画を再現しているのです」

「その映画のことは記憶から消してください。得意でしょう」

「誰が記憶喪失だ」

「過剰摂取は危険行為。これは記憶に刻んでくださいね」

「なんの話でしたっけ。パリパリパリパリ」

「無表情でラムネを食べ続けている勇者さん、ちょっとこわいです」

「おいしいですよ?」

「微笑くらい浮かべてください」

「表情筋を動かすのがめんどくさい……」

「と言いつつ、食べるのは食べるんですねぇ。どこ見てるんですか? だいじょうぶ?」

「次はなんの映画を観ようかなぁと考えていたんです」

「ぼくのおすすめはふかふかもふもふふわふわもちもちの動物映画です」

「もっと刺激のあるやつがいいです」

「刺激を求めるから危ない映画に引っかかるんですよ」

「だって、おすすめに出てきたから」

「勇者さんへのおすすめ欄をすべて癒し系映画に変えることに尽力します」

「新作のゾンビ映画ないかなー。あ、このジャケットおもしろいです。何の映画かな」

「映画の説明は見ないタイプですか?」

「そうですね。ジャケットの雰囲気と評価を見て選んでいます」

「この映画は……薬の過剰摂取に囚われた少女が幻覚と現実を彷徨いながら事件の真相を明らかにするサスペンスだそうです。……だめです!」

「おもしろそうじゃないですか」

「だめです。薬の過剰摂取がまずだめで、次に幻覚と現実を彷徨う点もだめです」

「えー。過保護というかめんどくさい親というか」

「どうしてもというのなら、こちらの『魔物に育てられた少女』という作品をどうぞ」

「魔王さん的にはオッケーラインなんですか?」

「人間の敵である魔物が捨てられていた赤子を拾い、育てる感動の物語です。ぼくは映画館に観に行って号泣しました。名作ですぜひ観てくださいラストははっぴーえんどです」

「魔王さんは布教しようとして誤ってネタバレするタイプって感じがします」

「過剰摂取の危険性について描いた作品なら許可しますよ」

「おもしろいんですか?」

「ぼくが観た映画は、過剰摂取した人が死んでいました」

「よくおすすめましたね」

「そこから愛の力で蘇り、過剰摂取ぱぅわぁーで魔物を倒してはっぴーえんどでした」

「たしかに危険性を描いていますね。カオスの」

「すべて過剰摂取による幻覚だというオチの映画もありましたよ」

「そっちの方がリアルっぽいです」

「愛した人も得た家族も穏やかな仕事もすべて過剰摂取の副作用という……こわい!」

「ラムネに薬混ぜてもわからなさそうだな……パリパリ」

「勇者さん、今からお説教の時間です」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんが食べているのは紛れもなくラムネです。ちなみに、魔王さんはしっかりお説教しました。


勇者「本気じゃないですよ」

魔王「冗談でもだめです」

勇者「こういう時だけ真面目……」

魔王「当然で――あの、凹んだ顔かわいいので写真1枚だけ撮っても?」

勇者「ブレるなブレるな。やり通せ」

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