271.会話 焼きそばパンの話
本日もこんばんは。
毎度毎度食べ物の話をしてすみません。だって勇者さんが(責任転嫁)。
「最初にパンに焼きそばを挟もうと考えた人って何があったんでしょうか」
「何もなかったと思いますけど……?」
「一度、三時間くらい話し合ってみたいです」
「長いですね。何を話し合うんですか」
「パンと焼きそばって炭水化物ですよね。一緒に食べようと思う思考が不思議ですよ」
「ラーメンとチャーハンを同時に注文する勇者さんが言いますか」
「だってセットメニューになっているんだもの……」
「つまり、炭水化物を一緒に食べるのは一般的ってことですよ」
「待ってください。ラーメンは飲み物です」
「よく噛んで食べましょうね」
「麺は飲み物。つまり、焼きそばも飲み物ってことですよ」
「せめて汁がほしいですねぇ」
「パンがひたひたになるじゃないですか」
「そりゃあ、焼きそばはラーメンではありませんから」
「がんばればいけますよ。汁がなくても吸えます。飲み物ですよ、ふふん」
「得意げに実践してくれていますが、ふつうに食べていますよね」
「うまく吸えなかった……」
「そんな悲しそうにしなくても、おいしく食べればいいんですよ」
「でも、パンを食べる時間と焼きそばを食べる時間を短縮できていいですよね」
「時間短縮のために挟んだんでしょうかねぇ?」
「短縮した分、ラーメンも食べることができますよ」
「お食べなさい……好きなだけ……」
「炭水化物っておいしいですよね。つい食べてしまいます」
「エネルギーになりますからね。勇者さんにはたくさん食べていただきたいです」
「焼きそばが許されるなら、チャーハンも許される……?」
「許されるってなんですか?」
「パンにチャーハンを挟むとか、パスタを挟むとか、汁なし麺を挟むとか」
「パスタは聞いたことありますね。明日、パンを買ってきていろいろ試してみましょう」
「パンも挟みましょう。コッペパンに揚げパンを挟むのです」
「お、お好きなようにどうぞ、としか……」
「揚げパンに焼きそばを挟むのも。ごくり」
「あ、おいしそうですね。ぼくはいちごと生クリームを挟みたいです」
「焼きそばにケンカを売っておられる?」
「どこからそう解釈したのでしょうか」
「炭水化物を挟んでください。いちごと生クリームの出番はありません」
「いちごと生クリームは炭水化――いえ、さすがに言い訳がすぎました」
「心を強く持ってくださいよ!」
「理不尽!」
「嘘は吐き続ければまことになると言いますよ」
「いやこれ、嘘じゃないですし……。ぼくにプライドは特にないですし……」
「……わかりました。私は勇者としてありとあらゆる意見を受け入れる使命があります」
「なんか始まった」
「私はひとつの提案をします。耳を引きちぎって聞いてください」
「わかりまし――引きちぎって?」
「甘い焼きそばを作ってパンに挟むのです」
「アマイヤキソバ?」
「蜂蜜を麺に絡めて炒め、生クリームやいちご、その他の果物をトッピングするんです」
「お、おおお……? 麺に合いますかねぇ……?」
「だいじょうぶです。どんなに不味くても食べ物である以上は私が必ず完食しますから」
「ちょっと遊んでません?」
「おいしいかもしれないじゃないですか。やってみましょうよ」
「構いませんけど、今すぐはできませんよ。明日にしましょう」
「ええー、なんでですか。材料買ってきて挟むだけですよ」
「お金や時間、手間の問題ではなくてですね」
「じゃあ何がいけないんですか。私はなんでも食べますよ」
「なんでも食べ過ぎるのも問題なんですけどね、今回はそれでもなくて」
「ええー、私には魔王さんがわかりません」
「ぼくも勇者さんがわからない時がありますよ」
「そうですか? 炭水化物同時食べには一緒に共感したじゃないですか」
「限度というものがありましてね。テーブルの上に十品の麺料理があるんですよ」
「夕飯は麺パーティーですね。わぁい」
「おやつに焼きそばパン食べたのにまた麺を食べる勇者さん……」
「私は麺食いなので」
「意味も言葉も違いますよ」
「ずるずるずるずる……」
「吸いながら寝っ転がらないでください。喉に詰まりますよ」
「ずるずるずるずヴッ」
「ほらぁ! 言わんこっちゃないですよ!」
「焼きそばよりパンが喉に詰まる……。一緒に食べない方がいいです危険です」
「てのひらくるっくるですねぇ」
お読みいただきありがとうございました。
この日は麺パーティーだったようです。
勇者「ずずずずずず……」
魔王「音だけしゃべっても麺は吸えませんよ」
勇者「シミュレーションです」
勇者「実際にやった方がはやいような……」