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265.会話 放任主義の話

本日もこんばんは。

魔王さんは過保護か放任主義か、どっちでしょうか。

「魔王さんは過保護ですが、放任主義でもありますよね」

「そうですか? いつも勇者さんから過保護って怒られていますけど」

「基本的に私の意志を尊重していますし、判断に干渉はしてこないと思いまして」

「ふつうのことではないですか?」

「『私』を尊重されることなんてなかったので、改めて考えると不思議だなぁと」

「ぼくは尊重しているというよりは、大切にしたいと思っているだけですよ。ところで、改めて考えるなんて何かあったんですか?」

「こちらをご覧ください」

「勇者さんが抱きかかえている猫ちゃん? ……ん? 猫じゃないですね。魔物ですね」

「カラスにいじめられていたので助けたら猫じゃなかった私の気持ち……」

「ああ……かわいそうな勇者さん。そんな雑魚は捨てて猫ちゃんを探しに行きましょう」

「迷わず捨てろという魔王さん、魔王っぽくていいですね」

「というか、また猫ちゃんを助けたんですね。お優しい勇者さんです!」

「……たまたまです。カラスの鳴き声がうるさかったので散らしたら黒っぽい塊があって、猫に見えたのでつい拾っただけで、助けようなんて一ミリも思っていませんでした」

「ふふ、そうですか~。ところで、それが放任主義となんのかかわりがあるんですか?」

「魔王さんって魔なるものへの干渉をしませんよね」

「それは単純にきらいだからですよ」

「個々の意志を尊重していると」

「意志を持たない低級もいっぱいいます」

「魔なるものの自主性を育んでいると考えられます」

「自主的に消えてくれればいいんですけどねぇ……」

「魔なるものへの放任主義。つまり彼らを大切にしていると解釈できます」

「どんな解釈ですかやめてください魔族を大切になど絶対しません!」

「魔王さんがさっきそう言ったじゃないですか」

「ぼくがいつそんなことを言いましたか絶対に言っていな言ってますね言いました」

「この猫もどきも大切にしているんですよね」

「していません。ぼくが大切にするのは勇者さん、次いで他の人間のみなさまです」

「猫もどきは?」

「論外です。はやく捨ててください。いつ何をしてくるか不安です」

「カラスに負けるくらいの雑魚さんですよ。心配いりません」

「カラスは賢いんです! 魔物と一緒にしてはいけませんよ」

「そこは魔物の肩を持ってあげてくださいよ」

「なにゆえぼくが?」

「魔王だからです。そんなびっくりした顔しないでください。魔王でしょう、あなた」

「そうでした。こほん、一応言っておきますが、放任主義と放置は別だと思っていますからね。勇者さんには放任、魔なるものへは放置もしくは消去です」

「聞こえがいいようにするため、私も放任主義と言っておきます」

「勇者さんのは紛れもなくほったらかしですね」

「過干渉よりマシでしょう」

「勇者たる者は過干渉くらいがちょうどいいはずなんですよ」

「うざいじゃないですか」

「ばっさり言いますねぇ。まあ、呆れるほど他者のために生きるというのが勇者のイメージみたいなところはありますけど、勇者さんが倣う必要はありませんよ」

「うざキャラは魔王さんでじゅうぶんですもんね」

「ぼく、うざキャラなんですか⁉」

「まさか違ったんですか? びっくりですよ」

「放任主義魔王の話をしていたじゃないですか! うざいとは真逆ですよ」

「過保護時々放任って感じですよ。私の猫もどき返してください」

「こ、これは魔物でしょう。危ないので魔王であるぼくが責任を持って塵にします」

「魔物は勇者が倒すものです。返してください」

「倒す気さらさらない様子だったのによく言います!」

「もふもふしたら倒そうと思っていたんです。私の意志を尊重してください」

「最も尊重するのはきみの安全です。ご理解ください」

「ご理解しません」

「うぐっ……。こ、こうしましょう。ぼくは放任主義をやめて過保護一択になります」

「猫もどき、大ピンチ」

「猫ちゃんならいくらでも撫でさせてあげますから! ぼくが変化して!」

「それはちょっと」

「かわいいのに」

「自分で言うな」

「ぼくは今日から過保護魔王です。勇者さんに魔なるものは触らせませんよ」

「勇者としてそれはどうなのかと思わずにはいられません」

「凝視するのもだめです。話しかけるのもだめです。近寄るのもだめです」

「そぉい」

「なんでぼくを放り投げるんですか⁉」

「近寄るなって言ったから」

「ぼ、ぼくは例外ってことで……」

「まあ、お好きにどうぞ。どうせ離しても寄ってくるでしょうから」

「わぁい! って、勇者さんは放任主義というよりただのめんどくさがりですねぇ」

お読みいただきありがとうございました。

魔王さんはたしかに過保護ですが線引きはしっかりしていると思っています。


勇者「猫もどき、元気で過ごすんですよ」

魔王「倒さないんですか?」

勇者「私がやらなくてもカラスにやられると思いまして」

魔王「それには同感です」

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