263.会話 たこさんウインナーの話
本日もこんばんは。
たこさんウインナーの話って何?って思ったそこのあなた。私も思っています。
「たこさんウインナーをじっと見つめてどうしました? もしかして、おいしくなかったですか?」
「いえ、おいしいです。ただ、考えることがありまして」
「たこさんウインナーで何を考えるんですか……」
「誰もが考え、誰も答えを導き出せない永遠の問いです」
「ぼくはたこさんウインナーに何かを思ったことはないです」
「なぜ、たこさんウインナーはたこなのか……」
「冷める前にご飯食べてくださいね~」
「私はひとつの仮説を立てました。それは、ウインナーになるためにたこさんといかさんによる熾烈な争いがあった可能性です」
「お茶のおかわりいりますか?」
「ください。熾烈な争いの結果、ウインナーとなる権利を手に入れたのがたこさんだったのでしょう。いかさんは失意のあまり顔面蒼白となってしまい、今も白いままなのです」
「ご飯のおかわりはどうですか?」
「いただきます。ウインナーの時代を先導することになったたこさんたちは、悔しさと悲しみに暮れるいかさんたちを横目に己の姿をこれでもかと披露することになったのです」
「今日のたこさんウインナーはかなり上手に作れたと思います~」
「魔王さんもそう思いませんか?」
「ごめんなさい、ぼくにはまだ早すぎる世界のようでして」
「たこさんウインナーの歴史についてコメントをいただきたいです」
「これほど正解のわからない問いもありませんよ」
「いかさんたちへの激励でも構いません」
「がんばってほしいです。切実に」
「ありがとうございます。たこさんウインナーおいしい」
「ぼくは勇者さんが何の話をしていたのかわからないままです」
「なんでウインナーをたこさんにするのかなぁと思ったんですよ」
「形が作りやすいのと、ただのウインナーより見た目がかわいらしくなるでしょう?」
「お腹に入ればぜんぶ同じですよ」
「例のごとく気持ちの問題です。あと、ぼくがそうしたいからですね。たこさんウインナーを食べる勇者さんゲットだぜ~。わ~い」
「新たな私がコレクションされていく。これがたこさんウインナーの力……」
「ちなみにですが、勇者さんと旅をするようになってしばらく、ぼくもきみの思考回路がほんのわずかに少しだけいくらかちょびっと若干わかるようになりまして」
「かなり少ないですね」
「こちらにいかさんウインナーもご用意してあります」
「おお、すごいじゃないですか。……何がすごいんだろう」
「作ったはいいものの、見た目はたこさんウインナーとほとんど同じです」
「味も一緒ですね。同じウインナーだから当然ですけど」
「そういうと思いまして、サメウインナーもご用意しました」
「おお! サメ! サメウインナー……?」
「お好きですよね、サメ」
「そうですね。そうですけど、サメウインナーってなんですか」
「いつか本物のサメを食べさせてあげたいと思いながら、サメの後頭部を再現しました」
「優しさは感じる。優しさは」
「ウインナーの限界を感じました」
「ウインナーじゃないもので作った方がよかったと思――いえ、ありがとうございます」
「優しさを感じる……。味は保証しますよ。同じウインナーですから」
「そうですね。たこさんウインナーと同じ味がします」
「ぼくたちはなぜたこさんウインナーについて語っているのでしょうか」
「おしゃべり好きな魔王さんにしては珍しいことを言いますね」
「勇者さんが『そこ?』っていうところに着眼するものですから……」
「気になったものは仕方ありません。たこさん、あなたもそう思うでしょう?」
「ウインナーになったたこさんから返事はありませんよ」
「そんな……がんばってください。たこさんならできます」
「たこさんに何を求めているのですか」
「すみません。何も考えていないので何も答えられません」
「機械音声みたいなセリフですね」
「でも、意味わからない会話をしていると平和だなって思いませんか?」
「勇者さんがおいしそうにご飯を食べているお姿を見ていると思いますよ」
「ああおおあうえおあおあお」
「たこさんウインナーで口を作らないでください。ぼく今いいこと言ってたんですから」
「すみません、ガマンできませんでした」
「ガマンはよくないですね。二つ目をくわえないでください」
「ほえほはおはあお」
「わら、笑わせないでください。写真撮っていいですか?」
「もぐもぐ。そういえば、ウインナーコーヒーというものがあると聞いたのですが」
「ウィンナーコーヒーじゃなかったでしたっけ。それがどうかしましたか?」
「たこさんウインナーをコーヒーに入れたらたこさんウインナーコーヒーですか?」
「んっふふふ……。ふふふ、あの、ごめんなさい、んふふふ」
「違うってことだけわかりました」
お読みいただきありがとうございました。
自分で何を書いているかわからなくなりました。
勇者「たこさんウインナーがコーヒーに浸かっているお姿……」
魔王「んっふふふあははは……ひぃ、やめてくださいよう……!」
勇者「沁みるぅ……とか言っていたり……」
魔王「やめてください~~!」