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260.会話 夢オチの話

本日もこんばんは。

この物語はすべて魔王さんの夢でしたってオチでも許されそうな作品はこちらです。

「今日も今日とてのんびりお昼寝している勇者さんですが、夢は見ているでしょうか?」

「見ていませんよ」

「起きてた。寝ているフリがお上手ですねぇ」

「魔王さんの強烈な視線を感じて目が覚めました。なぜここにいる」

「勇者さんがお昼寝している姿を眺めずに何をするというのですか?」

「当然のように言われましても。昼寝でもしたらいいですよ。永眠してください」

「安眠の間違いですが、勇者さんのことですから意図的にそう言っているのでしょうね」

「微睡む感覚が好きなんです。夢か現か、どっちかわからない曖昧な感じがたまりません。行ったり来たりしながら眠りにつくのもいいですよね」

「たまにぼくのほっぺを引っ張ることがありますが、あれはなんでしょうか」

「夢か現実かわからない時の判断方法ですね」

「それはご自分のほっぺをつねるんですよ?」

「知っています。わざとです」

「ぼくが痛いって言っても引っ張りますからね。容赦ない勇者さんです」

「本気で痛がっている様子じゃないのでつい腹立って……」

「ぼーっとした顔で腹立ってたんですか。もうちょっと表情を変化させてほしいです」

「夢の中でも魔王さんにそう言われた気がします。あれ、現実だっけか」

「勇者さんの夢の中のぼくまではわかりませんねぇ。……羨ましい」

「たまに、ふとした時に現実なのか夢なのかわからなくなります。魔王さんのせいです」

「ぼくのせいですか? ぼくのせいで、え? なにゆえ? ごめんなさい?」

「寝ても覚めても魔王さんは魔王さんで、まったく変わりませんからね」

「いいことではないですか~」

「つまり、すべて夢である可能性があるということです」

「なん、なんて言いました? なんて?」

「私と魔王さんの出会いも、魔王城を飛び出して続けている旅も、毎日の会話も、いまこの瞬間の微睡みも、なにもかもが夢だったんですよ」

「現実ですよ?」

「現実だと言う魔王さんも夢。ああ、悲しいかな。起きたらあなたはいないのです」

「いますいますいますいますいますいますここにいます!」

「うるさいです」

「ごめんなさい」

「いいですよ。魔王さんがやかましいのはいつものことですので」

「穏やかな笑みですけど、諦めていますよね?」

「やかましいとは思いますが、賑やかとも思いますよ。ひとりだとしゃべりませんから」

「ぼくはサボテンに話しかけますよ?」

「そういうのは変人っていうんです。人に見られたら寝言だって誤魔化してくださいね」

「これは夢だこれは夢だこれは夢だ……」

「それは目撃してしまった哀れな人のセリフです。魔王さんが言うものではないです」

「暗示の力は絶大です。勇者さんの耳元で『魔王さん大好き』と囁こうと思いますよ」

「ご自分で暗示の力とか言って虚しくないですか?」

「虚しいです……。胸の奥がきゅっとなりました」

「かわいそうに。眠って忘れましょう」

「ぼくはお昼寝するより、お昼寝している勇者さんを見る方が好きですよ」

「私も暗示しようと思ったのに。今日の昼食はラーメンと餃子~って」

「食べに行くので起きてくださいね」

「チャーハンも追加で」

「わかりましたから、起き上がってください。そろそろ正午ですよ」

「それも夢です」

「現実です。時計を見てください。短針と長針が同じ位置。てっぺんです」

「それも夢です」

「現実ですってば。あいにく、ぼくは眠くないので騙されませんよ?」

「それも夢です」

「それしかしゃべれない魔法にでもかかったんでしょうか……」

「……私のおふざけにも怒らず付き合い、殺されかけても懲りずにくっつこうとする魔王さんとの日々は、ちょっと前なら夢の中ですらありえないものでしたよ」

「ですが、現実です。ぼくは眠くないのでばっちりわかりますよ。ふっふーん~」

「あなたのその言葉も私の夢でないのなら、そうみたいですね」

「もしかして、ほっぺをつねる許可を出していますか?」

「どうしてそう解釈できるんでしょうね」

「夢か現実か、判断できるようにしてほしいのでしょう? では、僭越ながら」

「やめろ。いひゃい。やめひょ」

「現実でしたか?」

「抱いた殺意が現実ではなくては説明がつかないほど鮮明でした」

「それはよかったで――よくないですよくないですね。殺意抱いちゃったかぁ」

「この殺意は天津飯も追加しないと収まりません」

「かわいい殺意ですねぇ。もちろんいいですよ。たくさん食べてください」

「そして、この会話も夢だったと、のちの私は知るのだった――」

「夢オチにするのは構いませんが、それならぼくも勇者さんの布団に潜り込みますよ」

「めちゃくちゃ現実です。ほんと現実。すごい現実でした。現――くっつくな!」

「いやです~。勇者さんの体温も鼓動も現実じゃなくては感じられないものですから」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは夢の中でも感覚があるタイプです。


勇者「寝ぼけている魔王さんなら夢だと称して殺せそうです」

魔王「物騒な夢ですこと……」

勇者「夢オチにすれば問題ありません」

魔王「不死であるぼくにしか通用しませんからね、それ」

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