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255.会話 記念日の話

本日もこんばんは。

おふたりの記念日はいつだろうと思って書きました。

「勇者さん! 今日が何の日かわかりますか?」

「……え、わからん」

「なんでもない日です!」

「殺していいかなぁ」

「待ってください待ってください。なんでもないけどすばらしい日です。平和は良きことですよ。ピースにピース! なんちゃってとぁぅ待ってくだ落ち着いてこわいこわい」

「殺していいのかと思いまして」

「勇者としては正しいんですけど、ちょっと待ってください。このままだと勇者さんの殺意記念日になってしまいます」

「魔王さんの命日にしましょう」

「やだぁ……。記念日は良い日がいいじゃないですか」

「魔王が死ぬことは勇者や世界にとっては良いことですよ」

「そうですけどぉ……。もっとぼくのこと大切にしてもいいんですよ?」

「…………」

「すっごい冷たいおめめですね。冬が来たかと思いました」

「いやぁ、どうでもいいなぁと思って」

「記念日を作るたびにケーキを食べることができますよ」

「今日は良い日ですね。記念日にするしかありませんよ。良い日記念日です」

「てのひらがくるくるし過ぎて目が回りそうですよ」

「そのまま混乱して転んで床に頭を強打してお亡くなりになってください」

「それだと世界にとっての良い日です。アッ! いつの間にか一周している!」

「めんどくさいのでおしゃべり記念日ってことで」

「毎日記念日にしたいということでよろしいでしょうか。もう、勇者さんったら~」

「ケーキがほしいだけです」

「そんなこと言ってぇ~。ほんとうはぼくとの日々が大事なんですよね!」

「ふわぁ~……。ねむい……」

「いつもと同じ日々、いつもと変わらぬ勇者さん……。これが平和……」

「記念日ってどうやって決めるんですか?」

「おっ、唐突にご興味を?」

「ケーキを食べるなら誕生日とかかなと思って。ルールとかあるんですか?」

「特にないと思いますよ。今日は〇〇記念日! と思えば記念日なのです」

「テキトーですねぇ。でも、それくらいが私にはちょうどいいです」

「今も人間を辞めそうな体勢をしていますもんね。脱人間記念日にしますか?」

「あー……、いいですねぇ、それ……。すやぁ……」

「たぶん何も考えずにしゃべっているのでしょうね。いつも通りですね」

「いつも通り記念日です。意味わからん」

「その判断ができる程度には思考能力が残っていたようですね」

「ぎりぎり人間みたいです」

「あと少しで人間じゃなくなる言い方ですよ」

「それを人は進化と呼びます。私が進化と言ったので今日は進化記念日です」

「どこかで聞いた言葉選びですね……」

「ところで今日って何月何日ですか」

「そこからですか?」

「あまり日付を気にする生活をしてこなかったものですから」

「……そうですね。では、毎朝ぼくが日付をお教えいたしますよ」

「私の方が起きるのはやいのに?」

「お、起きてから教えるんですよう……。語呂合わせで記念日はたくさんありますから、毎日なにかしらの記念日をお伝えすることができますよ」

「へえ」

「あ、興味なさそうな声。ですが! ぼくはぼくたちだけの記念日で一年を彩りたいと思うのです。すてきだと思いませんか?」

「私をケーキで釣ったのはそれが目的ですか」

「やましいことはしていませんよ。胸を張れます。ふふん」

「絶壁記念日……」

「どこ見て言ってんですか」

「見せてきたのは魔王さんでしょう」

「その言い方だとぼくがセクハラしたみたいになるのでやめてください」

「セクハラ記念日……」

「ピー音! 誰かピー音を!」

「ピー音記念日……」

「もはや何を記念しているのかわかりませんよ……」

「なんでもない記念日ですね」

「なんだか、ぼくたちにはそれが一番似合っているような気がしますね」

「私も同じこと思っていました」

「おっ⁉ 心が繋がった記念日にしますか?」

「それにしたらケーキが増えるとか?」

「増えませんけど……」

「じゃあ却下です」

「うええぇ! これじゃあいつまで経っても記念日が決まりませんよう……」

「では、今日は記念日が決まらなかった記念日ですね」

お読みいただきありがとうございました。

記念日のゲシュタルト崩壊。


魔王「ぼくたちが出会った日は紛れもなく記念日ですよね!」

勇者「日付知りません」

魔王「ぼくが盛大にお祝いいたしますよ。踊って」

勇者「踊るな」

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