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254.会話 泥棒の話

本日もこんばんは。

勇者さんの鞄が泥棒の被害に遭ったようです。おふたりの様子を見てみましょう。

「さっき、見知らぬ人に置いておいた鞄を持っていかれたんですけど」

「なんでそんなに落ち着いているんですか……? はやく取り返しに行きましょうよ」

「いやぁ……、懐中時計さえあればいいかなぁと思って……」

「昼寝しようとしない。寝っ転がらない!」

「顔は覚えたのでだいじょうぶですよ」

「よくないです。窃盗は立派な犯罪です。勇者ならば泥棒を捕まえてください!」

「いざとなったら殺ってしまおうかなと」

「それはやめましょうね。勇者として」

「ならば、人間としては?」

「閃いたって顔で言わないでください。だめです」

「仕方ありませんね。人間を辞めます」

「軽率に人間を辞めないでください。魔族も人間も窃盗は犯罪に変わりありません」

「それなら、私の鞄を泥棒した人間は一体何者になるんですか」

「人間だと思いますけど……」

「人の物を盗んではいけないなんて、赤子でもわかりますよ」

「赤子はまだわからないかもですね~」

「では、幼児……いえ、それでは幼児に失礼ですね。世界を知っている幼児もいるかもしれませんから」

「人生何周目のお子さんですか」

「魔王さんは人生一周目なので赤ちゃんみたいなものですね」

「ぼくのことを赤ちゃんと言うのは勇者さんが初めてですよ」

「魔王さんと泥棒を並べて教育するとしましょう。人の物を盗んだら殺しますよ、と」

「物騒な教育ですね。赤子はギャン泣きすると思いますよ」

「赤子は泣くのが仕事だと聞いたことがあります」

「それはそうなんですけどね、ぼくを泣かしてもいいことありませんので大剣をしまってくださいね。振りかざさない」

「言ってもわからんやつには脅しが手っ取り早いですよ」

「鞄を泥棒されて怒っていますよね?」

「足の三本で手を打とうと思います」

「ご存じないかもしれませんが、人間の足は二本なんですよ」

「まったく仕方のない存在ですね。たこを見習え」

「いかはいかがですか?」

「殺してほしいならそう言えばいいんですよ」

「すみません。出来心で」

「その凍えるようなギャグで泥棒の体を固めてくださいよ」

「ぼくにそんな力はありませんよう」

「魔王のくせによく言いますね。なんでもできるんでしょう」

「発言のカオス具合は勇者さんに負けますよ」

「褒められている気がしない」

「泥棒を放っておくところは感心しませんけど」

「ほっぽってはいませんよ。鞄を返却したくなるような魔法をかけてあるんです」

「えっ、なんですかそれ」

「時限爆弾のスイッチをオンにしました」

「息をするように泥棒以上の犯罪をしないでくださいよ」

「呼吸を止めろと?」

「どうしてそっちを取るかなぁ」

「勇者とは神に選ばれた人間です。そんな人の荷物を奪うなど、神様にケンカを売っているのと同義ですよね。きっと今ごろ、タンスの角に小指をぶつけていますよ」

「跳ね返りがそれでいいんですか?」

「その次に爆弾が爆発します」

「それは跳ね返りすぎです」

「動くのがめんどくさいんですよねぇ。はやく戻ってこないかな」

「こうしている間に逃げているかもしれませんよ? はやく立ってください」

「そういう魔王さんはあんまり焦っていませんね。鞄にはあなたとの思い出もあるのに」

「…………ピュ~、ピウ~」

「口笛へたくそですか。その様子だと、なにか手を打ったようですね」

「だってぇ……、勇者さんの唯一といっていい荷物ですよ。あれがなかったら大剣背負って歩いている謎の少女になってしまいますよう」

「小さいポシェットひとつで旅をしているひとに言われたくない……。レイピアはただの飾りですし……。その辺の人間から泥棒して装備を整えたらどうですか?」

「ぼくを犯罪者にしないでください」

「魔王がなにか言っている」

「泥棒はいけません。相手の心を奪うのはおっけーですけどね!」

「魔王がなにか言っている」

「勇者さんの心を泥棒するのは難易度が高そうですねぇ……」

「心臓がほしいんですか? 魔王っぽいこと言いますね」

「どうしてこう……どうして……うぐぅ……」

「魔王がなにか呻いている」

「ぼくに心臓を泥棒する趣味はありませんよう……。もう! 泥棒捕まえてきます!」

「お気をつけてー。……魔王さんは泥棒ですよ。いつか私の心臓を奪うんですから」

お読みいただきありがとうございました。

魔王さんが打った手はその辺の魔物に命令して犯人を追わせるものでした。


魔王「取り返してきましたよ~」

勇者「ありがとうございます」

魔王「爆弾は解除しておきました」

勇者「それは残念です」

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