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243.会話 ひな祭りの話

本日もこんばんは。

女の子がふたりの物語なのでひな祭りは大切です。女の子ふたり……です。

「うわ、なんですか。敵かと思ったじゃないですか」

「ひな人形ですよ。今日はひな祭りなので飾ってみたのです。かわいいでしょう?」

「……かわいいというより、きれいの方が合うかと。呪いに使うものですか?」

「なんでもかんでも呪いに結びつけないでくださいよう。これは女の子の成長と幸せを祈るひな祭りの時に使われる道具です。お人形を女の子の身代わりとして災厄を受けとめる役割などがありますが、細かいことは気にせず楽しみましょう~」

「食事も豪華ですね。カラフルできれいです」

「ちらし寿司にひなあられ、甘酒に桜餅など! ばっちりご用意しました。なにせ、女の子ふたり分の厄を受けてもらわなくてはいけませんからね」

「そうですね。……そうですね? いや、そうじゃないですよ。なに言ってんですか」

「ぼくと勇者さんでふたりですよ?」

「当然のように言っている……。しかも、成長って……。詐欺のくせに」

「気持ちは大事です。傍から見たら完全に美少女ですからね」

「肯定も否定もめんどくさいです。ひな人形が混乱しても知りません」

「ちらし寿司を食べているところ申し訳ないのですが、ひな人形ごっこしませんか?」

「どちらがより多くの厄を引き受けるか勝負するんですか」

「熱いバトルものではなく、お着替えです。じゃーん」

「うわ、なんか出てきた」

「こちらは等身大のお雛様とお内裏様のお召し物になります」

「あのてっぺんから見下ろしているふたりのことですか」

「見守っていると言ってください。ハロウィンの時のように手作りしようと思ったのですが、さすがに難しすぎて助っ人の力を借りました。えげつない金額を請求されましたが、問題ありません! 勇者さんのお雛様姿が見られるなら安いものです!」

「着ませんけど」

「そんな」

「何枚重ねになっているんですか。着るのが大変そうでめんどくさいです」

「ぼくがお手伝いしますから」

「それに、なんで私がお雛様なんですか」

「お内裏様の方がお好みですか? それならそっちでも――」

「これがいいです」

「いやそれ御所車。もはや人形じゃないですよ」

「これに乗って旅をしましょう。とてもラクそうですよ」

「たしかに乗る物ですけど、今はそういう話をしているのではありませんよ」

「重ね着はあったかそうですが、動けるんでしょうか。もしやこの人たち、自由と引き換えに豪華絢爛な服を着て穏やかな笑みを浮かべているんですか? ハッ、この笑みはこれから死にゆく者の諦めを表しているのかもしれません」

「厄を引き受ける役目を考えるとそれっぽいですが、勇者さん恒例の独特解釈によってお着替えを回避しようたってそうはいきませんよ」

「バレたか……。まあ、布団にして寝るので着てもいいですよ」

「では、お雛様の方を! いやぁ、うれしいです。この日のためにカメラも新調したんですよ。以前より高画質になった勇者さんを写真に残せるなんてはっぴーです」

「……おっも。この服おっも。なんだろう、重力が増えた気がします。動けない」

「勇者さん、カメラ目線お願いします。目線外しも撮るのでそのままで」

「長時間着ていたら体の骨が砕ける気がします」

「そんなにですか?」

「ちらし寿司を完食しておいてよかったです」

「完食したから重量が増えたんじゃないですかね」

「魔王さんも服を着て修行してください。ていうか、ひとりで着られます?」

「あ、ご安心を。そぉい。変化魔法で変えれば簡単ですからね」

「……あれ、もう一着の意味とは」

「あわよくばお内裏様勇者さんも見たいな~なんて。えっへへ」

「身代わり人形のはずが厄ばかり舞い込んできている気がする」

「おや、そんなこと言わないでください。もっと明るく元気に笑顔で!」

「元凶が何を言う」

「お顔が死んでいますよ。ほら、スマーイル。笑って~」

「なんでしょうね。見た目は豪華になっているのに中では冷たい風が吹いていますよ」

「そんなに重ね着しているのに寒いのですか? お部屋あたためますね」

「疲労」

「あ、後ろ向かないでくださいよう。写真撮れないじゃないですか」

「お雛様だってずっと笑顔でいるのはきついでしょう。たまには真顔になりたい時だってあります。そういう時は背を向ければいいのです」

「お雛様を反対向きにするのはすぐに片づけられない時ですよ。いつまでも飾ったままだと、祓った厄が戻ってくるとか、お嫁に行くのが遅くなるといわれて……」

「なんですか、急に黙って」

「勇者さんが……お嫁に……お、お嫁に……行く……」

「行きませんけど」

「いえ、勇者さんだっていつか誰かと幸せに……お嫁さんになって……ぐすっ」

「だから、なりませんってば」

「ならないはならないで、勇者さんのお嫁さん姿が見られないじゃないですかっ‼」

「ああもう、ほんとにめんどくさいひとですね」

「ぼくは厄そのものですからね」

「ひな人形の効果ないじゃないですか」

お読みいただきありがとうございました。

お内裏様も着ました。正確には着させられました。


勇者「こっちも重い……苦しい……」

魔王「勇者さんが動けないおかげで好きなだけ写真を撮ることができます」

勇者「あとでデータ消す……」

魔王「厄災みたいな表情ですね」

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