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242.会話 藁人形の話

本日もこんばんは。

藁人形より藁人形を使おうとする人間の方がこわいですね。

「木に何か刺さっています。なんでしょうか、あれ」

「藁人形ですね。ぼくも昔、あれと同じものを持っていましたよ」

「また誰かから送られてきたんですか」

「そうですね。かわいらしい見た目をしていたので、一時期一緒に寝ていました」

「全く効果がなかったようですね」

「相手を呪う物でしたっけ。そういうものは大体、ぼくに効果はないのですが送ってくる人が後を絶たなくて。まあ、どうでもいいんですけどね」

「相手を呪って不幸を招いたり殺したりする道具……。なぜこんな物を使うのでしょう」

「それだけ相手のことがきらいなのでしょうね」

「いえ、自らの手でやればいいと言っているのです」

「あ、そっちですか」

「所詮は道具。実際に効果があったかどうか確認する過程が必要です。ですが、自分でやれば過程も結果も一目瞭然。心もすっきりです」

「儀式をすることに意味があるのではないでしょうか?」

「相手をこてんぱんにすることに意味があるに決まってんじゃないですか。なんのために藁人形を使っているかってことを忘れてはいけません」

「たしかにそうですね。ところで、さっきから何をしているのですか?」

「勇者作の藁人形です。藁がないので草人形ですが」

「一体誰を呪うので――あ、普通に考えたらぼくですね」

「いえ、神様です」

「神様を呪おうとしたひとは勇者さんが初めてじゃないですか?」

「いつでも先駆者の道を走りたい気持ちです」

「神様には効かないと思いますけどねぇ……」

「ご安心ください。撮れ高を考える私はちゃんと魔王さんの分も作ってあります」

「わ~、ありがとうございます。でも呪い用ですよね?」

「心を込めて呪いますよ」

「殺意の間違いではなくてですか?」

「失礼ですね。愛しさと切なさを込めていますよ」

「どっかで聞いたことある語彙やめてもらっていいですか。ひとつ足りませんよ」

「あっ、見てください。かわいくできました」

「己の道を突き進む勇者さんはいいと思います。ぼくの声は聴こえていないのかもしれません。勇者さんの言うかわいい人形は前科がありますからね……。油断なりません」

「見ろや」

「あっ、ほんとにかわいいですね⁉ 勇者さんの中に一般的なかわいいがあったとは」

「動物などにはかわいいって言ったことありますよ。たぶん」

「動物と人形は違いますからね。それにしても、こんなにつぶらな瞳の藁人形だったら喜んで一緒に寝ますよ~。べりーきゅーと!」

「なぜ藁人形と一緒に寝ようとするのか」

「そういうものかと思って」

「あちらの藁人形は釘で打ち付けられていますよ」

「ひとつのやり方ですね。というか、人形を釘で打ち付けるなら、ぼくのところに送っちゃだめですよね? もしかして、藁人形じゃなかったのでしょうか」

「もしくは、送った人がお間抜けさんだったか、ですね」

「藁人形の中には呪いたい相手の髪の毛や爪を入れるとされていますが、写真でもいいそうです。一言で藁人形といってもいろいろあるんですねぇ」

「魔王さんの髪の毛とか爪って、本物じゃないから効果ないんでしょうか」

「本物じゃないとは」

「何もかもが詐欺でしょう? 写真だって、姿を変えられるから無効でしょうし」

「な、長らくこの姿ですから、儚げ美少女がぼくの真の姿と言っても過言ではないかと」

「でもまあ、こんな方法で魔王さんを倒せたら苦労しませんよね」

「それはほんとうにそうですねぇ」

「まったく、こんなことをしている暇があるなら、人間たちは私の苦労をもっと知った方がいいんですよ。そして崇め奉れ」

「勇者さんはいつもぐーたらしているじゃないですか」

「ちゃんと毎日殺しに行っているでしょう」

「やる気のない殺る気でね」

「うるせえんですよ。それっぽくやっているだけ感謝してください」

「あああ、ぼくの藁人形をぶんぶん振り回さないでくださいよう」

「テキトーに作ったので首が千切れそうです」

「せっかくかわいい藁人形もとい草人形なんですから、大事にしてください」

「魔王さんを呪おうとしているのに大事にしろとはおかしな話ですね」

「おや、ぼくを殺そうとする勇者さんを大事にしているぼくにそれを言うとは、勇者さんもおかしな子ですねぇ」

「うわぁ、腹立つ顔」

「ぼくとしては無表情無感情ストレート暴言の方が効果ありますね」

「耳元で言い続けましょうか?」

「一歩間違えるとご褒美になります」

「うわぁ、うわぁ」

「語彙を失うほどのドン引きですか。あ、無言で草人形を剣に刺さないでくださいよう」

「まだ呪いの方がいいなぁと思っちゃいました」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは割といつもドン引きしています。


勇者「道具なんかに頼るから跳ね返りをくらうんですよ」

魔王「今しがた大剣を振り回して腕を切ったのはどこの誰でしょうか」

勇者「やっぱり拳ですね」

魔王「こっち見なさい」

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