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241.会話 流れ星の話

本日もこんばんは。

空で光っていればいいのなら飛行機でもいいと思います。

「あっ、流れ星です! 勇者さん、流れ星ですよ!」

「そうですね」

「のほほんとしている場合ではありませんよ。はやく三回願い事を言わなくては!」

「なんですかそれ」

「流れ星が消える前に三回願い事を言うと、その願いが叶うといわれているんですよ」

「へえ。無理じゃないですか?」

「諦めてはいけません。可能性はあります」

「この会話をしている間に、流れ星はどこかに消えましたよ」

「また流れるかもしれないでしょう。ぼくは必ずやり遂げますよ」

「何を願うんですか」

「勇者さんの健康ですかね」

「親か」

「旅が平和であることや勇者さんが写真を撮らせてくれることやもうしばらく旅が続くことや勇者さんと一緒にあれやこれやそれやどれやの思い出を作りたいなぁと」

「欲まみれですね。その長さではそもそも言いきれないでしょうから安心です」

「勇者さんがお願いするなら何を願いますか?」

「死ですかね」

「物騒な」

「死。死。死」

「三回言えそうなところがなんとも……」

「これは私でも魔王さんでも可」

「可、じゃないんですよ。ですが、流れ星は人の死を表しているという考え方もあるそうです。勇者さんの言い分もあながち間違いではないんですねぇ」

「…………」

「勇者さん?」

「んー……。流れ星はなくても、星空はきれいだなぁと思いまして」

「そうですねぇ。周囲に明かりがないぶん、星の光がはっきり見えますね」

「流れ星って地上に落下しないんですか?」

「落下することもありますよ。その場合は隕石と呼びますが」

「隕石が魔王さんの頭に落ちてきたら死にますか?」

「ぼくは死にませんが、普通の人間は死にますよ。というか、大きさによっては国が滅びます。隕石とはそれくらい威力があるものなんですよ」

「へえ。やったことあるんですか?」

「……と、遠い昔の話ですよ」

「実質、魔王さんは流れ星ってことですね」

「その言い方ならロマンチックなんですけどねぇ……」

「明日の夕飯はすき焼き、明日の夕飯はすき焼き、明日の夕飯はすき焼き」

「お願いしなくても作りますよ?」

「デザートも追加で」

「仕方ないですねぇ。いっぱい食べるんですよ」

「この流れ星ちょろいですね」

「よくないお願い事は聞きませんけど」

「例えば?」

「健康を害することや倫理的に反することです。清く正しいお願いをしてくださいね」

「魔王のくせに……」

「なんでつまらなさそうな顔をしているのです。デザート抜きにしますよ」

「えっ」

「……うっ、そんなことぼくにはできない……。勇者さんにデザートあげたい……」

「なんだこのひと」

「勇者さんから食べ物の幸せを奪うなんて、勇者さんの健康を害してしまいます!」

「変なひとだなぁ」

「とっておきのデザートをご用意しますからね!」

「流れ星は必要ないみたいですね」

「ロマンチック路線を残すためには流れ星はほしいです」

「そもそも、流れ星って何なんですか」

「流星物質と呼ばれるものが大気に突入した際に発光したものですよ」

「じゃあ、大気とやらに魔王さんが突入したら流れ星魔王になれるってことですか」

「突入したくはないですねぇ」

「そのまま落下したら隕石でしたっけ? 隕石魔王ですか。それは嫌だな」

「ぼくは燃え尽きた方がいいんですか?」

「消し炭になっても復活するんですよね」

「もちろんです」

「ええ、困る」

「困るのはぼくの方なのですが……。って、星空を見ながら会話するならもっとロマンチックな話をしましょうよう。ふたりで同じ願い事を願えば、わずかな時間でも言えるかもしれませんよ? 役割分担願い事チャレンジです」

「流れ星も困るでしょうね。あれ、いま誰が言った? って」

「言葉で言うからだめなんです。紙に書いて掲げればいいのですよ! これなら、一秒あれば願い事三回クリアです!」

「それでいいわけが……あれ、あの儀式ってそういう……? いや、まさかなぁ……」

お読みいただきありがとうございました。

流れ星が落ちてきたらこわいでしょうね。


勇者「降ってきそうなくらいの満天の星空って言いますけど、降ってきたらやばいですよ」

魔王「体験したことあるじゃないですか」

勇者「あれはびびりました」

魔王「驚いた顔していましたもんね~」

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